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16:大使館とエルフの国
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チェスラフ氏は年々動きにくくなり病気で身体が動きにくくなって走ることが出来なくなった弟を見て、弟や同じ集落の子どもを助ける手立てを求めて大陸中を回って医学の勉強をしていた。
しかしこの症状への手立ては見つけられず、異世界の医学に一縷の望みをかけているのだという。
「と言う訳で、日本への留学を望んでいるのです」
「弟さんの病気についていくつか質問しても?」
医者の顔になった柊木医師は弟さんの病気について2~3質問すると、少し考えこんでから口を開いた。
「恐らくですが、弟さんの病気は地球でなら日常生活に問題のないレベルに症状を抑え込むことが出来ると思います」
「本当に?!」
「これは僕の想定通りの病気だとすればの話ですが、仮にチェスラフさんが地球で医学を学んでも僕の見立て通りの病気だった場合地球製の薬が無ければ恐らく治療は出来ません」
チェスラフ氏の表情が固まるのが見えた。
「地球で医学を学んでも薬が用意できなければ意味がない、という事ですか」
「はい。僕の見立てが正しければ弟さんに必要な薬は血液製剤・他人の血液を原料にして作るのが一般的な薬です。他人の血を基にした薬を流し込むわけですから製造時に繊細な工程を必要としますがそれをこの地で作れるのか?という問題があります。
そしてもう一つの問題はこの病気は常に定期的な薬の投与が必要であるという事です。そのためには常に血液を一定量用意して、薬にし、投薬する。この仕組みをチェスラフさんが1人で構築できるのかという問題です」
チェスラフ氏がその問いかけに考え込む。
どれだけ遠回りだとしても自分の手で弟を助けたいと考える彼にとって、薬という問題はあまりにも想定外だったのだろう。
「自分の手で弟さんを治したい気持ちは分かります。しかし地球の医学を学んでも出来ないことはあるんですよ」
柊木医師がなだめるようにそう語りかけるが、俺の脳裏にはある案がおりてきた。
「チェスラフさん、弟さんが居るという地元はどちらになりますか?」
「地元?何故ですか?」
「あなたの地元には同様の病気を抱えている方が多くいるんですよね?将来的な日本との国交樹立が前提になりますが、弟さんを含めた同じ病状の方への日本から医療支援を受けて治療を受けるという手があります。
自らの金銭で留学できるという事はそれなりにいい御身分の方とお見受けします、交渉の余地はあるのでは?」
嘉神の方をちらりと見ると可能だと思うという風に頷き、柊木医師は「難易度高そうですね」とつぶやきつつもそれが出来ればという淡い期待も滲んでいた。
しかしチェスラフ氏は難しそうに顔をしかめながら地面を見た。
「郷里は排他的で異世界人の受け入れは難しいと思います……ですが、異世界でなら治せる可能性は高いんですよね?」
柊木医師の方を向くと「一度診察と検査は必要ですが、可能性はあります」と答える。
治療方法を求めて大陸中を放浪したその人は「少し考えさせてください」と告げて大使館を去っていった。
その葛藤に満ちた背中を見ながら柊木医師はこんな話を切り出した。
「奇妙なんですよね」
「何が?」
「もし僕の見立てが正しければ、あの病気は遺伝的な要素が大きいので子供世代からいきなり流行るってあんまりないんですよ。昔から集落で流行してる病気なら最初からある程度対策も出来ていて歩けなくなるほど悪化しないはずです」
柊木医師が不思議そうにそんなことを語りだす。
恐らく本人の中で病名が既に絞り込めているからこその疑問なのだろう。
「急な突然変異が多発した……というのはさすがにないか」
「ええ。ある時点から急に排他的になって集落の外の血を取り入れなくなったと考えれば筋は通るんですけどね」
柊木医師はその一言で推測話を終えた。
それが正解か否かはチェスラフ氏だけが知っている。
しかしこの症状への手立ては見つけられず、異世界の医学に一縷の望みをかけているのだという。
「と言う訳で、日本への留学を望んでいるのです」
「弟さんの病気についていくつか質問しても?」
医者の顔になった柊木医師は弟さんの病気について2~3質問すると、少し考えこんでから口を開いた。
「恐らくですが、弟さんの病気は地球でなら日常生活に問題のないレベルに症状を抑え込むことが出来ると思います」
「本当に?!」
「これは僕の想定通りの病気だとすればの話ですが、仮にチェスラフさんが地球で医学を学んでも僕の見立て通りの病気だった場合地球製の薬が無ければ恐らく治療は出来ません」
チェスラフ氏の表情が固まるのが見えた。
「地球で医学を学んでも薬が用意できなければ意味がない、という事ですか」
「はい。僕の見立てが正しければ弟さんに必要な薬は血液製剤・他人の血液を原料にして作るのが一般的な薬です。他人の血を基にした薬を流し込むわけですから製造時に繊細な工程を必要としますがそれをこの地で作れるのか?という問題があります。
そしてもう一つの問題はこの病気は常に定期的な薬の投与が必要であるという事です。そのためには常に血液を一定量用意して、薬にし、投薬する。この仕組みをチェスラフさんが1人で構築できるのかという問題です」
チェスラフ氏がその問いかけに考え込む。
どれだけ遠回りだとしても自分の手で弟を助けたいと考える彼にとって、薬という問題はあまりにも想定外だったのだろう。
「自分の手で弟さんを治したい気持ちは分かります。しかし地球の医学を学んでも出来ないことはあるんですよ」
柊木医師がなだめるようにそう語りかけるが、俺の脳裏にはある案がおりてきた。
「チェスラフさん、弟さんが居るという地元はどちらになりますか?」
「地元?何故ですか?」
「あなたの地元には同様の病気を抱えている方が多くいるんですよね?将来的な日本との国交樹立が前提になりますが、弟さんを含めた同じ病状の方への日本から医療支援を受けて治療を受けるという手があります。
自らの金銭で留学できるという事はそれなりにいい御身分の方とお見受けします、交渉の余地はあるのでは?」
嘉神の方をちらりと見ると可能だと思うという風に頷き、柊木医師は「難易度高そうですね」とつぶやきつつもそれが出来ればという淡い期待も滲んでいた。
しかしチェスラフ氏は難しそうに顔をしかめながら地面を見た。
「郷里は排他的で異世界人の受け入れは難しいと思います……ですが、異世界でなら治せる可能性は高いんですよね?」
柊木医師の方を向くと「一度診察と検査は必要ですが、可能性はあります」と答える。
治療方法を求めて大陸中を放浪したその人は「少し考えさせてください」と告げて大使館を去っていった。
その葛藤に満ちた背中を見ながら柊木医師はこんな話を切り出した。
「奇妙なんですよね」
「何が?」
「もし僕の見立てが正しければ、あの病気は遺伝的な要素が大きいので子供世代からいきなり流行るってあんまりないんですよ。昔から集落で流行してる病気なら最初からある程度対策も出来ていて歩けなくなるほど悪化しないはずです」
柊木医師が不思議そうにそんなことを語りだす。
恐らく本人の中で病名が既に絞り込めているからこその疑問なのだろう。
「急な突然変異が多発した……というのはさすがにないか」
「ええ。ある時点から急に排他的になって集落の外の血を取り入れなくなったと考えれば筋は通るんですけどね」
柊木医師はその一言で推測話を終えた。
それが正解か否かはチェスラフ氏だけが知っている。
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