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13:真柴春彦の冬休み
13-15
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仕事に戻る前に俺は叔母夫婦と一緒に父の墓参りに行くことにした。
父は家から少し離れた熊谷の共同墓地に眠っており、叔父も一緒に行くというので運転して貰うことにしたのだ。
「そう言えばなんでうちの父はお墓作ってないんですか?」
「先輩が死んだときって春彦くんが生まれて家建てたばっかりでお金無かったから安いとこしか入れてあげられなかったんだよ、お義父さんは葬式代こそ出したけど墓代まで面倒見てやれるかって感じだったしね」
沢村の叔父は当時の話を色々してくれた。
そもそも祖父はうちの両親の結婚に反対だった。理由は父が天涯孤独であった事らしい。
結局祖父は母の熱意に折れる形で結婚を認めたが、父が早逝してしまい母は葬式代が工面できず祖父を頼った。
その時の条件が『墓代は自分でどうにかしろ』というものだったらしい。
父は天涯孤独で先祖代々の墓などなく、一から建てるにも数百万という額がかかる。それで母は仕方なく近隣で一番安い熊谷の共同墓地を選んだと言う訳だ。
「姉さんって春彦君に政広さんの話はするのに死んだ時の事全然聞かせてないのね」
それがどのような心理によるのかは想像する他ないが、母は父の死を認めたくなかったのだろうか。
思い起こすとあの家には父の写真はあれど仏壇のようなものは無かった気がする。
「着いたよ」
車を止めて少し歩くと大きな共同墓に着く。
大型の供養塔の前には花と線香が並び、俺もまた持ってきていた花を置いておく。
死んだ父に何を語り何を問うべきか。
それは分からないが、少なくとも俺が真柴政広という人の生きた証であり、その父が知ることのなかった一族のことを俺は知っているということだけが真実だ。
(また、来年も来ます)
心の奥で父にそう告げる。
「春彦君、きょう向こうに戻るんだろう?」
「はい」
「駅まで送るよ」
****
金羊国の入り口となる上野の廃駅跡はきょうも静かだった。
本来なら明日の朝ここに着けばいいのだが、特に理由はないがみんなより一足先に金羊国へ戻ることにしたのだ。
いつもの複雑に曲がりくねった道を抜けて金羊国第一都市、その中心近くにある日本大使館へ到着すれば冬休みを告げる張り紙が張り付けられている。
「あ、真柴大使」
「オーロフか」
予定より早い戻りに驚きつつも俺の目を見た彼は、ふっと微笑んでただこう答えた。
「お帰りなさい」
「ただいま」
さて、この張り紙はもういいだろう。
一足早いが大使館には俺が戻ってきたのだから。
父は家から少し離れた熊谷の共同墓地に眠っており、叔父も一緒に行くというので運転して貰うことにしたのだ。
「そう言えばなんでうちの父はお墓作ってないんですか?」
「先輩が死んだときって春彦くんが生まれて家建てたばっかりでお金無かったから安いとこしか入れてあげられなかったんだよ、お義父さんは葬式代こそ出したけど墓代まで面倒見てやれるかって感じだったしね」
沢村の叔父は当時の話を色々してくれた。
そもそも祖父はうちの両親の結婚に反対だった。理由は父が天涯孤独であった事らしい。
結局祖父は母の熱意に折れる形で結婚を認めたが、父が早逝してしまい母は葬式代が工面できず祖父を頼った。
その時の条件が『墓代は自分でどうにかしろ』というものだったらしい。
父は天涯孤独で先祖代々の墓などなく、一から建てるにも数百万という額がかかる。それで母は仕方なく近隣で一番安い熊谷の共同墓地を選んだと言う訳だ。
「姉さんって春彦君に政広さんの話はするのに死んだ時の事全然聞かせてないのね」
それがどのような心理によるのかは想像する他ないが、母は父の死を認めたくなかったのだろうか。
思い起こすとあの家には父の写真はあれど仏壇のようなものは無かった気がする。
「着いたよ」
車を止めて少し歩くと大きな共同墓に着く。
大型の供養塔の前には花と線香が並び、俺もまた持ってきていた花を置いておく。
死んだ父に何を語り何を問うべきか。
それは分からないが、少なくとも俺が真柴政広という人の生きた証であり、その父が知ることのなかった一族のことを俺は知っているということだけが真実だ。
(また、来年も来ます)
心の奥で父にそう告げる。
「春彦君、きょう向こうに戻るんだろう?」
「はい」
「駅まで送るよ」
****
金羊国の入り口となる上野の廃駅跡はきょうも静かだった。
本来なら明日の朝ここに着けばいいのだが、特に理由はないがみんなより一足先に金羊国へ戻ることにしたのだ。
いつもの複雑に曲がりくねった道を抜けて金羊国第一都市、その中心近くにある日本大使館へ到着すれば冬休みを告げる張り紙が張り付けられている。
「あ、真柴大使」
「オーロフか」
予定より早い戻りに驚きつつも俺の目を見た彼は、ふっと微笑んでただこう答えた。
「お帰りなさい」
「ただいま」
さて、この張り紙はもういいだろう。
一足早いが大使館には俺が戻ってきたのだから。
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