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8:赤い実はじける大使館
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木栖に土産でも持っていこう、と思ったのはいいけれど俺はあいつの好きなものを全然知らない。
上野駅のお土産屋さんをふらふらと回りながらそんなことに気づいた。
この1年さんざん一緒に飯を食ってきたが特にアレルギーや嫌いなものについて言及しているのを見た記憶はない。
しかし何が好きだということを聞いた記憶がないのだ。
思い返してみればあいつ自身のことについて知ってることは少なく、家族構成とか防大に入ってから俺と再会するまでのこととか全く聞いていなかった。
「まずは好きなものを聞くところから、かもな」
***
そうしてなんとなく選んだのは東京土産の定番とココアだった。
「なんでこのふたつなんだ?」
「酒抜きで長話をしたいと思ったら、こういうのしか思いつかなくてな。甘いもの平気か?」
「嫌いじゃないが……東京ばな〇に合わせるなら甘くないもののほうがいいな」
「甘いものに甘い飲み物の組み合わせが好きじゃない人、いるよな」
うちの母親はこういう甘いものどうしの組み合わせを好む人だったので気にしなかったが、確かにこれは甘すぎる。
だいぶ昔に別れたかつての恋人がそういう人だったのでそこは俺の考え違いだ。
「まあ別にいいけどな。で、なんで俺と長話なんて気分になったんだ?」
「ちゃんとお前のことを知りたくなった」
俺がそう口を開くと木栖は深い深い溜息を吐いて「俺を誑し込む気か」とつぶやいた。
上野駅のお土産屋さんをふらふらと回りながらそんなことに気づいた。
この1年さんざん一緒に飯を食ってきたが特にアレルギーや嫌いなものについて言及しているのを見た記憶はない。
しかし何が好きだということを聞いた記憶がないのだ。
思い返してみればあいつ自身のことについて知ってることは少なく、家族構成とか防大に入ってから俺と再会するまでのこととか全く聞いていなかった。
「まずは好きなものを聞くところから、かもな」
***
そうしてなんとなく選んだのは東京土産の定番とココアだった。
「なんでこのふたつなんだ?」
「酒抜きで長話をしたいと思ったら、こういうのしか思いつかなくてな。甘いもの平気か?」
「嫌いじゃないが……東京ばな〇に合わせるなら甘くないもののほうがいいな」
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だいぶ昔に別れたかつての恋人がそういう人だったのでそこは俺の考え違いだ。
「まあ別にいいけどな。で、なんで俺と長話なんて気分になったんだ?」
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俺がそう口を開くと木栖は深い深い溜息を吐いて「俺を誑し込む気か」とつぶやいた。
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