異世界大使館はじめます

あかべこ

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10:大使館のあとしまつ

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武器返却の3日後、大使館を嘉神に任せて早朝の東京に戻るとつゆ曇りの空が広がっていた。
出迎えに来た黒い車から降りてきたのはどこかげんなりした様子の飯島だった。
「ひさしぶり、お前らほんとに何やらかしてんの?」
この件で防衛省やマスメディアに問い合わせを受けたのだろう、と察すると「すまん」とのみ返した。
マスメディアに見つからないうちに荷物を積み込んで車に乗り込むと見知らぬ眼鏡の男が運転席にいる。
「久しぶりです、木栖1佐」
「折笠3尉か、久しぶりだな」
「いまは1尉です。全員乗りましたね?車出しますよ」
エンジンをかけると車は安全運転で市ヶ谷を目指し始める。
木栖に「知り合いなのか?」と問えば「沖縄地本にいた時の部下だ」と返してくる。
地本というと確か各都道府県にある自衛官の募集活動なんかをやってるとこだったはずだ、こいつも色んな所に行ってるものである。
「真柴春彦在金羊国大使と木栖善泰一等陸佐には他国軍事勢力への無断武器貸与疑惑がかかっています。
これに関して防衛省内で片づける予定の予定でしたが昨日国会への参考人招集がかかりました、拒否権の行使は可能ですがどうなさいますか」
折笠3尉は実に淡々と俺たちに問いかけてくる。
木栖に「どうする?」と問われて少し考える。
「そもそもどういう流れで参考人招致の流れになったんだ?」
「野党のある議員が西の国との紛争に自衛隊の装備品が使われていることに疑問を呈し、防衛省で大使館に武器を配備していることが明るみに出ると、防衛省による大使館への配備の数の多さと許可も取らずに貸し出した無断貸与が問題になってます」
「悪いけど無断貸与の件については外務省うちは関与してない、ということにしてる。こっちは全然聞いてないからな」
飯島の言い分には「わかってる」とだけ付け足す、そもそも金羊国への武器の無償貸与要請は伝えていたが武器をことは伏せていたのだから当然だ。
越権行為だという自覚はあったがまさか国会に参考人招致されるとこまでは予想していなかった。
(省内で片が付くと思ってたんだがな……しかたない)
「木栖、参考人招致に応じようと思うがお前はどうする?」
「この問題の主役はおそらく俺だろう、俺が行かないでどうする」
木栖の一言が力強く俺の耳に響いてくる。
「助かる」
そう告げると木栖は「当たり前だ」とニヒルにほほ笑む。
車は外堀通りを抜けて飯田橋に入っていく、市ヶ谷の防衛省まではもうすぐだ。
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