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11:大使館の騒がしい夏
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紅忠の高槻君が大使館に定期的に顔を出すようになったおかげで、日本から提供される情報の伝達速度がだいぶ早くなってきた。
今までは納村が毎月持病の診察ついでに書類や研究用サンプルや新聞を運んでいたのだが、高槻君が週1で書類と新聞を持ってきてくれるようになったのだ。
納村の負担も減ったし情報の更新頻度が上がったのを思うとやはり専任の通信官の必要性を感じてしまう、予算が足りないし外部委託するにも紅忠ぐらいしか引き受けてくれなさそうなのがネックだ。
で、その情報伝達の速さのお陰で日本ではトンネル工事に向けた準備が進んでいることを知った。
ディーゼルエンジンではなく太陽光や小型水力・風力発電で動かせるようにするための建設機器の改良、日本側・金羊国側双方での工事人員募集、金羊国向け新鉄道システム開発などなどその速度はずいぶんなものであった。
記事に目を通しているとノックとともに嘉神が顔を出してくる。
「大使、エルヴァル物流担当官がいらっしゃいました」
「わかった」
はてそんなアポイントはあったかと思いつつ迎え入れると「突然申しわけありません」と詫びてくる。
「急にどうなされたんですか?」
「ちょっとしたご相談なのですが、大丈夫でしたか」
「問題ありませんよ。ご相談と言うのは?」
俺に差し出してきたのは1枚の招待状であった。
失礼して招待状に目を通すとそれが日本-金羊国トンネルの起工式の招待状だとわかった。
日付を見ると9月の終わりごろになっており、もう着工するのかと言う驚きを抱いてしまう。
「大使館経由で届いたのですが起工式と言うものがよくわからなくて」
「建設工事を始めるときなどに行う記念の式典ですね」
「こちらで言う安全祈祭のことでしたか」
金羊国側でも行うか検討した方が良いか……?というつぶやきが耳に入る。
もしこちらでも行われるなら俺が日本側の代表として出るだろうし、その際は早めに伝えておいて欲しいところだ。
「それにしてももう起工式なんですね」
「ええ。日本側の工事機器の改良の進捗もよかったですし、こちらも人員の集まりが良かったので」
色々聞いてみると建設機器改良にはヴィクトワール上級魔術官も関わっていたらしく、日本側の関係者を度々困らせつつも改良が早く進んだ一因でもあるらしい。
ふたつの国をつなぐ道が完成するまで最短4年、と前に言われたのを思い出す。
完成する頃には俺もこの大使館を離れているだろうが新しい道は双方にとって希望の道でもある。
「楽しみですね」
「ええ」
そう答えるエルヴァル物流担当官の表情はどこか柔らかかった。
今までは納村が毎月持病の診察ついでに書類や研究用サンプルや新聞を運んでいたのだが、高槻君が週1で書類と新聞を持ってきてくれるようになったのだ。
納村の負担も減ったし情報の更新頻度が上がったのを思うとやはり専任の通信官の必要性を感じてしまう、予算が足りないし外部委託するにも紅忠ぐらいしか引き受けてくれなさそうなのがネックだ。
で、その情報伝達の速さのお陰で日本ではトンネル工事に向けた準備が進んでいることを知った。
ディーゼルエンジンではなく太陽光や小型水力・風力発電で動かせるようにするための建設機器の改良、日本側・金羊国側双方での工事人員募集、金羊国向け新鉄道システム開発などなどその速度はずいぶんなものであった。
記事に目を通しているとノックとともに嘉神が顔を出してくる。
「大使、エルヴァル物流担当官がいらっしゃいました」
「わかった」
はてそんなアポイントはあったかと思いつつ迎え入れると「突然申しわけありません」と詫びてくる。
「急にどうなされたんですか?」
「ちょっとしたご相談なのですが、大丈夫でしたか」
「問題ありませんよ。ご相談と言うのは?」
俺に差し出してきたのは1枚の招待状であった。
失礼して招待状に目を通すとそれが日本-金羊国トンネルの起工式の招待状だとわかった。
日付を見ると9月の終わりごろになっており、もう着工するのかと言う驚きを抱いてしまう。
「大使館経由で届いたのですが起工式と言うものがよくわからなくて」
「建設工事を始めるときなどに行う記念の式典ですね」
「こちらで言う安全祈祭のことでしたか」
金羊国側でも行うか検討した方が良いか……?というつぶやきが耳に入る。
もしこちらでも行われるなら俺が日本側の代表として出るだろうし、その際は早めに伝えておいて欲しいところだ。
「それにしてももう起工式なんですね」
「ええ。日本側の工事機器の改良の進捗もよかったですし、こちらも人員の集まりが良かったので」
色々聞いてみると建設機器改良にはヴィクトワール上級魔術官も関わっていたらしく、日本側の関係者を度々困らせつつも改良が早く進んだ一因でもあるらしい。
ふたつの国をつなぐ道が完成するまで最短4年、と前に言われたのを思い出す。
完成する頃には俺もこの大使館を離れているだろうが新しい道は双方にとって希望の道でもある。
「楽しみですね」
「ええ」
そう答えるエルヴァル物流担当官の表情はどこか柔らかかった。
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