106 / 254
9:大使館と戦乱の火
9-13
しおりを挟む
停戦協定の話が持ち込まれた次の日、西の森の戦況に新しい変化が現れた。
「……なにか飛んでる?」
ポアロ大佐の指摘したものは人影のように見える。
「何かって金羊国の鳥系獣人兵ではないんですか?」
金羊国がこれまで西の国を抑え込むことができたのは、西の国に飛行戦力がほぼ皆無であったことが大きい。
空を飛ぶ魔術が使える人間は希少で死ねば大きな損害を被ることから、安くて替えの利く鳥系獣人はこの世界における貴重な航空戦力として活用されていた。
しかし西の国が連れてきた鳥系獣人は金羊国が夜襲の際優先的に自国に連れて行っているので現在西の国にはほとんど鳥系獣人がおらず、航空戦力が不在となっている。
「違います、これは……!」
空を飛ぶように走ってきたのは鎧を纏った人間だった。
茶色の鎧(素材はおそらくジョンと同種の生き物の甲羅だろう)にロングソードを腰に佩き、胸には教会に仕える騎士を示すロゴが刻み込まれている。
「異教徒め、覚悟!」
大型ドローンを叩き切ろうとするのを視認したポアロ大佐はすぐさま3台の大型ドローンを撤退させる。
幸い教会の騎士は3分飛ぶのが限界なようで途中で倒れるように落ちていくのが見えたが、自動操縦にしていたドローンが1台通信不能になっている。
『本部、先ほど上空からドローンの墜落を確認。回収しますか?』
『回収可能でしたらお願いします、しかし生命に関わると判断すれば放置しても構いません』
『了解』
壊されたらしいドローンの回収は現場にいるラドフォード中尉にお願いし、残った2台は大使館で点検が行われた。
「戦況打破のための新戦力の投入でしょうか」
「恐らくそうでしょうね。短期決戦のつもりが長引いたので使うつもりのなかった予備兵を投入といったところでしょう」
ドローンで大森林西部の様子が確認できないことに不安がよぎる。
しばらくしてドローンの点検を終えると「少し慎重に飛ばしましょう」と飛ばすドローンを一台だけに絞ることにし、再びドローンは大森林西部へと飛び立った。
****
大森林西部の上空は教会の騎士と金羊国の鳥系獣人兵による剣技格闘が繰り広げられていた。
流れ矢に気を使いつつドローンで偵察を続けていると、地上のほうがいささか金羊国側に不利な流れが生まれてきた。
「金羊国は空から兵を指揮していたのが教会騎士の投入で難しくなってきたようですね」
ポアロ大佐の分析に耳を傾けていると銃声が増えてきたことに気づく。
「これは9ミリ拳銃ではなくM24、アサルトライフルですね。これも彼らが間違えて持って行ったんですか?」
「……そのようです」
「木栖大佐(※自衛隊では1等陸佐と呼ぶが世界的には大佐になるのでそう呼んでいる)が持ち込んだ武器について真柴大使はどの程度把握していますか?」
「配備されている小火器類は大体使えるので持ち込んだと聞いてます」
微妙な表情でごまかすがやはりポアロ大佐にはバレている気がする。
『こちら本部、金羊国側は大使館にあった拳銃・自動小銃・散弾銃を誤認借用して用いている模様。誤射に気を付けて行動するように』
『了解しました』
呆れ気味にポアロ大佐がこちらを見るので「この不始末は自分で片づけますので」というほかなかった。
「まあいいサンプルが出来たと思うことにしましょう」
そう呟きながら地上や上空での戦闘の様子に目を向けると、ファンナル隊長が複数の騎士と殴り合っているのが目に見えた。
襲ってきた騎士のロングソードを蹴ってへし折るとナイフでで動脈を切り、拳銃でアキレス腱を打ち抜くと同時に地面にたたき落とし、切っ先を避けると同時に拳銃でわき腹をぶち抜く。
一瞬で騎士たちを地面に落とすと仲間たちの支援に駆け込んでいく。
それはアクション映画のような激しくも美しい動きであった。
「……まるでガン=カタですね」
いったいファンナル隊長はこの1年で木栖から何を教わってきたのか、大いに聞きたいところである。
「……なにか飛んでる?」
ポアロ大佐の指摘したものは人影のように見える。
「何かって金羊国の鳥系獣人兵ではないんですか?」
金羊国がこれまで西の国を抑え込むことができたのは、西の国に飛行戦力がほぼ皆無であったことが大きい。
空を飛ぶ魔術が使える人間は希少で死ねば大きな損害を被ることから、安くて替えの利く鳥系獣人はこの世界における貴重な航空戦力として活用されていた。
しかし西の国が連れてきた鳥系獣人は金羊国が夜襲の際優先的に自国に連れて行っているので現在西の国にはほとんど鳥系獣人がおらず、航空戦力が不在となっている。
「違います、これは……!」
空を飛ぶように走ってきたのは鎧を纏った人間だった。
茶色の鎧(素材はおそらくジョンと同種の生き物の甲羅だろう)にロングソードを腰に佩き、胸には教会に仕える騎士を示すロゴが刻み込まれている。
「異教徒め、覚悟!」
大型ドローンを叩き切ろうとするのを視認したポアロ大佐はすぐさま3台の大型ドローンを撤退させる。
幸い教会の騎士は3分飛ぶのが限界なようで途中で倒れるように落ちていくのが見えたが、自動操縦にしていたドローンが1台通信不能になっている。
『本部、先ほど上空からドローンの墜落を確認。回収しますか?』
『回収可能でしたらお願いします、しかし生命に関わると判断すれば放置しても構いません』
『了解』
壊されたらしいドローンの回収は現場にいるラドフォード中尉にお願いし、残った2台は大使館で点検が行われた。
「戦況打破のための新戦力の投入でしょうか」
「恐らくそうでしょうね。短期決戦のつもりが長引いたので使うつもりのなかった予備兵を投入といったところでしょう」
ドローンで大森林西部の様子が確認できないことに不安がよぎる。
しばらくしてドローンの点検を終えると「少し慎重に飛ばしましょう」と飛ばすドローンを一台だけに絞ることにし、再びドローンは大森林西部へと飛び立った。
****
大森林西部の上空は教会の騎士と金羊国の鳥系獣人兵による剣技格闘が繰り広げられていた。
流れ矢に気を使いつつドローンで偵察を続けていると、地上のほうがいささか金羊国側に不利な流れが生まれてきた。
「金羊国は空から兵を指揮していたのが教会騎士の投入で難しくなってきたようですね」
ポアロ大佐の分析に耳を傾けていると銃声が増えてきたことに気づく。
「これは9ミリ拳銃ではなくM24、アサルトライフルですね。これも彼らが間違えて持って行ったんですか?」
「……そのようです」
「木栖大佐(※自衛隊では1等陸佐と呼ぶが世界的には大佐になるのでそう呼んでいる)が持ち込んだ武器について真柴大使はどの程度把握していますか?」
「配備されている小火器類は大体使えるので持ち込んだと聞いてます」
微妙な表情でごまかすがやはりポアロ大佐にはバレている気がする。
『こちら本部、金羊国側は大使館にあった拳銃・自動小銃・散弾銃を誤認借用して用いている模様。誤射に気を付けて行動するように』
『了解しました』
呆れ気味にポアロ大佐がこちらを見るので「この不始末は自分で片づけますので」というほかなかった。
「まあいいサンプルが出来たと思うことにしましょう」
そう呟きながら地上や上空での戦闘の様子に目を向けると、ファンナル隊長が複数の騎士と殴り合っているのが目に見えた。
襲ってきた騎士のロングソードを蹴ってへし折るとナイフでで動脈を切り、拳銃でアキレス腱を打ち抜くと同時に地面にたたき落とし、切っ先を避けると同時に拳銃でわき腹をぶち抜く。
一瞬で騎士たちを地面に落とすと仲間たちの支援に駆け込んでいく。
それはアクション映画のような激しくも美しい動きであった。
「……まるでガン=カタですね」
いったいファンナル隊長はこの1年で木栖から何を教わってきたのか、大いに聞きたいところである。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説

「魔王のいない世界には勇者は必要ない」と王家に追い出されたので自由に旅をしながら可愛い嫁を探すことにしました
夢幻の翼
ファンタジー
「魔王軍も壊滅したし、もう勇者いらないよね」
命をかけて戦った俺(勇者)に対して魔王討伐の報酬を出し渋る横暴な扱いをする国王。
本当ならばその場で暴れてやりたかったが今後の事を考えて必死に自制心を保ちながら会見を終えた。
元勇者として通常では信じられないほどの能力を習得していた僕は腐った国王を持つ国に見切りをつけて他国へ亡命することを決意する。
その際に思いついた嫌がらせを国王にした俺はスッキリした気持ちで隣町まで駆け抜けた。
しかし、気持ちの整理はついたが懐の寒かった俺は冒険者として生計をたてるために冒険者ギルドを訪れたがもともと勇者として経験値を爆あげしていた僕は無事にランクを認められ、それを期に国外へと向かう訳あり商人の護衛として旅にでることになった。
といった序盤ストーリーとなっております。
追放あり、プチだけどざまぁあり、バトルにほのぼの、感動と恋愛までを詰め込んだ物語となる予定です。
5月30日までは毎日2回更新を予定しています。
それ以降はストック尽きるまで毎日1回更新となります。

アレク・プランタン
かえるまる
ファンタジー
長く辛い闘病が終わった
と‥‥転生となった
剣と魔法が織りなす世界へ
チートも特典も何もないまま
ただ前世の記憶だけを頼りに
俺は精一杯やってみる
毎日更新中!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
もふもふの王国
佐乃透子(不定期更新中)
ファンタジー
ほのぼの子育てファンタジーを目指しています。
OLな水無月が、接待飲み会の後、出会ったもふもふ。
このもふもふは……
子供達の会話は読みやすさ重視で、漢字変換しています。

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜
むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。
幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。
そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。
故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。
自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。
だが、エアルは知らない。
ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。
遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。
これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~
エール
ファンタジー
古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。
彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。
経営者は若い美人姉妹。
妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。
そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。
最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる