99 / 204
9:大使館と戦乱の火
9-7
しおりを挟む
グウズルン情報管理官監視のもと観戦武官活動の許可が下り、拘束された観戦武官たちを迎えに行く。
監視がついたのは西の国への情報漏洩を避けるためらしいがどう考えても金羊国側には観戦行為で得られた情報が駄々洩れな気がするんだがー……もういいや、考えない事にしよう。
政経宮から歩いて20分、グウズルン情報管理官が連れてきたのは深い水堀に囲まれた掘っ立て小屋のある村だった。
水堀とその向こう側はつり橋で繫げられいかつい男たちが槍を手に警備しており、木製の柵には有刺鉄線が巻き付いている。おそらく犯罪者の収容所なのだろう。
グウズルン情報管理官に入口で30分ほど待たされると明らかに現代的な迷彩服とリュックを背負った一団が現れ、木栖に敬礼を向けた彼らに敬礼を返すと滑らかな英語で「日本の防衛省から派遣されています、木栖です」と自己紹介を行う。
「アメリカ国防安全保障協力局情報技術部から派遣されたエディ・S・トムリンソンだ、階級は准将になる」
そう名乗ったのは長身のアフリカ系アメリカ人の男で、筋肉はさほどなく眼鏡の上迷彩服もあまりに合わないし根っからの文官なのだろうという印象の男だった。
「アメリカ陸軍第18空挺団中尉マイケル・カストロだ」
もう一人の男は浅黒い肌のヒスパニック系の男で身長こそ日本人の平均より少し大きいぐらいだが、ガタイの良さでいえば木栖より良さげに見える。目つきの悪さや頬の切り傷も歴戦の兵士という印象を与えてくる。
……どうでもいいけどアメリカ人でカストロって聞くとなんか奇妙な取り合わせに聞こえるな。
「北大西洋条約機軍構欧州連合軍最高司令部から派遣されたエルキュール・ポアロと申します、階級は大佐になります」
そう名乗ったのは50に差し掛かろうかという歳の白人の老紳士で、迷彩服を着ていても武官というよりも執事のような印象を与える。
「灰色の脳細胞でも持ってそうな名前だな」
日本語で思わずそんな声が漏れる。
どうもその名前を聞くとアガサ・クリスティの産んだベルギー人の名探偵を思い出してしまうのはやむ無しだろう。
「かの名探偵と同姓同名の同国人ではありますがヘイスティングズという大尉の友人はおりませんのであしからず」
そうにっこりと付け足してきた老紳士のふるまいを見てたぶんさんざん言われてるのだろうと察してしまう。
「北大西洋条約機軍連合緊急対応軍団中尉のリチャード・ラドフォードだ」
最後にそう名乗ったのは筋骨隆々とした白人の男だ。木栖と同じぐらいの体格でいかにも軍人然とした印象を与える。
「日本の外務省から派遣されている真柴と申します、この度は自分の不手際により皆様にご迷惑をおかけいたしました」
「俺は気にしないぜ、実にアメイジングな体験だった」
そう笑い飛ばしたのはカストロ中尉で、彼は結構異世界での収容を楽しんでいたようだった。
「そう楽天的な気持ちにはなれませんがね」
「実にアメリカ人らしいな」
そう皮肉ったのはNATOから派遣された2人であった。
「後で今回の問題について詳しくお聞かせ願えますか」
最後に俺にそう聞いてきたのはトムソン准将である。
「……とりあえず大使館のほうにご案内します、今回の件につきましても大使館に着いてからご説明しますので」
監視がついたのは西の国への情報漏洩を避けるためらしいがどう考えても金羊国側には観戦行為で得られた情報が駄々洩れな気がするんだがー……もういいや、考えない事にしよう。
政経宮から歩いて20分、グウズルン情報管理官が連れてきたのは深い水堀に囲まれた掘っ立て小屋のある村だった。
水堀とその向こう側はつり橋で繫げられいかつい男たちが槍を手に警備しており、木製の柵には有刺鉄線が巻き付いている。おそらく犯罪者の収容所なのだろう。
グウズルン情報管理官に入口で30分ほど待たされると明らかに現代的な迷彩服とリュックを背負った一団が現れ、木栖に敬礼を向けた彼らに敬礼を返すと滑らかな英語で「日本の防衛省から派遣されています、木栖です」と自己紹介を行う。
「アメリカ国防安全保障協力局情報技術部から派遣されたエディ・S・トムリンソンだ、階級は准将になる」
そう名乗ったのは長身のアフリカ系アメリカ人の男で、筋肉はさほどなく眼鏡の上迷彩服もあまりに合わないし根っからの文官なのだろうという印象の男だった。
「アメリカ陸軍第18空挺団中尉マイケル・カストロだ」
もう一人の男は浅黒い肌のヒスパニック系の男で身長こそ日本人の平均より少し大きいぐらいだが、ガタイの良さでいえば木栖より良さげに見える。目つきの悪さや頬の切り傷も歴戦の兵士という印象を与えてくる。
……どうでもいいけどアメリカ人でカストロって聞くとなんか奇妙な取り合わせに聞こえるな。
「北大西洋条約機軍構欧州連合軍最高司令部から派遣されたエルキュール・ポアロと申します、階級は大佐になります」
そう名乗ったのは50に差し掛かろうかという歳の白人の老紳士で、迷彩服を着ていても武官というよりも執事のような印象を与える。
「灰色の脳細胞でも持ってそうな名前だな」
日本語で思わずそんな声が漏れる。
どうもその名前を聞くとアガサ・クリスティの産んだベルギー人の名探偵を思い出してしまうのはやむ無しだろう。
「かの名探偵と同姓同名の同国人ではありますがヘイスティングズという大尉の友人はおりませんのであしからず」
そうにっこりと付け足してきた老紳士のふるまいを見てたぶんさんざん言われてるのだろうと察してしまう。
「北大西洋条約機軍連合緊急対応軍団中尉のリチャード・ラドフォードだ」
最後にそう名乗ったのは筋骨隆々とした白人の男だ。木栖と同じぐらいの体格でいかにも軍人然とした印象を与える。
「日本の外務省から派遣されている真柴と申します、この度は自分の不手際により皆様にご迷惑をおかけいたしました」
「俺は気にしないぜ、実にアメイジングな体験だった」
そう笑い飛ばしたのはカストロ中尉で、彼は結構異世界での収容を楽しんでいたようだった。
「そう楽天的な気持ちにはなれませんがね」
「実にアメリカ人らしいな」
そう皮肉ったのはNATOから派遣された2人であった。
「後で今回の問題について詳しくお聞かせ願えますか」
最後に俺にそう聞いてきたのはトムソン准将である。
「……とりあえず大使館のほうにご案内します、今回の件につきましても大使館に着いてからご説明しますので」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
11
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる