異世界大使館はじめます

あかべこ

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9:大使館と戦乱の火

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第一都市から西の砦までは自転車で移動することにした、理由?シンプルに遠すぎるからである。
当初は俺も自転車でついていくつもりだったが、トムリンソン准将や木栖との体力の差に不安があったのでママチャリの後ろに人力車を付けて荷物と一緒に運ばれることになった。
大使館で留守番するポアロ大佐との通信手段として無線機を積み、双方の意思交換のための書類を背負い、予備のスーツも持って行っての交渉である。
ママチャリとは思えないスピードで第一都市から大森林西側の山岳地帯まで自転車で半日、徒歩で山を越えるのに半日(高尾山程度の高さだったのでこれで済んだ)、そこからさらに森を抜けるのに徒歩で2日という形である。
前回北の国へ向かう際に使ったのと同じ大森林越えの抜け道はあるものの、現在使用中のため使用許可が下りなかったので徒歩で森を抜けるルートである。なおカストロ中尉は担当者といい関係を築いてこっそり使わせてもらっているらしい、解せぬ。
幸いであったのは金羊国側の兵士は俺たちに好意的だったので森を抜けるのにいい裏道を教えてくれた事だった。
特に飯山さんの知り合いだという熊の獣人にも助けられ、予定通り3日で西の国の砦にたどり着くことができた。
停戦交渉の仲介人を送ることは砦に日米共同で書簡を送っていて国旗を掲げることで通じるはずなので、木栖とトムリンソン准将には近くに捨てられていた穂先の欠けた槍を竿にして国旗を取り付け担いでもらうことにした。
「木栖、のこぎりとかないのに平気か?」
「トムリンソン准将が俺の分も切ってくれるらしい」
すいませんと木栖が軽く目礼をすると気にするなという風にアイコンタクトを送ってきた。
「切りながら話しても大丈夫ですか」
トムリンソン准将は「構わない」と答えてくれる。

「グウズルン情報管理官によると、今回の戦で作られた3つの砦は現在停戦派と交戦派に分かれています。
最も規模の大きな王の砦には西の国のヴァランタン第3王子と教会の騎士団長であるベルナール・ド・バラドュール氏が入っており、交戦派です。
王の砦の南にある金の砦はこの辺りの前領主のアデラール・ド・ルセル辺境伯が指揮を執り、こちらも交戦派ですがあくまで王家や教会の意向に従う形です。
王の砦の北にある銀の砦は前王の弟であるジャン=ジャック・リゴー侯爵が指揮を執り、停戦派です。元々この戦に興味がなかったようなので、彼を味方につけるよさそうです」

「自前の情報じゃないんだな?」
トムリンソン准将の指摘はもっともだ。
金羊国側が誤情報を提供してきた場合の考えがない、という指摘なのだろう。
「はっきり言ってしまえば、俺たちに西の国とのツテはありません。そうなると金羊国の提供した情報に頼るほかない。ただ全く自前の情報がないわけでもないんですよね」
「自前の情報というのは?」
「それも他国経由か西の国出身者の噂程度のものです、金羊国は大陸の嫌われ者な上大使館は人手不足ですから」
その言葉に「呆れたな」と告げられる。
自前の情報源の少なさは否定しきれないが人手不足とツテづくりの難しさはどうにもならない。
「しかしここまで来てしまった以上、どうにもならんな。比較的懐柔できそうな銀の砦を目指そう」
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