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16:大使館とエルダールの島
16-10
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出発の日、金羊国は雲ひとつない晴天の夏空であった。
「不在の間よろしく頼む」
「無事に帰ってきてくださいね」
「頑張ってください」
嘉神と石薙さんに仕事を引き継いで部屋を出ると、医務室の入り口に柊木医師がいた。
その後ろにいる中年の女医は今回長期不在となる柊木医師の代打として派遣された外務省本省の医務官の人だ。
よろしくお願いします、と軽く頭を下げて大使館の門へと出ると木栖と深大寺は既に準備を終えて立っている。
「俺と柊深大寺で上野まで行くから、木栖と柊木先生で先に俺たちの荷物の積み込みをお願いしていいか?積み込みが終わったら神殿まで来て欲しい」
「わかった」「了解しました」
木栖に俺の荷物を託してから俺と深大寺は日本を目指した。
****
上野へ到着すると、そこには今回派遣される人々と共に大型トラックが止まっていた。
「外務省の真柴です」
『国境なき医師団異世界特別派遣チーム長のマリオ・ベルナルディーニだ』
そこに居たのは、少し前に新宿の国境なき医師団日本事務所で出会った痩せぎすの白人男性だった。
手の空いた警備員やムコンザ医師とその助手まで動員して医療器具や薬をトラックから降ろして金属製リアカーに積み替えて運ぶ準備をしており、満載になったリアカーを引っ張る手伝いを頼まれた。
俺が先導し、ベルナルディーニチーム長がリアカーを引っ張り、その後ろからいくつかのリアカーが俺についていくように続いていく。
痩せぎすな見た目に反して力はあるらしいベルナルディーニチーム長を最初に迎え入れたのは木栖だった。
「木栖、まだ運び込む荷物あるから彼らを船まで案内してくれ」
「了解」
『ベルナルディーニチーム長、彼は木栖という男です。こいつが船まで案内してくれますのでついていってください』
『わかった』
こうして3時間以上かけて荷物の積み込みを終え、金羊国の湊でようやく全員が集合した時にはもう太陽もずいぶんのぼって昼前になっていた。
今回借りた商船に乗り込むと、その甲板では1人の少女が見知らぬ生き物と日向ぼっこしていた。
その生き物はパッと見は恐竜図鑑の翼竜に似ていた。全身が緑の金属光沢をしたうろこに包まれており、自らの体で少女を覆うように抱きしめながらも鋭く尖った目で俺を見据えていた。
「もうすぐ出発すんぞー!全員乗り込んだかー!」
遠くから船長の声がすると、少女がおもむろに目を覚ました。
「……どちらさん?」
「この船の客だ」
「例の人らか。本当に黒髪黒眼なんだねえ」
妙に呑気にそう答えた彼女に身元を問えば「私はこの船の雇われ用心棒だよ」と言う。
ずいぶん若い用心棒だなと考えていると彼女は「これでも竜使いとしての腕には自信があるよ?」と言い放つ。
「竜使い?」
「そう、竜と共に生きる事を選んだ誇り高き山の民が末裔」
隣にいる緑の鱗の翼竜はこの世界の竜・ドラゴンという訳か。
「まあいいや、その辺はおいおい見て貰おうか。スフェーン」
そう呼ぶとやれやれという風に立ち上がり、少女を己の背中へと乗せた。
(こうして見ると大型バイクよりひと回り大きいくらいの大きさしかないんだな?)
「おぎゃらてぃあ(上空へ飛ぶよ)」「ぎゃう」
その声と共に竜は夏空へと舞い上がっていく。
「かっこいいな」
「そうだな……って木栖お前いつの間に」
色々言いつつもまるで映画のような翼竜の姿を俺たちはしばらくぼうっと見つめていた。
「不在の間よろしく頼む」
「無事に帰ってきてくださいね」
「頑張ってください」
嘉神と石薙さんに仕事を引き継いで部屋を出ると、医務室の入り口に柊木医師がいた。
その後ろにいる中年の女医は今回長期不在となる柊木医師の代打として派遣された外務省本省の医務官の人だ。
よろしくお願いします、と軽く頭を下げて大使館の門へと出ると木栖と深大寺は既に準備を終えて立っている。
「俺と柊深大寺で上野まで行くから、木栖と柊木先生で先に俺たちの荷物の積み込みをお願いしていいか?積み込みが終わったら神殿まで来て欲しい」
「わかった」「了解しました」
木栖に俺の荷物を託してから俺と深大寺は日本を目指した。
****
上野へ到着すると、そこには今回派遣される人々と共に大型トラックが止まっていた。
「外務省の真柴です」
『国境なき医師団異世界特別派遣チーム長のマリオ・ベルナルディーニだ』
そこに居たのは、少し前に新宿の国境なき医師団日本事務所で出会った痩せぎすの白人男性だった。
手の空いた警備員やムコンザ医師とその助手まで動員して医療器具や薬をトラックから降ろして金属製リアカーに積み替えて運ぶ準備をしており、満載になったリアカーを引っ張る手伝いを頼まれた。
俺が先導し、ベルナルディーニチーム長がリアカーを引っ張り、その後ろからいくつかのリアカーが俺についていくように続いていく。
痩せぎすな見た目に反して力はあるらしいベルナルディーニチーム長を最初に迎え入れたのは木栖だった。
「木栖、まだ運び込む荷物あるから彼らを船まで案内してくれ」
「了解」
『ベルナルディーニチーム長、彼は木栖という男です。こいつが船まで案内してくれますのでついていってください』
『わかった』
こうして3時間以上かけて荷物の積み込みを終え、金羊国の湊でようやく全員が集合した時にはもう太陽もずいぶんのぼって昼前になっていた。
今回借りた商船に乗り込むと、その甲板では1人の少女が見知らぬ生き物と日向ぼっこしていた。
その生き物はパッと見は恐竜図鑑の翼竜に似ていた。全身が緑の金属光沢をしたうろこに包まれており、自らの体で少女を覆うように抱きしめながらも鋭く尖った目で俺を見据えていた。
「もうすぐ出発すんぞー!全員乗り込んだかー!」
遠くから船長の声がすると、少女がおもむろに目を覚ました。
「……どちらさん?」
「この船の客だ」
「例の人らか。本当に黒髪黒眼なんだねえ」
妙に呑気にそう答えた彼女に身元を問えば「私はこの船の雇われ用心棒だよ」と言う。
ずいぶん若い用心棒だなと考えていると彼女は「これでも竜使いとしての腕には自信があるよ?」と言い放つ。
「竜使い?」
「そう、竜と共に生きる事を選んだ誇り高き山の民が末裔」
隣にいる緑の鱗の翼竜はこの世界の竜・ドラゴンという訳か。
「まあいいや、その辺はおいおい見て貰おうか。スフェーン」
そう呼ぶとやれやれという風に立ち上がり、少女を己の背中へと乗せた。
(こうして見ると大型バイクよりひと回り大きいくらいの大きさしかないんだな?)
「おぎゃらてぃあ(上空へ飛ぶよ)」「ぎゃう」
その声と共に竜は夏空へと舞い上がっていく。
「かっこいいな」
「そうだな……って木栖お前いつの間に」
色々言いつつもまるで映画のような翼竜の姿を俺たちはしばらくぼうっと見つめていた。
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