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15:Daydream Believer
15-10
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金羊国に戻った時、街は日暮れ時で夕食の匂いがそこかしこからふわりと漂ってきた。
少し肌寒い春の夕暮れの中に香る夕食の匂いにはなんとも言い難い郷愁を感じさせてくる。
(今日の夕飯はなんなんだろうな)
そんなふうに考えながら歩いているとまるで子どもの頃に戻ったようだった。
「真柴、おかえり」
大使館の門前に立って俺に声をかけてきたのは木栖だった。
「おかえり。お前なんでいるんだ?」
「銃火器規制について少し司法宮の方まで話をしに行ってた」
「それでか。ちなみになんだが、飯山さんから今日の夕飯について何か聞いてないか?」
「……今日はお楽しみらしいぞ」
木栖がちょっとイタズラめいた眼差しで俺を見てくるので「なら楽しみにしておくか」とつぶやいた。
***
夕食どき、食堂に入った俺に降り注いだのはクラッカーの音と紙吹雪だった。
「「「「「誕生日おめでとうございます!」」」」」
「……誕生日?」
「大使、今日はこっちの暦で4月27日ですよ」
4月27日、それは確かに俺の誕生日であった。
暦のズレやこのところの多忙もあってすっかり忘れていた。
「お祝いってことで今日はシャリアピンステーキですよ~?」
飯山さんが楽しそうに笑いながら俺を誕生日席へと押し込んでくる。
「この頃大変そうでしたからね、こういう楽しいことがないとやってられないでしょう?」
発案者らしい嘉神がニコニコと笑いながら俺に【本日の主役】タスキなんかかけてくる。
食卓に並ぶのはステーキのみならずなかなかのご馳走の数々であり、今日は少し気合を入れたというのも納得の品揃えだった。
特に目を惹くのはすりおろし玉ねぎと魚醤のソースがかかったステーキである。
ジビエ系の肉はこの地に来てからほとんど毎日ぐらいの勢いで食べてるからわかる、これはジビエ系の肉ではない。この地では滅多に見られないタイプの肉だ。
「……これ、牛肉か?」
「その通りです。最近誕生した第12都市の方で大規模な牧畜が始まったらしくて、今回は運悪く廃牛になった子の肉を購入出来たんですよねぇ」
金羊国ではこれまで牧畜はほとんど行われておらず、冷蔵技術の未発達さもあって生の牛肉や豚肉は流通していない。それだけでこの牛肉の貴重さが伝わるだろう。
「しかも聞いて下さいよぉ、柊木先生とウルヴル魔術官のお陰で冷凍・保冷魔術の習得コストが下がったからもうすぐ第2都市でも流通しやすくなるらしいですよー?」
「そんな事が?」
どうやら俺の知らない間にウルヴル魔術官と柊木先生は冷凍・保冷魔術の低コスト化研究をしていたらしく、学校を通じて普及させた結果冷凍・冷蔵魔術の習得者が増えつつあるらしい。
だから普通に行けば1週間以上かかる第12都市から生の牛肉を持ち込めるようになったというわけだ。
俺が柊木医師の方を見ると気恥ずかしいのか「そういえば今紅忠の佐々さんがドワーフの人に無電源保冷箱の開発を依頼してるそうですよ」と話をあからさまに逸らそうとしてきた。
「日本との関係が出来たことで金羊国も良くなってるんだな」
「その先頭で走って来たのがお前だろ」
木栖が俺の方を見てそう告げる。
その一言で俺のこの3年間が認められたような気持ちが湧き上がる。
金羊国に来たのは俺を忘れた母から逃げるためだったとしても、この一皿が俺の成果だと言うのならばそれは大いなる救いだった。
「冷める前に食べませんか?」という石薙さんの一言で全員が食卓につく。
「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」
少し肌寒い春の夕暮れの中に香る夕食の匂いにはなんとも言い難い郷愁を感じさせてくる。
(今日の夕飯はなんなんだろうな)
そんなふうに考えながら歩いているとまるで子どもの頃に戻ったようだった。
「真柴、おかえり」
大使館の門前に立って俺に声をかけてきたのは木栖だった。
「おかえり。お前なんでいるんだ?」
「銃火器規制について少し司法宮の方まで話をしに行ってた」
「それでか。ちなみになんだが、飯山さんから今日の夕飯について何か聞いてないか?」
「……今日はお楽しみらしいぞ」
木栖がちょっとイタズラめいた眼差しで俺を見てくるので「なら楽しみにしておくか」とつぶやいた。
***
夕食どき、食堂に入った俺に降り注いだのはクラッカーの音と紙吹雪だった。
「「「「「誕生日おめでとうございます!」」」」」
「……誕生日?」
「大使、今日はこっちの暦で4月27日ですよ」
4月27日、それは確かに俺の誕生日であった。
暦のズレやこのところの多忙もあってすっかり忘れていた。
「お祝いってことで今日はシャリアピンステーキですよ~?」
飯山さんが楽しそうに笑いながら俺を誕生日席へと押し込んでくる。
「この頃大変そうでしたからね、こういう楽しいことがないとやってられないでしょう?」
発案者らしい嘉神がニコニコと笑いながら俺に【本日の主役】タスキなんかかけてくる。
食卓に並ぶのはステーキのみならずなかなかのご馳走の数々であり、今日は少し気合を入れたというのも納得の品揃えだった。
特に目を惹くのはすりおろし玉ねぎと魚醤のソースがかかったステーキである。
ジビエ系の肉はこの地に来てからほとんど毎日ぐらいの勢いで食べてるからわかる、これはジビエ系の肉ではない。この地では滅多に見られないタイプの肉だ。
「……これ、牛肉か?」
「その通りです。最近誕生した第12都市の方で大規模な牧畜が始まったらしくて、今回は運悪く廃牛になった子の肉を購入出来たんですよねぇ」
金羊国ではこれまで牧畜はほとんど行われておらず、冷蔵技術の未発達さもあって生の牛肉や豚肉は流通していない。それだけでこの牛肉の貴重さが伝わるだろう。
「しかも聞いて下さいよぉ、柊木先生とウルヴル魔術官のお陰で冷凍・保冷魔術の習得コストが下がったからもうすぐ第2都市でも流通しやすくなるらしいですよー?」
「そんな事が?」
どうやら俺の知らない間にウルヴル魔術官と柊木先生は冷凍・保冷魔術の低コスト化研究をしていたらしく、学校を通じて普及させた結果冷凍・冷蔵魔術の習得者が増えつつあるらしい。
だから普通に行けば1週間以上かかる第12都市から生の牛肉を持ち込めるようになったというわけだ。
俺が柊木医師の方を見ると気恥ずかしいのか「そういえば今紅忠の佐々さんがドワーフの人に無電源保冷箱の開発を依頼してるそうですよ」と話をあからさまに逸らそうとしてきた。
「日本との関係が出来たことで金羊国も良くなってるんだな」
「その先頭で走って来たのがお前だろ」
木栖が俺の方を見てそう告げる。
その一言で俺のこの3年間が認められたような気持ちが湧き上がる。
金羊国に来たのは俺を忘れた母から逃げるためだったとしても、この一皿が俺の成果だと言うのならばそれは大いなる救いだった。
「冷める前に食べませんか?」という石薙さんの一言で全員が食卓につく。
「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」
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