異世界大使館はじめます

あかべこ

文字の大きさ
上 下
152 / 254
12.5:大使館に奇妙な客人

12.5-4

しおりを挟む
「――や、やっと帰ってこれた……」

あの後、なんだかんだあって帰ってくることができた。結構近いところにあってよかった。

「……ま、またここ飛ぶの?」

下にはベットがあるがやっぱり怖い。未来ちゃんは興奮してるようで飛び降りようとしていた。

「ちょちょちょ!未来ちゃん飛ぶの!?」
「うん!飛びたい!」

なんとか止めようとしたけど、未来ちゃんはウッキウキで下へと飛び降りた。


下で未来ちゃんがキャーキャー言っている。……嘘でしょ……未来ちゃんここ飛べるのぉ?

「はよ降りてこい」

下からノアの声が聞こえてくる。……降りれたら降りてるわ!

「ちょい!ハシゴ持ってきてよ!行く時置いてたでしょ!?」
「あれ重いんだよ。飛び降りた方がはやい」

なーんーでーーー!?持ってきてくれたらいーじゃーーん!!こんな所から飛び降りれるわけないジャーン!!

「お姉ちゃん降りれないの?」
「そうだぞー。降りれないのかお姉ちゃーん?」

くっそ!百合ちゃんが参戦してきやがった!回復したのは嬉しいけど腹立つぅ!!

「黙らっしゃい!!お、降りれるしー!これくらい……降りれますぅー!!」

私のプライドが火を噴いた。でも怖いものは怖い。


脚だけをプラプラと降ろしてみる。……なんかお尻がゾワゾワとする。

「うぅ……み、見てろぉ!降りるからなぁ!」
「ママ!!」
「未来!!」

未来ちゃんと荊棘さんが泣きながら抱き合っている。……今かぁ……今感動ムード出すのかぁ。なんか周りのみんなも感動ムード出してるんだけどぉ。私ここでビビり散らしてるんですけどぉ。


私がプルプルと震えていると、感動ムードが終わったみんなが私の方に向いてきた。……そんな見ないで……。

「花音ちゃんそろそろ降りてきなよー」
「そうだよー。降りてきたら頭撫でてあげるわよー」
「あーもー!!真唯さんまで悪ノリしないでー!!」

ちくしょう……小さい女の子が飛べて私が飛べないなんてぇ。情けないぃ……。

「はぁ……仕方ない」

ノアがパンパンと2回手を叩いた。……あれ?これってもしかして……。

「ちょちょっと待ってよ!まだ気持ちが整ってないというか、心が統一されてないというか、脚の調子が悪いというか、心の猫ちゃんがビビってるっていうか――」






足を掴まれた。あーまたこのパターン。ヤダヤダ男の子って野蛮ね。……あはは。


イコライザーに布団の上に叩き落とされた。バフンってなった。体がトランポリンみたいにはねる。

「……も、もうちょっと優しくしてぇ……」
「花音ちゃん。それえっちだからこれから言っちゃダメだよ」
「はい……」

百合ちゃんに頭を撫でられた。……ちきしょー。












「――やっぱりおかしいね」

まくっていた服を戻してお腹を隠す。まだまだ思春期なので素肌を見せるのは恥ずかしい。


私はおじいさんおばあさんに体を見られていた。……これだと誤解されそうだね。怪我がないかを見てもらっていた。

「食道に何か異物があるね……なんだろう」
「……あ、あのぅ……」

女の子に卵を産み付けられたとは言いにくい……。

「……あなたはあっちいってて」
「わかった。ただ病名だけは聞かせてくれよ」

おじいさんがみんなの所に行った。おばあさんが優しいな……。

「……まぁ、言いにくいこともあるわよね。でも治すためには言ってもらわないと。ここには機材もないし」
「……信じてくれます?」
「うん。大丈夫よ。言ってみなさい」
「……卵」
「え?」
「卵を産み付けられました……女の子に……」

おばあさんがポカンと口を開けている。まぁそりゃそうか。私も同じ立場なら同じ状況になる。

「……それ本当よね?」
「はい……お恥ずかしながら……」
「……わかったわ。信じる。こんな状況なんだしありえないこともないわよね……」

くっそ恥ずかしい。エプムーサめ、こんなに時間が経ってもダメージを与えてくるとはぁ……。

「ちょっと服を脱いでくれない?」

言われるがまま上の服を脱いだ。ちょっと肌寒い。冷たい空気が肌にまとわりついた。

おばあさんが私の胸の中心くらいに指を置いてきた。目を瞑って集中しているようだ。

「……確かに卵ね。多分カエルの卵みたいなゼリー状のやつ。でも食道に引っ付いてる。カルシウムの塊が食堂に根を張ってるわ」
「カルシウムって根を張るんですか?」
「ただの比喩よ。……でもちょっとだけね……これくらいならお酢を飲めば溶けて胃に落ちていくわ」
「3日以内に治りますか?」
「もちろん飲む量にもよるけど、これくらいなら頑張って飲めば大丈夫よ」

私は体がパァっと軽くなったのがわかる。これで私はエイリアンみたいなことにならなくて済む!

私は服をきながらおばあさんにお礼を言った。

「あの……おばあさんありがとうございます」
「おばあさんじゃなくて、美代子みよこ川口美代子かわぐちみよこよ。ちなみに私の夫は川口幸雄かわぐちさちおよ」

美代子さんはウインクをして私の前にペットボトルに入れられたお酢を置いた。……これを飲むのかぁ。












続く
しおりを挟む
気に入ってくださったら番外編も読んでみてください
マシュマロで匿名感想も受け付けています、お返事は近況ボードから。
更新告知Twitter@SPBJdHliaztGpT0
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

強制フラグは、いりません! ~今いる世界が、誰かの二次小説の中だなんて思うかよ! JKと禁断の恋愛するなら、自力でやらせてもらうからっ!~

ハル*
ファンタジー
高校教師の俺。 いつもと同じように過ごしていたはずなのに、ある日を境にちょっとずつ何かが変わっていく。 テスト準備期間のある放課後。行き慣れた部室に向かった俺の目の前に、ぐっすり眠っているマネージャーのあの娘。 そのシチュエーションの最中、頭ん中で変な音と共に、俺の日常を変えていく声が聞こえた。 『強制フラグを、立てますか?』 その言葉自体を知らないわけじゃない。 だがしかし、そのフラグって、何に対してなんだ? 聞いたことがない声。聞こえてくる場所も、ハッキリしない。 混乱する俺に、さっきの声が繰り返された。 しかも、ちょっとだけ違うセリフで。 『強制フラグを立てますよ? いいですね?』 その変化は、目の前の彼女の名前を呼んだ瞬間に訪れた。 「今日って、そんなに疲れるようなことあったか?」 今まで感じたことがない違和感に、さっさと目の前のことを終わらせようとした俺。 結論づけた瞬間、俺の体が勝手に動いた。 『強制フラグを立てました』 その声と、ほぼ同時に。 高校教師の俺が、自分の気持ちに反する行動を勝手に決めつけられながら、 女子高生と禁断の恋愛? しかも、勝手に決めつけているのが、どこぞの誰かが書いている某アプリの二次小説の作者って……。 いやいや。俺、そんなセリフ言わないし! 甘い言葉だなんて、吐いたことないのに、勝手に言わせないでくれって! 俺のイメージが崩れる一方なんだけど! ……でも、この娘、いい子なんだよな。 っていうか、この娘を嫌うようなやつなんて、いるのか? 「ごめんなさい。……センセイは、先生なのに。好きに…なっちゃ、だめなのに」 このセリフは、彼女の本心か? それともこれも俺と彼女の恋愛フラグが立たせられているせい? 誰かの二次小説の中で振り回される高校教師と女子高生の恋愛物語が、今、はじまる。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

異世界転移~治癒師の日常

コリモ
ファンタジー
ある日看護師の真琴は仕事場からの帰り道、地面が陥没する事故に巻き込まれた。しかし、いつまでたっても衝撃が来ない。それどころか自分の下に草の感触が… こちらでは初投稿です。誤字脱字のご指摘ご感想お願いします なるだけ1日1話UP以上を目指していますが、用事がある時は間に合わないこともありますご了承ください(2017/12/18) すいません少し並びを変えております。(2017/12/25) カリエの過去編を削除して別なお話にしました(2018/01/15) エドとの話は「気が付いたら異世界領主〜ドラゴンが降り立つ平原を管理なんてムリだよ」にて掲載させてもらっています。(2018/08/19)

処理中です...