172 / 254
14:大使館は春を待つ
14-5
しおりを挟む
「じゃあここから新しく綺麗な道を作ろう」
2枚の紙を分けると紙に貼られていた棒人形をホワイトボードに立たせ、点をつけた後そこにコンパスを置いてぐるりと丸を書いた。
「理想はこの丸にくり抜きたいんだが曲線に切り抜こうと思うと私があと100人はいないと完成しないんで、点と直線で穴を作ろう。直線でこの丸に近い形を作るには?」
ニヤリと悪い顔をして俺たちのほうを向いてくる。
直線で丸に近い形を作るという問いに対して回りがざわつく。
(丸に近い……つまり丸でなくてもいいってことだよな?)
なんとなく思考を巡らせてみるがパッと思いつくものが無いのでなんとなく周りを見渡してみると、突然周囲のざわつきを切り裂くように誰かが立ち上がった。
「正多角形!」
そう叫んだのは鉄道総研の井上さんだ。
「その心は?」
差し出された黒のホワイトボードマーカーを受け取ると、円の中心に置かれた点に定規を当てて直線を引き円を分割して円と直線の交わる部分を線でつなぐ。
(*作者補足:実際はもっと綺麗な図形を描いています)
「これで直線だけで出来たと言えるのでは?」
「うん。その通り。多角形は丸じゃないが丸に限りなく近い形は作れる……ずるい答えではあるけどこれが現状の最適解なんだよね」
どうしても技術者は丸に近いと聞いて新円の近似とかそっちの方に思考が行ってしまうようで、みんなが『何でやねん!』とでも言いたげに見えた。
俺としてもひっかけ問題っぽさを感じるが……まあ文句を言ってもしょうがない。出来ないものは出来ないんだろうしな。
「で、最後にこの正多角形の2つの穴をつなごう」
取り出したのは表面に棒人形の立った正多角形の穴の開いた紙である。
「これはこの三角の部分を互い違いに組み合わせるだけで多面体の筒が出来る。
この方法のメリットとしては常時安定した空間が作れることと、筒にした時に出来た微妙な空間のズレが空間の動きや方向によって発生するズレを相殺してくれることだな」
(※作りが雑なのは作り手の能力の限界によるものです、ご了承ください)
そう言いながらワクワクさんよろしく三角形の部分をセロテープでくっつける。
ただし本人の作り方が雑なのでだいぶがたついているのが気になるが無視しよう、突っ込むのも面倒だし。
「ちょっとがたついてるけどまあいいや。これが日本と金羊国をつなぐトンネルの土台になり、ここに線路や道を作るんだよ。最後に質問ある人ー?」
なるほどと思いながら納得した辺りでそろそろ失礼させてもらおう。
近くにいた関係者にそろそろ失礼しますと告げてからこっそりと会議室を抜け出す。
今日のこれはいい勉強になったかもしれないなと内心満足しながら外に出てはたと気づく。
「……あの模型って1人で作ったのか?」
説明のために作ってあった模型類を思い出してそんな疑問が湧き上がってきた。
その答えを聞いてみたい気はするが聞いても仕方ない(し知っても意味が無い)疑問はいったん心の奥にしまい込む。
大使館に戻ればまだまだやるべきことが残っているのだ、どうでもいい疑問は忘れてしまった方が早いのである。
2枚の紙を分けると紙に貼られていた棒人形をホワイトボードに立たせ、点をつけた後そこにコンパスを置いてぐるりと丸を書いた。
「理想はこの丸にくり抜きたいんだが曲線に切り抜こうと思うと私があと100人はいないと完成しないんで、点と直線で穴を作ろう。直線でこの丸に近い形を作るには?」
ニヤリと悪い顔をして俺たちのほうを向いてくる。
直線で丸に近い形を作るという問いに対して回りがざわつく。
(丸に近い……つまり丸でなくてもいいってことだよな?)
なんとなく思考を巡らせてみるがパッと思いつくものが無いのでなんとなく周りを見渡してみると、突然周囲のざわつきを切り裂くように誰かが立ち上がった。
「正多角形!」
そう叫んだのは鉄道総研の井上さんだ。
「その心は?」
差し出された黒のホワイトボードマーカーを受け取ると、円の中心に置かれた点に定規を当てて直線を引き円を分割して円と直線の交わる部分を線でつなぐ。
(*作者補足:実際はもっと綺麗な図形を描いています)
「これで直線だけで出来たと言えるのでは?」
「うん。その通り。多角形は丸じゃないが丸に限りなく近い形は作れる……ずるい答えではあるけどこれが現状の最適解なんだよね」
どうしても技術者は丸に近いと聞いて新円の近似とかそっちの方に思考が行ってしまうようで、みんなが『何でやねん!』とでも言いたげに見えた。
俺としてもひっかけ問題っぽさを感じるが……まあ文句を言ってもしょうがない。出来ないものは出来ないんだろうしな。
「で、最後にこの正多角形の2つの穴をつなごう」
取り出したのは表面に棒人形の立った正多角形の穴の開いた紙である。
「これはこの三角の部分を互い違いに組み合わせるだけで多面体の筒が出来る。
この方法のメリットとしては常時安定した空間が作れることと、筒にした時に出来た微妙な空間のズレが空間の動きや方向によって発生するズレを相殺してくれることだな」
(※作りが雑なのは作り手の能力の限界によるものです、ご了承ください)
そう言いながらワクワクさんよろしく三角形の部分をセロテープでくっつける。
ただし本人の作り方が雑なのでだいぶがたついているのが気になるが無視しよう、突っ込むのも面倒だし。
「ちょっとがたついてるけどまあいいや。これが日本と金羊国をつなぐトンネルの土台になり、ここに線路や道を作るんだよ。最後に質問ある人ー?」
なるほどと思いながら納得した辺りでそろそろ失礼させてもらおう。
近くにいた関係者にそろそろ失礼しますと告げてからこっそりと会議室を抜け出す。
今日のこれはいい勉強になったかもしれないなと内心満足しながら外に出てはたと気づく。
「……あの模型って1人で作ったのか?」
説明のために作ってあった模型類を思い出してそんな疑問が湧き上がってきた。
その答えを聞いてみたい気はするが聞いても仕方ない(し知っても意味が無い)疑問はいったん心の奥にしまい込む。
大使館に戻ればまだまだやるべきことが残っているのだ、どうでもいい疑問は忘れてしまった方が早いのである。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

勇者PTを追放されたので獣娘たちに乗り換えて楽しく生きる
まったりー
ファンタジー
勇者を支援する為に召喚され、5年の間ユニークスキル【カードダス】で支援して来た主人公は、突然の冤罪を受け勇者PTを追放されてしまいました。
そんな主人公は、ギルドで出会った獣人のPTと仲良くなり、彼女たちの為にスキルを使う事を決め、獣人たちが暮らしやすい場所を作る為に奮闘する物語です。

異世界無宿
ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。
アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。
映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。
訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。
一目惚れで購入した車の納車日。
エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた…
神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。
アクション有り!
ロマンス控えめ!
ご都合主義展開あり!
ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。
不定期投稿になります。
投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。

ダンマス(異端者)
AN@RCHY
ファンタジー
幼女女神に召喚で呼び出されたシュウ。
元の世界に戻れないことを知って自由気ままに過ごすことを決めた。
人の作ったレールなんかのってやらねえぞ!
地球での痕跡をすべて消されて、幼女女神に召喚された風間修。そこで突然、ダンジョンマスターになって他のダンジョンマスターたちと競えと言われた。
戻りたくても戻る事の出来ない現実を受け入れ、異世界へ旅立つ。
始めこそ異世界だとワクワクしていたが、すぐに碇石からズレおかしなことを始めた。
小説になろうで『AN@CHY』名義で投稿している、同タイトルをアルファポリスにも投稿させていただきます。
向こうの小説を多少修正して投稿しています。
修正をかけながらなので更新ペースは不明です。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

セリオン共和国再興記 もしくは宇宙刑事が召喚されてしまったので・・・
今卓&
ファンタジー
地球での任務が終わった銀河連合所属の刑事二人は帰途の途中原因不明のワームホールに巻き込まれる、彼が気が付くと可住惑星上に居た。
その頃会議中の皇帝の元へ伯爵から使者が送られる、彼等は捕らえられ教会の地下へと送られた。
皇帝は日課の教会へ向かう途中でタイスと名乗る少女を”宮”へ招待するという、タイスは不安ながらも両親と周囲の反応から招待を断る事はできず”宮”へ向かう事となる。
刑事は離別したパートナーの捜索と惑星の調査の為、巡視艇から下船する事とした、そこで彼は4人の知性体を救出し獣人二人とエルフを連れてエルフの住む土地へ彼等を届ける旅にでる事となる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる