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9:大使館と戦乱の火
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納村とファンナル隊長が憑き物の落ちた顔で戻ってきた後、嘉神に何があったのか聞くと「一歩間違えたら馬に蹴られて死ぬような案件です」と答えた。
……そうか、あの2人はそういう仲だったのか。俺は馬に蹴られて死にたくないのでそれ以上は口にしないことにした。
ひと仕事終えて帰っていった2人を見送ったファンナル隊長は「木栖さん、ひとつ頼みがあります」と口を開く。
「大使館にある武器類を貸してもらえませんか」
思わず俺の筆が止まる。
「おい、それは、」
脳裏によぎるのは武器輸出三原則の文字だった。
いや、今は防衛装備移転三原則だったか?どういうのだったかを記憶から引っ張り出そうとするがいまいち思い出せない。
「俺1人の権限では出来ない相談だな」
「もちろん承知しております。地球製武器は獣人の生存率を上げるものです、そのために俺は何としても地球製武器が欲しい」
「……防衛装備移転三原則において武器の輸出は厳重な審査を経て行うものだ」
木栖の一言で思い出した。
武器輸出三原則では日本における武器の輸出入は全面禁止されていたが、2014年に防衛装備移転三原則に変わった際に輸出入を認める代わりに厳格な審査や情報公開が義務化されている。
今回の場合であればおそらく輸出は承認されるだろう。
「問題は話が通るまでにかかる時間だな」
あまりピンと来ていないファンナル隊長にかみ砕いて事情を伝えると「地球製武器が届くまでの期間が不明となると不安ですね……」と頭を抱える。
こちらとしても必要以上に法に触れるようなことはやりたくない。
「ファンナル隊長、もし教会が金羊国を制圧した場合俺たちは無事日本に帰れると思いますか」
「あまり考えたくない話ですがー……教会にとっては金羊国と関係を持つ日本人も異教徒ですからね、討伐対象に含まれる可能性はあります」
だよな。これで腹は決まった。
日本のためにも俺たち自身のためにもぎりぎりな危ない橋を渡るしかない。
「木栖。お前よくファンナル隊長と大使館の庭で練習してたよな?」
「ああ。それ用に彼らの道具もおいてある」
「彼らが自分の武器とお前の武器を取り違える、なんてことはあるか?」
木栖にそう問えば、すべてを察したようだった。
日本から金羊国への武器貸与が認められる前に彼らが武器を取り違えてしまい本来自前で使っている武器と交換する余裕もないので、戦場で使うことにした。
そういう筋書きである。
「あるかもしれないな。ファンナル隊長、武器庫のカギだ。俺の仕事部屋のロッカーに全部入れてある」
武器庫のカギを2つ渡してそのカギをじっと見つめる。
ひとつには日本もう一つは金羊国と記されており、先ほどの会話と照らし合わせてすべてを悟ったたらしいファンナル隊長は「ご迷惑をおかけしました」と頭を下げて武器を取りに走った。
「……これバレたら懲戒免職ものだよな」
「そうなったら俺も一緒に辞めるよ、俺のせいだしな」
幸か不幸かお互い独身貴族で金はあるので、節約しながらならなんとかやっていける気がする。
とりあえずファンナル隊長が戻ってきたらハルトル宰相に日本政府への武器貸与の打診の手紙を出してもらい、許可が下りる前にうっかり持ってかれたことに出来ないか足掻くぐらいはしてみようか。
……そうか、あの2人はそういう仲だったのか。俺は馬に蹴られて死にたくないのでそれ以上は口にしないことにした。
ひと仕事終えて帰っていった2人を見送ったファンナル隊長は「木栖さん、ひとつ頼みがあります」と口を開く。
「大使館にある武器類を貸してもらえませんか」
思わず俺の筆が止まる。
「おい、それは、」
脳裏によぎるのは武器輸出三原則の文字だった。
いや、今は防衛装備移転三原則だったか?どういうのだったかを記憶から引っ張り出そうとするがいまいち思い出せない。
「俺1人の権限では出来ない相談だな」
「もちろん承知しております。地球製武器は獣人の生存率を上げるものです、そのために俺は何としても地球製武器が欲しい」
「……防衛装備移転三原則において武器の輸出は厳重な審査を経て行うものだ」
木栖の一言で思い出した。
武器輸出三原則では日本における武器の輸出入は全面禁止されていたが、2014年に防衛装備移転三原則に変わった際に輸出入を認める代わりに厳格な審査や情報公開が義務化されている。
今回の場合であればおそらく輸出は承認されるだろう。
「問題は話が通るまでにかかる時間だな」
あまりピンと来ていないファンナル隊長にかみ砕いて事情を伝えると「地球製武器が届くまでの期間が不明となると不安ですね……」と頭を抱える。
こちらとしても必要以上に法に触れるようなことはやりたくない。
「ファンナル隊長、もし教会が金羊国を制圧した場合俺たちは無事日本に帰れると思いますか」
「あまり考えたくない話ですがー……教会にとっては金羊国と関係を持つ日本人も異教徒ですからね、討伐対象に含まれる可能性はあります」
だよな。これで腹は決まった。
日本のためにも俺たち自身のためにもぎりぎりな危ない橋を渡るしかない。
「木栖。お前よくファンナル隊長と大使館の庭で練習してたよな?」
「ああ。それ用に彼らの道具もおいてある」
「彼らが自分の武器とお前の武器を取り違える、なんてことはあるか?」
木栖にそう問えば、すべてを察したようだった。
日本から金羊国への武器貸与が認められる前に彼らが武器を取り違えてしまい本来自前で使っている武器と交換する余裕もないので、戦場で使うことにした。
そういう筋書きである。
「あるかもしれないな。ファンナル隊長、武器庫のカギだ。俺の仕事部屋のロッカーに全部入れてある」
武器庫のカギを2つ渡してそのカギをじっと見つめる。
ひとつには日本もう一つは金羊国と記されており、先ほどの会話と照らし合わせてすべてを悟ったたらしいファンナル隊長は「ご迷惑をおかけしました」と頭を下げて武器を取りに走った。
「……これバレたら懲戒免職ものだよな」
「そうなったら俺も一緒に辞めるよ、俺のせいだしな」
幸か不幸かお互い独身貴族で金はあるので、節約しながらならなんとかやっていける気がする。
とりあえずファンナル隊長が戻ってきたらハルトル宰相に日本政府への武器貸与の打診の手紙を出してもらい、許可が下りる前にうっかり持ってかれたことに出来ないか足掻くぐらいはしてみようか。
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