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12.5:大使館に奇妙な客人
12.5-4
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食後、深大寺はヤマンラール女公爵に絡まれていた。
どうもあのひと言で深大寺が興味の対象になったようで、地球の文化的側面について色々と質問してきては深大寺もその質問をどんどん打ち返してきた。
「海の向こうの多様な文化が混ざり合って新しい文化が生まれる……海を越える技術があるからこそ生まれる流れだな」
「そうですね。こちらには海の向こうへ行く技術はないんですか?」
「外洋には船より大きな巨大生物も多いから外洋に出るのは自殺行為と思う人が大半だな、大陸の外を目指すならどういう技術が必要になる?」
「僕はその辺りは専門外なので詳しいことは……。素人考えですが、大きくて頑丈な船、長期航海に耐えられる栄養豊富な保存食、いざという時確実に戻ってこれる航海術でしょうか。あとは度胸と覚悟ですね」
「ふはっ、確かに度胸は必須だわな。しかし外洋の向こうの未知のものには心躍るものがあるな」
「ありますね。僕らも知らない言葉や味覚があるかもしれませんからね」
質問を重ねる女公爵はもとより、返答する深大寺のほうも心なしか楽しそうに見える。
元々文化交流を担当していたこともあり普段の仕事よりこういう話をするほうが向いているのだろう。
俺は木陰でハーブティーを飲みながら深大寺がやらかさないように監督しており、他の面々には思い思いの休息を取らせている。
「地球の海は我が国の海とどう違うのか、見比べに行けたら良いんだがなあ」
「僕らで見に行けたら良いんですけどね」
「金羊国は海から遠すぎるものな。川はどうだろう、地球の川と違ったりは?」
「護岸工事による風景の違い、橋の違いぐらいですね。川遊びについてはあまり大差ないと聞いてます」
「遊びは地球も金羊国も変わりなし、か。遊びは世界すら超えるかもな」
「人生を楽しみたいという心は誰しも持ちうる心なんでしょうね」
「……ああ。全く、聞きたいことはあふれんばかりにあるのに、時間が足りない」
おもむろに「ルスラン」と声をかけると物陰から筋骨隆々の若い男が現れた。
恐らく俺たちに気付かれぬよう隠れながらヤマンラール女公爵を警護していた用心棒なのだろう。
「スタンプボックスは?」
「こちらに」
木箱から手渡されたのは印章……シーリングスタンプに使われるものである。
ついでに白いシーリングワックスもセットで渡されると、深大寺は困惑したようにヤマンラール女公爵を見つめていた。
「定期的に地球の話を手紙で聞かせて欲しい、その際これを封筒に押してくれればこれが私宛だとすぐわかる」
「はあ」
「これは気に入った奴全員に渡してるから大して高価な品ではないし、壊れたらすぐに新しいのを渡すから気にせずどんどん手紙を寄こしてくれ」
にっこりとそう告げると「僕でよろしければ、ありがたく」と答えて受け取った。
どうやら深大寺はずいぶんとこの女公爵に気に入られたらしい。
(……双海公国絡みは深大寺を窓口にしておくか)
ちょっと心配ではあるが気に入られているのなら使わない手はない。
「また2~3日したら会いに来よう」
どうもあのひと言で深大寺が興味の対象になったようで、地球の文化的側面について色々と質問してきては深大寺もその質問をどんどん打ち返してきた。
「海の向こうの多様な文化が混ざり合って新しい文化が生まれる……海を越える技術があるからこそ生まれる流れだな」
「そうですね。こちらには海の向こうへ行く技術はないんですか?」
「外洋には船より大きな巨大生物も多いから外洋に出るのは自殺行為と思う人が大半だな、大陸の外を目指すならどういう技術が必要になる?」
「僕はその辺りは専門外なので詳しいことは……。素人考えですが、大きくて頑丈な船、長期航海に耐えられる栄養豊富な保存食、いざという時確実に戻ってこれる航海術でしょうか。あとは度胸と覚悟ですね」
「ふはっ、確かに度胸は必須だわな。しかし外洋の向こうの未知のものには心躍るものがあるな」
「ありますね。僕らも知らない言葉や味覚があるかもしれませんからね」
質問を重ねる女公爵はもとより、返答する深大寺のほうも心なしか楽しそうに見える。
元々文化交流を担当していたこともあり普段の仕事よりこういう話をするほうが向いているのだろう。
俺は木陰でハーブティーを飲みながら深大寺がやらかさないように監督しており、他の面々には思い思いの休息を取らせている。
「地球の海は我が国の海とどう違うのか、見比べに行けたら良いんだがなあ」
「僕らで見に行けたら良いんですけどね」
「金羊国は海から遠すぎるものな。川はどうだろう、地球の川と違ったりは?」
「護岸工事による風景の違い、橋の違いぐらいですね。川遊びについてはあまり大差ないと聞いてます」
「遊びは地球も金羊国も変わりなし、か。遊びは世界すら超えるかもな」
「人生を楽しみたいという心は誰しも持ちうる心なんでしょうね」
「……ああ。全く、聞きたいことはあふれんばかりにあるのに、時間が足りない」
おもむろに「ルスラン」と声をかけると物陰から筋骨隆々の若い男が現れた。
恐らく俺たちに気付かれぬよう隠れながらヤマンラール女公爵を警護していた用心棒なのだろう。
「スタンプボックスは?」
「こちらに」
木箱から手渡されたのは印章……シーリングスタンプに使われるものである。
ついでに白いシーリングワックスもセットで渡されると、深大寺は困惑したようにヤマンラール女公爵を見つめていた。
「定期的に地球の話を手紙で聞かせて欲しい、その際これを封筒に押してくれればこれが私宛だとすぐわかる」
「はあ」
「これは気に入った奴全員に渡してるから大して高価な品ではないし、壊れたらすぐに新しいのを渡すから気にせずどんどん手紙を寄こしてくれ」
にっこりとそう告げると「僕でよろしければ、ありがたく」と答えて受け取った。
どうやら深大寺はずいぶんとこの女公爵に気に入られたらしい。
(……双海公国絡みは深大寺を窓口にしておくか)
ちょっと心配ではあるが気に入られているのなら使わない手はない。
「また2~3日したら会いに来よう」
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