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17:大使館と王の来訪
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9月上旬。大使館に帰ってきて10日もしないうちに届いた知らせは、俺への新しい仕事を伝えるものだった。
「……見なかったことにしてぇ」
上層部から届いた指示書を読んで思わず本音を漏らした俺を見た嘉神が不思議そうに「どうしたんですか?」と聞いてくる。
「北の国の王家が日本に来る時にリエゾンとして同行するように指示が出た」
リエゾンはフランス語で仲介とか橋渡しという意味でこの場合は調整役という意味になる。
つまり今回の俺は北の国の王家御一行とハルトル宰相に同行して、来日をスムーズにするための双方の調整役として動いて欲しいということになる。
(まず調整というワードが面倒臭さがプンプンするんだよな)
ため息を漏らしながら目前にいた嘉神に「なあ、この仕事お前がやってみないか?」と指示書を渡して尋ねる。
しばらく指示書に目を通した嘉神はやれやれという顔をしつつ「大使がご指名された仕事を横から掻っ攫う事なんか出来ませんよ」とあっさり断ってきた。
「別に遠慮なんか要らないんだけどな、お前がやらないって言うなら留守は任せるが……」
日本政府としても自国に異世界の王を迎えるのは初めての事なので、慎重を期してわざわざ在金羊国全権大使であり現地訪問経験のある俺をリエゾンとして指名したのはわかる。分かるんだけどな?島への長い船旅を終えてようやく帰り着いて少しはゆっくり出来るだろうと期待してた俺に、新しくこんな大きな仕事をぶち込まないでほしい。
「今回の件では任意の補佐役を1人連れて来て良いらしいんだが、嘉神やるか?」
「興味はありますけど僕がついてくと大使館に管理職いなくなるんですよね、秋の収穫祭や留学の件もありますから管理職不在だとそっちの運営で滞るんじゃないかと思うんですが」
「あー、そっちの問題があったな。となると俺は補佐役無しの方がいいか?」
「最低限石薙さんと深大寺くんと納村さんはこっちに残して欲しいので、他の人にお願いすれば良いのでは?」
パッと思いついたのは木栖の姿だった。
木栖にも仕事がない訳ではないが、今の木栖のメインの仕事は地球から供与された武器の使い方指導だ。
ファンナル隊長が自分で隊員たちに指導するよう引導を引き渡しつつ夏沢を補助で付けるようにすれば木栖の手を開けられる。
島に行った時もずっと一緒だったのにまた木栖と一緒に仕事かよと言う感じはなきにしもあらずだが、1人でリエゾンとして奔走するよりはマシな気がする。
「とりあえず頼んでみるか」
***
「北の国の王家来訪っていつくらいだ?」
俺の相談に対して1番にそう尋ねた木栖の反応は割と前向きなものだった。
「日本では11月半ば、こちらでは10月の終わりくらいだな。予定が合うなら手伝って欲しいんだが」
「夏沢と相談してすこし俺の予定を調整してみる、明日の朝ぐらいまで待ってくれるか?」
「わかった。俺としてもお前が来てくれるなら助かる」
俺の一言を聞いた木栖は僅かに嬉しそうに見えた。
翌日、木栖は俺のリエゾン補助につくことが決まった。
「……見なかったことにしてぇ」
上層部から届いた指示書を読んで思わず本音を漏らした俺を見た嘉神が不思議そうに「どうしたんですか?」と聞いてくる。
「北の国の王家が日本に来る時にリエゾンとして同行するように指示が出た」
リエゾンはフランス語で仲介とか橋渡しという意味でこの場合は調整役という意味になる。
つまり今回の俺は北の国の王家御一行とハルトル宰相に同行して、来日をスムーズにするための双方の調整役として動いて欲しいということになる。
(まず調整というワードが面倒臭さがプンプンするんだよな)
ため息を漏らしながら目前にいた嘉神に「なあ、この仕事お前がやってみないか?」と指示書を渡して尋ねる。
しばらく指示書に目を通した嘉神はやれやれという顔をしつつ「大使がご指名された仕事を横から掻っ攫う事なんか出来ませんよ」とあっさり断ってきた。
「別に遠慮なんか要らないんだけどな、お前がやらないって言うなら留守は任せるが……」
日本政府としても自国に異世界の王を迎えるのは初めての事なので、慎重を期してわざわざ在金羊国全権大使であり現地訪問経験のある俺をリエゾンとして指名したのはわかる。分かるんだけどな?島への長い船旅を終えてようやく帰り着いて少しはゆっくり出来るだろうと期待してた俺に、新しくこんな大きな仕事をぶち込まないでほしい。
「今回の件では任意の補佐役を1人連れて来て良いらしいんだが、嘉神やるか?」
「興味はありますけど僕がついてくと大使館に管理職いなくなるんですよね、秋の収穫祭や留学の件もありますから管理職不在だとそっちの運営で滞るんじゃないかと思うんですが」
「あー、そっちの問題があったな。となると俺は補佐役無しの方がいいか?」
「最低限石薙さんと深大寺くんと納村さんはこっちに残して欲しいので、他の人にお願いすれば良いのでは?」
パッと思いついたのは木栖の姿だった。
木栖にも仕事がない訳ではないが、今の木栖のメインの仕事は地球から供与された武器の使い方指導だ。
ファンナル隊長が自分で隊員たちに指導するよう引導を引き渡しつつ夏沢を補助で付けるようにすれば木栖の手を開けられる。
島に行った時もずっと一緒だったのにまた木栖と一緒に仕事かよと言う感じはなきにしもあらずだが、1人でリエゾンとして奔走するよりはマシな気がする。
「とりあえず頼んでみるか」
***
「北の国の王家来訪っていつくらいだ?」
俺の相談に対して1番にそう尋ねた木栖の反応は割と前向きなものだった。
「日本では11月半ば、こちらでは10月の終わりくらいだな。予定が合うなら手伝って欲しいんだが」
「夏沢と相談してすこし俺の予定を調整してみる、明日の朝ぐらいまで待ってくれるか?」
「わかった。俺としてもお前が来てくれるなら助かる」
俺の一言を聞いた木栖は僅かに嬉しそうに見えた。
翌日、木栖は俺のリエゾン補助につくことが決まった。
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