116 / 254
10:大使館のあとしまつ
10-3
しおりを挟む
柊木医師と初めて会った時もそうだったが、防衛省の一番大きな会議室に居並ぶお歴々を前にするとどうにも自分だけが場違いな気がしてしまう。
目前に居並ぶのは防衛省官僚、いわゆる背広組なので官僚という意味では同じようなものではあるがやはり場違いの感は否めない。
唯一の救いは離れた場所で同席する飯島も同じように居心地の悪さを感じてくれているという事ぐらいか。
最後に現れた大臣の後ろにいる女性は大臣政務官だ、と木栖が耳打ちで告げてくれる。
「それでははじめます。木栖善泰一佐」
「はい」
「あなたには防衛省が配備した武器を無断で金羊国へ貸し出し、戦闘に関与した疑いがあります。これは越権行為であり、私戦予備罪・私戦陰謀罪や中立命令違反罪に成りえます」
中立命令違反は昔やった気がするが、私戦予備罪・私戦陰謀罪のほうは聞いたことがあるような?という程度だ。
それは全員同じなようで追加である官僚のひとりがスライドを映し出してくれる。
「私戦予備罪・私戦陰謀罪は、外国に対して私的に戦闘行為をする目的で予備または陰謀をした者を処罰する規定です。2014年にこの罪に問われた学生グループがいますのでそれで小耳にはさんだことがある方もいるかと思います。
中立命令違反罪は、外国が交戦している際に局外中立に関する命令に違反した者を処罰する規定になります」
話を聞いてそういえばそんなだったなと思い出す。
しかしふと思い出すことがあって「ひとつ確認したいのですが、」と手を挙げる。
「今回の件において日本政府は大使館に局外中立命令を出していないはずです、ですので中立命令違反罪は違うのでは?」
少なくとも俺と木栖にそうした指示が出た覚えはない。
そもそも政府首脳陣が異世界の戦いに日本人が関与するなど想定していなかったのか、それとも職務怠慢なのか。どうであれ使えるものは使わせてもらおう。
(罪をひっ被るにしても被るもんは軽いに越したことはないしな)
俺の指摘で大臣の機嫌が悪くなる。
木栖が小声で「よく言い返せるな」と言うので「被るなら軽い方がいい」と返す。
性格の悪い考えではあるがその後の人生で前科者にされるとしてもせめてそこの罪を軽くしたいと足掻くぐらいは許されたい。
飯島も挙手をすると「外務省のほうでも局外中立命令について把握しておりません」と付け足す。
「それと木栖一佐は直接戦闘に加わった訳でもないので私戦予備罪・私戦陰謀罪は違うように思うのですが」
ナイスすぎる助け舟が飛んできた。
あくまで今回の件は木栖の越権行為を処罰するものだから、侵攻に関わった事にされるのは筋違いのように思える。
その一言でああだこうだという話し合いが始まる。
正式に出ていない命令に服従する義務はないし、あくまで俺たちはうっかり配備品の武器を貸してしまっただけなのだ。
結局その言い分は不服ながらも通ったようで、大広間にため息が響くと「今回の件は犯罪行為に当たらないとします」という一言が響いた。
目前に居並ぶのは防衛省官僚、いわゆる背広組なので官僚という意味では同じようなものではあるがやはり場違いの感は否めない。
唯一の救いは離れた場所で同席する飯島も同じように居心地の悪さを感じてくれているという事ぐらいか。
最後に現れた大臣の後ろにいる女性は大臣政務官だ、と木栖が耳打ちで告げてくれる。
「それでははじめます。木栖善泰一佐」
「はい」
「あなたには防衛省が配備した武器を無断で金羊国へ貸し出し、戦闘に関与した疑いがあります。これは越権行為であり、私戦予備罪・私戦陰謀罪や中立命令違反罪に成りえます」
中立命令違反は昔やった気がするが、私戦予備罪・私戦陰謀罪のほうは聞いたことがあるような?という程度だ。
それは全員同じなようで追加である官僚のひとりがスライドを映し出してくれる。
「私戦予備罪・私戦陰謀罪は、外国に対して私的に戦闘行為をする目的で予備または陰謀をした者を処罰する規定です。2014年にこの罪に問われた学生グループがいますのでそれで小耳にはさんだことがある方もいるかと思います。
中立命令違反罪は、外国が交戦している際に局外中立に関する命令に違反した者を処罰する規定になります」
話を聞いてそういえばそんなだったなと思い出す。
しかしふと思い出すことがあって「ひとつ確認したいのですが、」と手を挙げる。
「今回の件において日本政府は大使館に局外中立命令を出していないはずです、ですので中立命令違反罪は違うのでは?」
少なくとも俺と木栖にそうした指示が出た覚えはない。
そもそも政府首脳陣が異世界の戦いに日本人が関与するなど想定していなかったのか、それとも職務怠慢なのか。どうであれ使えるものは使わせてもらおう。
(罪をひっ被るにしても被るもんは軽いに越したことはないしな)
俺の指摘で大臣の機嫌が悪くなる。
木栖が小声で「よく言い返せるな」と言うので「被るなら軽い方がいい」と返す。
性格の悪い考えではあるがその後の人生で前科者にされるとしてもせめてそこの罪を軽くしたいと足掻くぐらいは許されたい。
飯島も挙手をすると「外務省のほうでも局外中立命令について把握しておりません」と付け足す。
「それと木栖一佐は直接戦闘に加わった訳でもないので私戦予備罪・私戦陰謀罪は違うように思うのですが」
ナイスすぎる助け舟が飛んできた。
あくまで今回の件は木栖の越権行為を処罰するものだから、侵攻に関わった事にされるのは筋違いのように思える。
その一言でああだこうだという話し合いが始まる。
正式に出ていない命令に服従する義務はないし、あくまで俺たちはうっかり配備品の武器を貸してしまっただけなのだ。
結局その言い分は不服ながらも通ったようで、大広間にため息が響くと「今回の件は犯罪行為に当たらないとします」という一言が響いた。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

農民の少年は混沌竜と契約しました
アルセクト
ファンタジー
極々普通で特にこれといった長所もない少年は、魔法の存在する世界に住む小さな国の小さな村の小さな家の農家の跡取りとして過ごしていた
少年は15の者が皆行う『従魔召喚の儀』で生活に便利な虹亀を願ったはずがなんの間違えか世界最強の生物『竜』、更にその頂点である『混沌竜』が召喚された
これはそんな極々普通の少年と最強の生物である混沌竜が送るノンビリハチャメチャな物語

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

異世界転移~治癒師の日常
コリモ
ファンタジー
ある日看護師の真琴は仕事場からの帰り道、地面が陥没する事故に巻き込まれた。しかし、いつまでたっても衝撃が来ない。それどころか自分の下に草の感触が…
こちらでは初投稿です。誤字脱字のご指摘ご感想お願いします
なるだけ1日1話UP以上を目指していますが、用事がある時は間に合わないこともありますご了承ください(2017/12/18)
すいません少し並びを変えております。(2017/12/25)
カリエの過去編を削除して別なお話にしました(2018/01/15)
エドとの話は「気が付いたら異世界領主〜ドラゴンが降り立つ平原を管理なんてムリだよ」にて掲載させてもらっています。(2018/08/19)

(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる