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9:大使館と戦乱の火
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大使館の3階を活動拠点とした彼らの動きは速かった。
庭に簡易的な物見やぐらと電波塔を建て、太陽光パネルや小型水力発電機を展開し、デスクトップ型パソコンや無線通信機器も持ち込んでいた。
(確かにこれだけ大量に持ち込んでいたら怪しまれるか)
思わず納得してしまった俺と手伝わされる木栖をしり目に、グウズルン情報管理官はたびたび質問を飛ばして彼らが金羊国・西の国どちらにも与しないことをしつこく説明する羽目になった。
ついでにグウズルン情報管理官に観戦武官について聞いたところ曰く「わざわざよその国の戦争に見に行かせるなんてこっちじゃやらない、戦況分析できるような人材を戦場に送ったら巻き添えで死ぬだろ」とのことだった。
言い分としては正しいかもしれないな。
「西の国側に通達することはできるか?」
「大森林の向こう側に今砦を作ってるからそこに伝書鳩を送るのが妥当だろうが、そもそもこちらの世界にない文化なんで信用されない可能性を頭に入れたほうがいいだろうな」
西の国からも俺たちが金羊国に与しないことを確認するために大使館に人を送ってくるという可能性も一応頭の片隅に置いておこう、これもこれで揉めそうだが。
定期的に様子を見に来るとだけ言い残して去っていくと俺は小さくため息が漏れた。
****
観戦武官の4人は毎日のように周辺の調査に出かけた。
その調査の蓄積は俺と木栖にも共有されており、写真や映像によっておおむねの事情は俺たちにも察しがついた。
観戦武官の来訪から5日。
「真柴、さっき西の国の軍隊が砦に入ったのが確認できた」
「正規軍か?」
「ああ、これまで小規模な集団が入っていくのは確認できたが服装や動きからして正規軍で間違いない。規模は推定で1万5千人、うち4千人程度が獣人奴隷だな。これまで入ってきた人たちや別の砦に入った人を含めて推定戦力は8万人、うち獣人奴隷が1万人ってとこだな。
それと、南からも数は少ないが兵が川船で向かってるのがようやく確認できた。こっちは5千人程度だがほとんどが正規軍だ」
「西側と南側からの挟み撃ちってところか、東側や北側に動きはないのか?」
「それに関してはグウズルン情報管理官に聞いた程度でちゃんと確認できてないが、どっちも静観するつもりみたいだな」
「そういや西の国側に観戦武官の派遣は通達したんだろ?返事は来てないのか」
「特にない、最大限の防備をするしかないな。それと、俺はできる限りお前の横にいるつもりだがいざという時は全員で脱出する」
最悪の事態が起きた後この地で知り合った人々がどのような目に遭うか、想像したくもない。
なにより日本側にも影響が大きすぎる。
「そういう事態にならないことを祈るしかないな」
「本当にな」
よき友となってくれるはずのこの国の人々との信頼を横から打ち崩されてほしくないのだ。
庭に簡易的な物見やぐらと電波塔を建て、太陽光パネルや小型水力発電機を展開し、デスクトップ型パソコンや無線通信機器も持ち込んでいた。
(確かにこれだけ大量に持ち込んでいたら怪しまれるか)
思わず納得してしまった俺と手伝わされる木栖をしり目に、グウズルン情報管理官はたびたび質問を飛ばして彼らが金羊国・西の国どちらにも与しないことをしつこく説明する羽目になった。
ついでにグウズルン情報管理官に観戦武官について聞いたところ曰く「わざわざよその国の戦争に見に行かせるなんてこっちじゃやらない、戦況分析できるような人材を戦場に送ったら巻き添えで死ぬだろ」とのことだった。
言い分としては正しいかもしれないな。
「西の国側に通達することはできるか?」
「大森林の向こう側に今砦を作ってるからそこに伝書鳩を送るのが妥当だろうが、そもそもこちらの世界にない文化なんで信用されない可能性を頭に入れたほうがいいだろうな」
西の国からも俺たちが金羊国に与しないことを確認するために大使館に人を送ってくるという可能性も一応頭の片隅に置いておこう、これもこれで揉めそうだが。
定期的に様子を見に来るとだけ言い残して去っていくと俺は小さくため息が漏れた。
****
観戦武官の4人は毎日のように周辺の調査に出かけた。
その調査の蓄積は俺と木栖にも共有されており、写真や映像によっておおむねの事情は俺たちにも察しがついた。
観戦武官の来訪から5日。
「真柴、さっき西の国の軍隊が砦に入ったのが確認できた」
「正規軍か?」
「ああ、これまで小規模な集団が入っていくのは確認できたが服装や動きからして正規軍で間違いない。規模は推定で1万5千人、うち4千人程度が獣人奴隷だな。これまで入ってきた人たちや別の砦に入った人を含めて推定戦力は8万人、うち獣人奴隷が1万人ってとこだな。
それと、南からも数は少ないが兵が川船で向かってるのがようやく確認できた。こっちは5千人程度だがほとんどが正規軍だ」
「西側と南側からの挟み撃ちってところか、東側や北側に動きはないのか?」
「それに関してはグウズルン情報管理官に聞いた程度でちゃんと確認できてないが、どっちも静観するつもりみたいだな」
「そういや西の国側に観戦武官の派遣は通達したんだろ?返事は来てないのか」
「特にない、最大限の防備をするしかないな。それと、俺はできる限りお前の横にいるつもりだがいざという時は全員で脱出する」
最悪の事態が起きた後この地で知り合った人々がどのような目に遭うか、想像したくもない。
なにより日本側にも影響が大きすぎる。
「そういう事態にならないことを祈るしかないな」
「本当にな」
よき友となってくれるはずのこの国の人々との信頼を横から打ち崩されてほしくないのだ。
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