異世界大使館はじめます

あかべこ

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9:大使館と戦乱の火

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停戦条約が発効したのは4月もあと数日で終わる頃のことであった。
王の砦を中心としたエリアは王家直轄地となり、割譲された場所には国境を示す柵が立てられ、緩衝地帯には小麦や鉱石・宝石が運び込まれては西の国の兵士が持ち去っていく。
それらの様子を監督しつつ地球へ送るため1つ1つ綿密な記録を取り、ついでに西の国や教会とのコネを作らんと動き回ったが極端に排外的な彼らといいコネを作れずにいた。
「停戦条約も発効したことですし、所属先に戻ることになりました」
そう口を開いたのはポアロ大佐であった。
米軍のほうも同様に5月の半ばまでには撤退するという。
まだ分析の終わっていない映像資料も多いので戻ったらそちらの分析に入るという。
「そうでしたか、お疲れさまでした」
「いえ。いろいろと貴重な経験をさせていただきました。
……ところで金羊国側が武器の件は素直に報告してよろしいので?」
ポアロ大佐が心配そうに俺にそう問うた。
「構いません、多少の𠮟責は覚悟の上ですから」
停戦条約の発効が報告されると上から『嘉神を金羊国へ戻すので武器の錯誤貸与の件について直接報告するように』という連絡が来ていた。
これについては直接俺と木栖の言い分を聞いてから処分を言い渡すということなのだろう。
「そうですか」

****

5月、金羊国は静かな収穫祭を迎えた。
まだ侵攻のドタバタの余波が大きいのだ、多くはないが死傷者が出たのもあってお祭りなどという余裕は誰も持ち合わせていなかった。
停戦条約の発効で避難者の帰国もある、まだこの状態は続くだろう。
日本と金羊国をつなぐトンネルの入り口で木栖と一緒に待ちぼうけていると、かすかな足音が聞こえて来た。


「真柴大使、ただいま戻りました」

いつもの面々がそう言って並ぶのを見て、俺はようやくひと心地ついて「おかえり」と返すのだった。
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