153 / 254
13:真柴春彦の冬休み
13-1
しおりを挟む
紅葉の季節が終わり、晩秋から初冬へ足を踏み入れる11月半ば。
金羊国大使館には今月分の手紙がまとめて届いていた。
「これで今月分の手紙は全部ですね」
「ありがとう」
月に1度納村は金羊国大使館から東京にある大学病院に通院しており、そのついでに外務省に転送された大使館メンバー宛の手紙や荷物を持ってきてくれる。
緊急性が低く私的な手紙が全員に届くこのタイミングは大使館メンバーにとって心休まるひとときでもある
俺の手元にも毎月叔母から近況報告の手紙が届き、施設での母の様子やいとこたちのくだらないエピソードを読んでその光景を思い浮かべると心が和んだ。
稀に俺の事を聞いた地元の同級生からの結婚式や同窓会のお誘いや、家の事を任せてる不動産屋や母のいる施設からの業務連絡などもある。
俺宛の手紙を精査していると、見知らぬ宛先からの手紙がひとつ出てきた。
「真柴幸輔……?」
地球から俺たちに手紙を送る場合、手紙は一度外務省に転送され危険物の封入チェックが行われるので見知らぬ人からの嫌がらせ目的の手紙はほぼシャットアウトされる。
たまに刃物入りの手紙だとか自称異世界人からのおかしな内容の手紙などあったのでこのような対策が取られている。
そこをすり抜けているので恐らく問題はないはずだ。
「どうした?」
自分あての手紙に目を通し終えた木栖が俺のほうを見た。
「いや、見覚えのない宛先からの手紙が入っていたからつい」
「外務省のチェックは通ってるんだから大丈夫だと思うがな」
注意深く封を開けて中に異物がないことを確認すると、手紙を開いた。
真柴春彦様
年の瀬の騒がしい時期に突然のお手紙を失礼申し上げます。
自分は神戸に住む一介のしがない勤め人で、真柴幸輔と申します。
なぜこのようなお手紙をお出しすることになったかと申しますと、今年の6月ごろに外務省による身辺調査の一環でジーン社の遺伝子調査キットを用いて遺伝子検査を受けられたことはお覚えでしょうか。
夏休みにその遺伝子検査キットを使った私の娘・なな恵と真柴様が親族関係に当たると判明し、夏以降自分たち父娘で親族関係をあたっておりました。
調査の結果、真柴様と自分は祖父同士が兄弟に当たるとのことで自分としてもこのような親族関係があるとこの度初めて知ることになりました。
つきましては、ご多忙かと思いますが一度親族として御目文字叶えばと考えております。
調査結果の家系図と連絡先の番号を同封いたしますので、ご一考いただければと思います。
その手紙を見てようやく遺伝子検査の事を思い出した。
(外務省からの身辺調査で親族を洗いなおす、って言われたなそういや……)
身内からも疑いをかけられたことへの気落ちが大きすぎて忘れていたが、身辺調査の一環で遺伝子検査を受けた記憶はある。
しかしそれで父方の親族が見つかったとは聞いていない。
自室に戻って遺伝子検査について資料を封筒から引っ張り出すが、親族関係はほとんど見つかっていなかった。
しかし注意事項として『親族については定期的にウェブサイトの確認を推奨します』という記述があった。
同封の別資料によると、この遺伝子検査の情報は定期的に更新されるそうで俺よりも後に遺伝子検査を受けた人の中に親族がいれば更新されるらしい。
「要確認事項が増えてしまったな」
しかし、長らく謎だった父方のことを知ることが出来るかもしれないと思えばほんの少し好奇心がくすぐられるのも事実だった。
金羊国大使館には今月分の手紙がまとめて届いていた。
「これで今月分の手紙は全部ですね」
「ありがとう」
月に1度納村は金羊国大使館から東京にある大学病院に通院しており、そのついでに外務省に転送された大使館メンバー宛の手紙や荷物を持ってきてくれる。
緊急性が低く私的な手紙が全員に届くこのタイミングは大使館メンバーにとって心休まるひとときでもある
俺の手元にも毎月叔母から近況報告の手紙が届き、施設での母の様子やいとこたちのくだらないエピソードを読んでその光景を思い浮かべると心が和んだ。
稀に俺の事を聞いた地元の同級生からの結婚式や同窓会のお誘いや、家の事を任せてる不動産屋や母のいる施設からの業務連絡などもある。
俺宛の手紙を精査していると、見知らぬ宛先からの手紙がひとつ出てきた。
「真柴幸輔……?」
地球から俺たちに手紙を送る場合、手紙は一度外務省に転送され危険物の封入チェックが行われるので見知らぬ人からの嫌がらせ目的の手紙はほぼシャットアウトされる。
たまに刃物入りの手紙だとか自称異世界人からのおかしな内容の手紙などあったのでこのような対策が取られている。
そこをすり抜けているので恐らく問題はないはずだ。
「どうした?」
自分あての手紙に目を通し終えた木栖が俺のほうを見た。
「いや、見覚えのない宛先からの手紙が入っていたからつい」
「外務省のチェックは通ってるんだから大丈夫だと思うがな」
注意深く封を開けて中に異物がないことを確認すると、手紙を開いた。
真柴春彦様
年の瀬の騒がしい時期に突然のお手紙を失礼申し上げます。
自分は神戸に住む一介のしがない勤め人で、真柴幸輔と申します。
なぜこのようなお手紙をお出しすることになったかと申しますと、今年の6月ごろに外務省による身辺調査の一環でジーン社の遺伝子調査キットを用いて遺伝子検査を受けられたことはお覚えでしょうか。
夏休みにその遺伝子検査キットを使った私の娘・なな恵と真柴様が親族関係に当たると判明し、夏以降自分たち父娘で親族関係をあたっておりました。
調査の結果、真柴様と自分は祖父同士が兄弟に当たるとのことで自分としてもこのような親族関係があるとこの度初めて知ることになりました。
つきましては、ご多忙かと思いますが一度親族として御目文字叶えばと考えております。
調査結果の家系図と連絡先の番号を同封いたしますので、ご一考いただければと思います。
その手紙を見てようやく遺伝子検査の事を思い出した。
(外務省からの身辺調査で親族を洗いなおす、って言われたなそういや……)
身内からも疑いをかけられたことへの気落ちが大きすぎて忘れていたが、身辺調査の一環で遺伝子検査を受けた記憶はある。
しかしそれで父方の親族が見つかったとは聞いていない。
自室に戻って遺伝子検査について資料を封筒から引っ張り出すが、親族関係はほとんど見つかっていなかった。
しかし注意事項として『親族については定期的にウェブサイトの確認を推奨します』という記述があった。
同封の別資料によると、この遺伝子検査の情報は定期的に更新されるそうで俺よりも後に遺伝子検査を受けた人の中に親族がいれば更新されるらしい。
「要確認事項が増えてしまったな」
しかし、長らく謎だった父方のことを知ることが出来るかもしれないと思えばほんの少し好奇心がくすぐられるのも事実だった。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説

アレク・プランタン
かえるまる
ファンタジー
長く辛い闘病が終わった
と‥‥転生となった
剣と魔法が織りなす世界へ
チートも特典も何もないまま
ただ前世の記憶だけを頼りに
俺は精一杯やってみる
毎日更新中!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「魔王のいない世界には勇者は必要ない」と王家に追い出されたので自由に旅をしながら可愛い嫁を探すことにしました
夢幻の翼
ファンタジー
「魔王軍も壊滅したし、もう勇者いらないよね」
命をかけて戦った俺(勇者)に対して魔王討伐の報酬を出し渋る横暴な扱いをする国王。
本当ならばその場で暴れてやりたかったが今後の事を考えて必死に自制心を保ちながら会見を終えた。
元勇者として通常では信じられないほどの能力を習得していた僕は腐った国王を持つ国に見切りをつけて他国へ亡命することを決意する。
その際に思いついた嫌がらせを国王にした俺はスッキリした気持ちで隣町まで駆け抜けた。
しかし、気持ちの整理はついたが懐の寒かった俺は冒険者として生計をたてるために冒険者ギルドを訪れたがもともと勇者として経験値を爆あげしていた僕は無事にランクを認められ、それを期に国外へと向かう訳あり商人の護衛として旅にでることになった。
といった序盤ストーリーとなっております。
追放あり、プチだけどざまぁあり、バトルにほのぼの、感動と恋愛までを詰め込んだ物語となる予定です。
5月30日までは毎日2回更新を予定しています。
それ以降はストック尽きるまで毎日1回更新となります。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~
エール
ファンタジー
古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。
彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。
経営者は若い美人姉妹。
妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。
そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。
最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜
むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。
幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。
そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。
故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。
自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。
だが、エアルは知らない。
ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。
遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。
これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。


クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる