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11:大使館の騒がしい夏
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留学生出発記念式典の翌日、留学生たちは金羊国を離れ地球へと渡っていった。
半年から1年にわたる地球での生活や学業に必要な基礎訓練(一般的な道具類の使い方から学校での勉強に必要な知識の予習復習まで)を受けたのち、受け入れ先の学校に入学して地球の一般学生とともに肩を並べて学業に励むことになる。希望すればアルバイトも出来るから社会経験も積める。
彼らが金羊国に戻るのは最短で3年半、まだ少し先の話である。
「で、ついでに飯山さんも日本へ旅行に行ったわけか」
「そういうことだな」
時を同じくして、飯山さんが大使館が休みの日に合わせて日本へ小旅行に出かけた。
高校時代の同窓会に顔を出すついでにサプライズで奥さんの誕生日を祝いに行くらしい。
なので今夜は金羊国で手に入る酒と飯山さんが作り置きした鳥もつ煮を肴に庭で夏の夜空を見つつ飲み会、という運びになった訳である。
「同窓会とかほとんど顔出した記憶ないな」
鳥もつの歯ごたえを噛み締めながらそう呟いたのは納村である。
「防医大だと知り合いがみんな同窓なのでそもそもやる必要もないですしね」
柊木先生が苦笑いしつつ酒をちびちびと飲む。
「確か真柴大使と木栖さんは高校同じでしたよね、その頃から仲良かったんですか?」
そう聞いてきたのは嘉神だ。
大使館メンバーの履歴書レベルの個人情報は全員共有されてるから、俺たちが元同級生であることぐらいすぐわかるというものだ。
「同級生ではあったが仲がいいってことはなかったな」
「お互い意識はしてただろ、お前にとっての俺は目の上のたんこぶで」
ちょっと自虐めいた言い回しに聞こえるが当時の俺にとっては事実であり、むしろちゃんと認識していたことが意外だった。
「目の上のたんこぶ……よくそこから夫婦設定にいたりましたね」
「20年以上は前の事だしな、さすがに今は割り切ったんだよ」
なお、そう割り切れた理由の中に木栖が俺に惚れているという事実も含まれるが俺の口からいう事ではないだろう。
「割り切ってくれなければ惚れた男から指輪を貰うなんて経験はできなかった」
ほろ酔いの木栖が俺と自分の手にある指輪を見せびらかした。
すると納村が「その指輪何なんですか?!」と嘴を挟んできた。
「偽装とはいえ今の俺たちは夫婦だからな、揃いの指輪のぐらいあった方がらしいだろ?」
木栖が妙に自慢げに見せびらかしてくる。
(もしかしてもう酔いが回ってるのか?)
いや、金羊国で主流の野生果実をつぶして作る酒は甘口で度数が低い。東や南から輸入した蒸留酒もあるとはいえ木栖は蒸留酒と果汁を混ぜて飲んでいたから酔ったふりなのかもしれない。
酔ったふりでもしないと俺との仲の良さを見せつけられないとは難儀な男である。
「私も揃いの指輪買うことになったらその時はお願いしますよ」
「それは俺じゃなくて真柴や嘉神の領分だろう」
納村が隊長と結婚するという事になれば、婚姻に必要な各種証明書の発行などは俺たち大使館で担うことになる。まあその前に別れる可能性もあるがそこは言うまでもないので置いておく。
「これがリア充ってやつですかねえ」
「そうだよ嘉神、リア充してるだろ~?」
納村にウザ絡みされ始めた嘉神は「僕にはジョンがいるので」と答える。ちなみにジョンはさっきから嘉神に寄りかかられていたが大人しいものである。
「でもいちばんリア充してるのは大使かもしれませんよ」
柊木医師が柔らかな笑顔でそう告げる。
「なんでですか?」
「だって自分の事が大大大大大好きな人におはようからおやすみまで大事にされるなんて、既婚者でも難しいことですから」
途中で木栖に目を向けた柊木医師は全部察しているようだったが、酒の回り始めた納村は「爆発して欲しい」とつぶやくだけだった。
半年から1年にわたる地球での生活や学業に必要な基礎訓練(一般的な道具類の使い方から学校での勉強に必要な知識の予習復習まで)を受けたのち、受け入れ先の学校に入学して地球の一般学生とともに肩を並べて学業に励むことになる。希望すればアルバイトも出来るから社会経験も積める。
彼らが金羊国に戻るのは最短で3年半、まだ少し先の話である。
「で、ついでに飯山さんも日本へ旅行に行ったわけか」
「そういうことだな」
時を同じくして、飯山さんが大使館が休みの日に合わせて日本へ小旅行に出かけた。
高校時代の同窓会に顔を出すついでにサプライズで奥さんの誕生日を祝いに行くらしい。
なので今夜は金羊国で手に入る酒と飯山さんが作り置きした鳥もつ煮を肴に庭で夏の夜空を見つつ飲み会、という運びになった訳である。
「同窓会とかほとんど顔出した記憶ないな」
鳥もつの歯ごたえを噛み締めながらそう呟いたのは納村である。
「防医大だと知り合いがみんな同窓なのでそもそもやる必要もないですしね」
柊木先生が苦笑いしつつ酒をちびちびと飲む。
「確か真柴大使と木栖さんは高校同じでしたよね、その頃から仲良かったんですか?」
そう聞いてきたのは嘉神だ。
大使館メンバーの履歴書レベルの個人情報は全員共有されてるから、俺たちが元同級生であることぐらいすぐわかるというものだ。
「同級生ではあったが仲がいいってことはなかったな」
「お互い意識はしてただろ、お前にとっての俺は目の上のたんこぶで」
ちょっと自虐めいた言い回しに聞こえるが当時の俺にとっては事実であり、むしろちゃんと認識していたことが意外だった。
「目の上のたんこぶ……よくそこから夫婦設定にいたりましたね」
「20年以上は前の事だしな、さすがに今は割り切ったんだよ」
なお、そう割り切れた理由の中に木栖が俺に惚れているという事実も含まれるが俺の口からいう事ではないだろう。
「割り切ってくれなければ惚れた男から指輪を貰うなんて経験はできなかった」
ほろ酔いの木栖が俺と自分の手にある指輪を見せびらかした。
すると納村が「その指輪何なんですか?!」と嘴を挟んできた。
「偽装とはいえ今の俺たちは夫婦だからな、揃いの指輪のぐらいあった方がらしいだろ?」
木栖が妙に自慢げに見せびらかしてくる。
(もしかしてもう酔いが回ってるのか?)
いや、金羊国で主流の野生果実をつぶして作る酒は甘口で度数が低い。東や南から輸入した蒸留酒もあるとはいえ木栖は蒸留酒と果汁を混ぜて飲んでいたから酔ったふりなのかもしれない。
酔ったふりでもしないと俺との仲の良さを見せつけられないとは難儀な男である。
「私も揃いの指輪買うことになったらその時はお願いしますよ」
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納村が隊長と結婚するという事になれば、婚姻に必要な各種証明書の発行などは俺たち大使館で担うことになる。まあその前に別れる可能性もあるがそこは言うまでもないので置いておく。
「これがリア充ってやつですかねえ」
「そうだよ嘉神、リア充してるだろ~?」
納村にウザ絡みされ始めた嘉神は「僕にはジョンがいるので」と答える。ちなみにジョンはさっきから嘉神に寄りかかられていたが大人しいものである。
「でもいちばんリア充してるのは大使かもしれませんよ」
柊木医師が柔らかな笑顔でそう告げる。
「なんでですか?」
「だって自分の事が大大大大大好きな人におはようからおやすみまで大事にされるなんて、既婚者でも難しいことですから」
途中で木栖に目を向けた柊木医師は全部察しているようだったが、酒の回り始めた納村は「爆発して欲しい」とつぶやくだけだった。
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