異世界大使館はじめます

あかべこ

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10:大使館のあとしまつ

10-8

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木栖の証人喚問が終わると、次は俺の番である。
最初の質問に立ったのは今回の発端になった野党議員である。
「武器の即時返却を求めないという決断について指示などはありましたか?」
「いいえ。状況を見極めたうえで求めないことが双方の利益になる、と独断で行動しました」
「もし政府か監督省庁から指示があれば即時返却に動きましたか?」
その質問に言葉が詰まる。
確かに俺は今回、ファンナル隊長に武器を貸すことが最善だと思ってこういう行動に出た。
しかし上からの即時返却要請があれば返して貰うように頼むほかない。
「手心なしに返却に動けたかと問われると自信はありません、とだけ」
そう答えると野党議員は「日本国への忠誠はないのですか?」と吐き捨てるように問う。
「生まれ育った国への愛と忠誠を捨てたつもりはありません。ただ日本は金羊国に比べて豊かな国です、持てる者として持たざる者へ多少の寄付は止む無しと考えます」
野党議員は言い返す言葉に詰まったような顔をしてから、思い出したように「無償貸与、日本から金羊国への武器無償貸与の件があったはずです!」と言い出した。
「武器が金羊国側へ届けば返却を要請していたと思います」
そう言い返すと手詰まりのようで「質問を終わります」と言って不機嫌に席へ戻った。
この議員にとっては政府を叩く格好のネタだったんだろうが、今回の件に上の関与はないので次はもっと違うネタで戦って欲しいものである。
次に質問に立ったのは元防衛庁背広組で現総理派閥に在籍する国会議員である
「武器庫のカギの貸し出しについてはどの程度関与していましたか?」
「管理は木栖氏に一任しており自分は一切関与しておりません」
「……では木栖善泰氏が沖縄駐屯地時代に既婚男性との交際が原因で問題を起こし、異動になったことは?」
「最近になって知りました」

「では、木栖善泰氏に対してハニートラップを仕掛けカギを2つ渡させることは可能ですね?」

何言ってんだこいつ。
言っていることの意味が分からなさ過ぎて呆然とする俺に、元人権派弁護士の議員や同性愛者を公言する議員が「アウティングだ!」「職務に性的指向は関係ない!」と非難を飛ばす。
ちょっと深呼吸をして思考を整理しよう、この議員は金羊国に肩入れする俺が木栖にハニトラをしかけて武器を無断貸与させた。つまり俺が全部悪いことにするつもりなのだ。
「真柴春彦君」
「申し訳ありません議長、質問があまりにも無礼で呆然としていました」
あんなの木栖に対する侮辱である。いやあいつが俺のこと好きで揃いの指輪をつけてるのは事実なんだけど。
確かに俺をいささか盲目的に好きなところはあるがそのためにこんなことしでかすか?……いや、
あいつの過ちは俺も巻き添えられる以上、俺たちは間違えないために思考して行動する。
「先ほどの質問にお答えします。自分は好きでもない人に抱かれてまで金羊国を救おうと思うほどの底抜けのお人よしではありません」
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