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13:真柴春彦の冬休み
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東京から新幹線で3時間半、新神戸の駅に出ると思ったよりも高台にあることに気づいた。
待ち合わせ場所の改札を見渡すと、改札口の向こう側の壁に俺より少し上くらいの男性と中学生くらいの娘さんが壁にもたれた状態できょろきょろと人を探している事に気づいた。
「真柴幸輔さんとなな恵さんですか」
「っ、はい!」
咄嗟にもたれていた姿勢を直して俺のほうを見た。
見た目はいかにもよくいるうだつの上がらない中年のお父さんと言ったところだろうか。
真冬だというのになぜかスポーツ刈りなところとか、中年太りの身体をポロシャツとチノパンに押し込んでいる感じとか、営業周りで培われたらしい俺に対する腰の低さだとか、総合してそういう風に感じる。
(……まあ俺だってもう40過ぎだから中年なんだけどな)
「あ、こちらうちの娘のなな恵です」
「真柴なな恵です」
娘さんも同じく特別華やいだ印象はない。
質素にまとめられたロングヘアとシンプルな眼鏡からは化粧っ気を感じないし、ダッフルコートも丁寧に管理されている様子は感じられるが古さを感じる。
「今回はお宅にお邪魔させてもらう形になると聞きましたが本当に大丈夫なんですか?」
「いちおう俺の父も同席したいという事でしたんで、膝悪い年寄りをあんまり移動させるのも酷ですから」
「じい…‥、うちの祖父は高取から来てもらってるので」
俺が「高取とは?」と聞くと「えっと、吉野の隣です」となな恵さんが返してくれる。
「関東の人間なんでこっちの地理には疎いんですが、吉野と言うと吉野山の?」
「はい。その隣に高取っていう町があってそこにいま住んでるんです」
迎えの軽自動車の後部座席に荷物を積み込むと、父と娘は運転席と助手席に乗り込んだ。
家までは10分ちょっとで着くというのでその間俺はぼうっと神戸の街を眺めていた。
地元に比べればやはり神戸は大きな街である。しかし高校時代を過ごした浦和・大宮辺りと街の景色が大きく違うという事はない。
神戸の異人町だとか南京町の辺りは通らないのか、と聞けば「あの辺は観光客多くて通り抜けがちょっと難しいので」と答えが返る。
10分もすると街並みは下町の住宅街へ差し掛かって坂道の途中の一軒家の前で車が止まる。
「ここがうちです、荷物乗せたままにしておきます?」
「あー……まあおうちに持ち込んでも邪魔でしょうし車内に置いといてもらった方が良いかな」
「じゃあそうしましょうか。車入れるんで先おりてもらった方が良いかな。なな恵家の鍵あるよな」
「あるよ」
「うちの娘に鍵開けさせるんで先家の中入ってください」
「じゃあ、そうさせて貰います」
荷物を載せっぱなしのまま車を降りると、なな恵さんについて家の中へ迎えられる。
踏み入れたその家の玄関からは確かに人の家の匂いがするが、なんとなくうちの匂いと近しい気がした。
待ち合わせ場所の改札を見渡すと、改札口の向こう側の壁に俺より少し上くらいの男性と中学生くらいの娘さんが壁にもたれた状態できょろきょろと人を探している事に気づいた。
「真柴幸輔さんとなな恵さんですか」
「っ、はい!」
咄嗟にもたれていた姿勢を直して俺のほうを見た。
見た目はいかにもよくいるうだつの上がらない中年のお父さんと言ったところだろうか。
真冬だというのになぜかスポーツ刈りなところとか、中年太りの身体をポロシャツとチノパンに押し込んでいる感じとか、営業周りで培われたらしい俺に対する腰の低さだとか、総合してそういう風に感じる。
(……まあ俺だってもう40過ぎだから中年なんだけどな)
「あ、こちらうちの娘のなな恵です」
「真柴なな恵です」
娘さんも同じく特別華やいだ印象はない。
質素にまとめられたロングヘアとシンプルな眼鏡からは化粧っ気を感じないし、ダッフルコートも丁寧に管理されている様子は感じられるが古さを感じる。
「今回はお宅にお邪魔させてもらう形になると聞きましたが本当に大丈夫なんですか?」
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「じい…‥、うちの祖父は高取から来てもらってるので」
俺が「高取とは?」と聞くと「えっと、吉野の隣です」となな恵さんが返してくれる。
「関東の人間なんでこっちの地理には疎いんですが、吉野と言うと吉野山の?」
「はい。その隣に高取っていう町があってそこにいま住んでるんです」
迎えの軽自動車の後部座席に荷物を積み込むと、父と娘は運転席と助手席に乗り込んだ。
家までは10分ちょっとで着くというのでその間俺はぼうっと神戸の街を眺めていた。
地元に比べればやはり神戸は大きな街である。しかし高校時代を過ごした浦和・大宮辺りと街の景色が大きく違うという事はない。
神戸の異人町だとか南京町の辺りは通らないのか、と聞けば「あの辺は観光客多くて通り抜けがちょっと難しいので」と答えが返る。
10分もすると街並みは下町の住宅街へ差し掛かって坂道の途中の一軒家の前で車が止まる。
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「あー……まあおうちに持ち込んでも邪魔でしょうし車内に置いといてもらった方が良いかな」
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「あるよ」
「うちの娘に鍵開けさせるんで先家の中入ってください」
「じゃあ、そうさせて貰います」
荷物を載せっぱなしのまま車を降りると、なな恵さんについて家の中へ迎えられる。
踏み入れたその家の玄関からは確かに人の家の匂いがするが、なんとなくうちの匂いと近しい気がした。
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