異世界大使館はじめます

あかべこ

文字の大きさ
上 下
125 / 254
10:大使館のあとしまつ

10-12

しおりを挟む
外務省と防衛省が俺の考えを支持したとしてもまだ事態は収束しない。
まず政府が武器の無断貸与と返却について訴訟を起こさない、と明言してくれるまで気が抜けないのだ。
それにハニートラップ発言の議員もさんざん批判されているがテンプレ謝罪文を出しただけで全く事態が鎮静化してない。
飯島を経由して上から『大ごとにはするな』『これ以上波風を立てるな』とは言われているが、そもそも俺と木栖に詫びに来てない辺りで本気で詫びる気はゼロなんだろうなあという気持ちではある。
「名誉棄損で訴訟にする?」
木栖が突然そんなことを言い出したのは、防衛省と外務省により俺たちの行動が問題なしとされた次の日の夜だった。
「そういう話をある議員に耳打ちされたってだけだ、その時はこっちでバックアップするともな」
「訴訟するのも選択肢としてはあるだろうが金羊国大使館勤務に戻れるのが決まった今だと訴訟は大変じゃないか?」
訴訟と言葉にすれば単純だが、ひとつの訴訟が終わるまでにかかる年月や費用を思えば気軽にやれるものじゃない。
特に今回は場所が特殊だし内容もセンセーショナル過ぎる。
「俺もそう思うんだが、ひとつだけ思うことがあってな」
「思うこと?」
「今後同じような目に遭うヤツを減らすためにも訴訟という前例を作っておくべきじゃないか、とも言われたんだ」
木栖は国会と言う場所で自分の私生活を暴露された立場だ。
私生活を暴露されあらぬ疑いをかけられて何もしないでいいはずはない。
しかし、さっきから一つだけわからない事がある。
「お前自身は訴えたいのか?それとも訴えずに済ませたいのか?」
「……どうなんだろうな。俺が悪い男に騙されたのは事実だし、それをバラされたことで生活の不利はない。ただ、次に会った時にあの言葉を思い出して平常心を保てそうにない」
「それが許せないってことだろ?」
「だとしても、俺がゲイでなければお前まで「これはお前があの言葉を許すかどうかの話だ。

俺たちは法治国家に住んでいて、傷つけられたら法により裁かれ自分の行いに対する罰則が下る。そこにお前の性の在り方は無関係だ」

木栖はしばらく考え込むと「そうかもしれないな」と気弱な同意を告げる。
「俺たちからもこの件に関して声明文を出して、訴訟についても明記してみるか。……あ、でもあれは国会中の発言だから憲法の免責特権働くのか?」
「それは俺も考えたが今回のことを公務員による損害とすれば国家賠償法の対象になる、と言われた」
国家賠償法と言うと国に対する損害賠償についてを明記した法律だ。
その辺を上が把握してるのかいないのかは不明瞭だが、このした方が良いかもしれない。

****

翌朝すぐに木栖に訴訟の話を耳打ちした議員と連絡を取り、法律的な部分を頭に叩き込むと俺はそれはそれは丁寧な法律の説明オブラートにくるみまくった脅迫を添えた手紙をいくつか郵送した。
飯島と上の偉い人には悪いがこれは俺のみならず木栖や木栖と同じ境遇の人々のためでもあるし、俺個人としてもあんな失礼千万な生き物が国会にいるのは癪に障るというものだ。
議員も免責特権を利用した差別発言であるという強く非難したうえで国家賠償法の話を引っ張り出し、若い世代による議員辞職署名にからむなどした結果。
「発言から5日で辞職か」
「国会であんなこと言ったんだ、妥当だろ」
小さくため息を漏らしながらまだ残る最後の大問題にため息を漏らすのだった。
しおりを挟む
気に入ってくださったら番外編も読んでみてください
マシュマロで匿名感想も受け付けています、お返事は近況ボードから。
更新告知Twitter@SPBJdHliaztGpT0
感想 0

あなたにおすすめの小説

アレク・プランタン

かえるまる
ファンタジー
長く辛い闘病が終わった と‥‥転生となった 剣と魔法が織りなす世界へ チートも特典も何もないまま ただ前世の記憶だけを頼りに 俺は精一杯やってみる 毎日更新中!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「魔王のいない世界には勇者は必要ない」と王家に追い出されたので自由に旅をしながら可愛い嫁を探すことにしました

夢幻の翼
ファンタジー
「魔王軍も壊滅したし、もう勇者いらないよね」  命をかけて戦った俺(勇者)に対して魔王討伐の報酬を出し渋る横暴な扱いをする国王。  本当ならばその場で暴れてやりたかったが今後の事を考えて必死に自制心を保ちながら会見を終えた。  元勇者として通常では信じられないほどの能力を習得していた僕は腐った国王を持つ国に見切りをつけて他国へ亡命することを決意する。  その際に思いついた嫌がらせを国王にした俺はスッキリした気持ちで隣町まで駆け抜けた。  しかし、気持ちの整理はついたが懐の寒かった俺は冒険者として生計をたてるために冒険者ギルドを訪れたがもともと勇者として経験値を爆あげしていた僕は無事にランクを認められ、それを期に国外へと向かう訳あり商人の護衛として旅にでることになった。 といった序盤ストーリーとなっております。 追放あり、プチだけどざまぁあり、バトルにほのぼの、感動と恋愛までを詰め込んだ物語となる予定です。 5月30日までは毎日2回更新を予定しています。 それ以降はストック尽きるまで毎日1回更新となります。

初めて入ったダンジョンに閉じ込められました。死にたくないので死ぬ気で修行したら常識外れの縮地とすべてを砕く正拳突きを覚えました

陽好
ファンタジー
 ダンジョンの発生から50年、今ではダンジョンの難易度は9段階に設定されていて、最も難易度の低いダンジョンは「ノーマーク」と呼ばれ、簡単な試験に合格すれば誰でも入ることが出来るようになっていた。  東京に住む19才の男子学生『熾 火天(おき あぐに)』は大学の授業はそれほどなく、友人もほとんどおらず、趣味と呼べるような物もなく、自分の意思さえほとんどなかった。そんな青年は高校時代の友人からダンジョン探索に誘われ、遺跡探索許可を取得して探索に出ることになった。  青年の探索しに行ったダンジョンは「ノーマーク」の簡単なダンジョンだったが、それでもそこで採取できる鉱物や発掘物は仲介業者にそこそこの値段で買い取ってもらえた。  彼らが順調に探索を進めていると、ほとんどの生物が駆逐されたはずのその遺跡の奥から青年の2倍はあろうかという大きさの真っ白な動物が現れた。  彼を誘った高校時代の友人達は火天をおいて一目散に逃げてしまったが、彼は一足遅れてしまった。火天が扉にたどり着くと、ちょうど火天をおいていった奴らが扉を閉めるところだった。  無情にも扉は火天の目の前で閉じられてしまった。しかしこの時初めて、常に周りに流され、何も持っていなかった男が「生きたい!死にたくない!」と強く自身の意思を持ち、必死に生き延びようと戦いはじめる。白いバケモノから必死に逃げ、隠れては見つかり隠れては見つかるということをひたすら繰り返した。  火天は粘り強く隠れ続けることでなんとか白いバケモノを蒔くことに成功した。  そして火天はダンジョンの中で生き残るため、暇を潰すため、体を鍛え、精神を鍛えた。  瞬発力を鍛え、膂力を鍛え、何事にも動じないような精神力を鍛えた。気づくと火天は一歩で何メートルも進めるようになり、拳で岩を砕けるようになっていた。  力を手にした火天はそのまま外の世界へと飛び出し、いろいろと巻き込まれながら遺跡の謎を解明していく。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~

エール
ファンタジー
 古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。  彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。  経営者は若い美人姉妹。  妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。  そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。  最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。 幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。 そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。 故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。 自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。 だが、エアルは知らない。 ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。 遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。 これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

処理中です...