89 / 254
8:赤い実はじける大使館
8-6
しおりを挟む
翌日、朝いちばんに連れてこられたのは日本側のトンネル出入口建設予定地であった。
最終決定権を握るヴィクトワール上級魔術官に見てもらわないと確定できないのだ。
「で、ここが候補地?」
成田空港から程近いゴルフ場に車を止めると「候補地案の1つ目ですね」と毒島課長に告げられる。
廃業して市が競売にかけているゴルフ場だそうだ。
「ふうん、でもどうやってつなぐかねえ」
「問題が?」
「平面だと繋ぎづらい、繋げなくはないけどある程度地下に向かって傾斜した道のほうがつなぎやすいし工期が短縮できる」
「工期が伸びるというのはどのくらいですか?あと傾斜の角度は?」
口をはさんできた名梶さんにヴィクトワール魔術官が絵をかきながら説明する。
俺にはさっぱりわからないが通訳のヘルカ魔術官をはさんでああだこうだと話し合った末に「こちらがやはり妥当ですね」「だな、面倒だけど」という結論に至った。
飯島が「もう1つの候補地行かずに済んでよかった」とつぶやいたので聞いたら、筑波山北山麓という答えだった。確かに面倒そうだ。
その後は成田空港や鉄道設備を見学しながら都心に戻り、今度はトンネル事業への出資希望企業を回って出資額を確定させるための打ち合わせに向かうことになった。
本来であればそう滅多に会えないだろう大手企業上層部の人間が異世界とのつながりからビジネスを広げようと日本に大挙しているのを見ると異世界ビジネスに賭ける熱意に困惑すらしてしまう。
なお飯島と毒島課長はさっさと本省に戻ってしまったので、話を随時意訳しつつ相槌を打つだけの置物と化していたのは言うまでもない。
****
そんな企業との打ち合わせ巡りを3日で終えて出資額を確定させ、ついに日本-金羊国の通路建設の入札が行われる日となった。
今回は注目度が高いこともあってメディアの撮影も入るということで昨日のうちにクリーニングに出したスーツを着用し、全員が昨日乗ったのと同じベンツに乗って移動することになる。
「ところで、この入札に参加するの全部日本国内の企業だけど文句は来てないのか?」
「上が根回ししてたみたいだな。まあ地球と異世界の窓口としての業務を全部請け負ってるんだ、役得の範囲だろ」
飯島の言い分だとそういうことらしい。
今回は通信大手とゼネコンでコンビを組んでもらい、まず自社が請け負った場合のメリットやデメリットを説明してもらう。これは金羊国側の関係者向けの説明なので逐一俺とヘルカ魔術官が通訳することになる。
最後に鉄道・通信インフラ部分込みでの予算を出してもらい、それを見ながら金羊国側の3人が予算とメリット・デメリットを照らし合わせて俺や名梶さんが助言しつつ決定する形をとる。
金は出すのに口は出さないという態度なのは、俺は金羊国側の事情が分かれど土木の素人・名梶さんは土木の専門家ではあっても金羊国の事情を知らないから下手に口を出して日本側に責任を押し付けられても困るからだ。
この辺の入札の流れを説明するとエルヴァル物流担当官は「南の国の入札会制度と違ってこちらは値段を下げるためのものなのですね」と感心していた。
「入札会は金羊国でも行われてるので見たことありますがあれは地球でいう競り市のほうが近いですかね」
以前見た記憶を基に引っ張り出しながら「金羊国でも入札制度が行える人材を育成したいですね」とつぶやいていた。
ちなみにこの入札の仕切りは飯島たち平行世界局職員である。畑違いすぎて大変だろうが頑張ってほしい。
そうこうしているうちに会場が整った。
「それでは、入札を開始します」
最終決定権を握るヴィクトワール上級魔術官に見てもらわないと確定できないのだ。
「で、ここが候補地?」
成田空港から程近いゴルフ場に車を止めると「候補地案の1つ目ですね」と毒島課長に告げられる。
廃業して市が競売にかけているゴルフ場だそうだ。
「ふうん、でもどうやってつなぐかねえ」
「問題が?」
「平面だと繋ぎづらい、繋げなくはないけどある程度地下に向かって傾斜した道のほうがつなぎやすいし工期が短縮できる」
「工期が伸びるというのはどのくらいですか?あと傾斜の角度は?」
口をはさんできた名梶さんにヴィクトワール魔術官が絵をかきながら説明する。
俺にはさっぱりわからないが通訳のヘルカ魔術官をはさんでああだこうだと話し合った末に「こちらがやはり妥当ですね」「だな、面倒だけど」という結論に至った。
飯島が「もう1つの候補地行かずに済んでよかった」とつぶやいたので聞いたら、筑波山北山麓という答えだった。確かに面倒そうだ。
その後は成田空港や鉄道設備を見学しながら都心に戻り、今度はトンネル事業への出資希望企業を回って出資額を確定させるための打ち合わせに向かうことになった。
本来であればそう滅多に会えないだろう大手企業上層部の人間が異世界とのつながりからビジネスを広げようと日本に大挙しているのを見ると異世界ビジネスに賭ける熱意に困惑すらしてしまう。
なお飯島と毒島課長はさっさと本省に戻ってしまったので、話を随時意訳しつつ相槌を打つだけの置物と化していたのは言うまでもない。
****
そんな企業との打ち合わせ巡りを3日で終えて出資額を確定させ、ついに日本-金羊国の通路建設の入札が行われる日となった。
今回は注目度が高いこともあってメディアの撮影も入るということで昨日のうちにクリーニングに出したスーツを着用し、全員が昨日乗ったのと同じベンツに乗って移動することになる。
「ところで、この入札に参加するの全部日本国内の企業だけど文句は来てないのか?」
「上が根回ししてたみたいだな。まあ地球と異世界の窓口としての業務を全部請け負ってるんだ、役得の範囲だろ」
飯島の言い分だとそういうことらしい。
今回は通信大手とゼネコンでコンビを組んでもらい、まず自社が請け負った場合のメリットやデメリットを説明してもらう。これは金羊国側の関係者向けの説明なので逐一俺とヘルカ魔術官が通訳することになる。
最後に鉄道・通信インフラ部分込みでの予算を出してもらい、それを見ながら金羊国側の3人が予算とメリット・デメリットを照らし合わせて俺や名梶さんが助言しつつ決定する形をとる。
金は出すのに口は出さないという態度なのは、俺は金羊国側の事情が分かれど土木の素人・名梶さんは土木の専門家ではあっても金羊国の事情を知らないから下手に口を出して日本側に責任を押し付けられても困るからだ。
この辺の入札の流れを説明するとエルヴァル物流担当官は「南の国の入札会制度と違ってこちらは値段を下げるためのものなのですね」と感心していた。
「入札会は金羊国でも行われてるので見たことありますがあれは地球でいう競り市のほうが近いですかね」
以前見た記憶を基に引っ張り出しながら「金羊国でも入札制度が行える人材を育成したいですね」とつぶやいていた。
ちなみにこの入札の仕切りは飯島たち平行世界局職員である。畑違いすぎて大変だろうが頑張ってほしい。
そうこうしているうちに会場が整った。
「それでは、入札を開始します」
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

勇者PTを追放されたので獣娘たちに乗り換えて楽しく生きる
まったりー
ファンタジー
勇者を支援する為に召喚され、5年の間ユニークスキル【カードダス】で支援して来た主人公は、突然の冤罪を受け勇者PTを追放されてしまいました。
そんな主人公は、ギルドで出会った獣人のPTと仲良くなり、彼女たちの為にスキルを使う事を決め、獣人たちが暮らしやすい場所を作る為に奮闘する物語です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

「魔王のいない世界には勇者は必要ない」と王家に追い出されたので自由に旅をしながら可愛い嫁を探すことにしました
夢幻の翼
ファンタジー
「魔王軍も壊滅したし、もう勇者いらないよね」
命をかけて戦った俺(勇者)に対して魔王討伐の報酬を出し渋る横暴な扱いをする国王。
本当ならばその場で暴れてやりたかったが今後の事を考えて必死に自制心を保ちながら会見を終えた。
元勇者として通常では信じられないほどの能力を習得していた僕は腐った国王を持つ国に見切りをつけて他国へ亡命することを決意する。
その際に思いついた嫌がらせを国王にした俺はスッキリした気持ちで隣町まで駆け抜けた。
しかし、気持ちの整理はついたが懐の寒かった俺は冒険者として生計をたてるために冒険者ギルドを訪れたがもともと勇者として経験値を爆あげしていた僕は無事にランクを認められ、それを期に国外へと向かう訳あり商人の護衛として旅にでることになった。
といった序盤ストーリーとなっております。
追放あり、プチだけどざまぁあり、バトルにほのぼの、感動と恋愛までを詰め込んだ物語となる予定です。
5月30日までは毎日2回更新を予定しています。
それ以降はストック尽きるまで毎日1回更新となります。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

異世界転移~治癒師の日常
コリモ
ファンタジー
ある日看護師の真琴は仕事場からの帰り道、地面が陥没する事故に巻き込まれた。しかし、いつまでたっても衝撃が来ない。それどころか自分の下に草の感触が…
こちらでは初投稿です。誤字脱字のご指摘ご感想お願いします
なるだけ1日1話UP以上を目指していますが、用事がある時は間に合わないこともありますご了承ください(2017/12/18)
すいません少し並びを変えております。(2017/12/25)
カリエの過去編を削除して別なお話にしました(2018/01/15)
エドとの話は「気が付いたら異世界領主〜ドラゴンが降り立つ平原を管理なんてムリだよ」にて掲載させてもらっています。(2018/08/19)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる