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8:赤い実はじける大使館
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話にひと段落つくとハルトル宰相のもとに次の仕事が舞い込んできたので、ハルトル宰相の面談室からエルヴァル物流担当官の執務室へと移動する。
「トンネルについてなのですが、日本側はどのような規模を想定しているかお教えいただけませんか」
過去の資料を見返したところ金羊国側はトンネルについて具体的な要望は出しておらず、人と物のスムーズな物流が行えることのみを要望として出していた。
要するに全部日本(とその先の地球)側に合わせることで交易を盛んにしたいという思惑らしい。
「こちらの図になります」
日本側から送られてきた図面を提示しながら説明することになる。
「トンネルは合計3本、うち2本は交通用で1本はどちらかが使えなくなった時の予備とインフラ……通信簡便化のために線を引きたいと考えています。
交通用トンネルは上下2層に分けて上層は鉄道・自動車、下層は平時は歩行者道で緊急時は避難通路としての運用を想定しています。2本あるのは行きと帰りで分けるためですね」
エルヴァル物流担当官はふんふんと頷きながら手元でメモを取る。
「通信簡便化のための線、というのは具体的にどのようなものになりますか?」
「簡単に言えばひも状の金属やガラスになるかと」
電線や光ファイバーケーブルについて無い知識をひねり出しながら説明すると「文字通り線をつなぐわけですね」とつぶやいた。納得してくれて何よりである。
「予算については日本国政府で出せる分の金額がこちらです。それとは別に金羊国への投資としていくつかの企業から打診があるので一覧表にしてきました、裏はあるでしょうがご参考にしてください」
日本政府で出せる予算と一緒に、出資希望企業とその営業規模から推定される出資額の一覧表を手渡す。
「……思ったより多いですね」
「企業の出資金額についてはあくまで推測ですから本当にこの額を出してくれるとは限りませんがね」
「いえ、裏があろうと何だろうと金羊国にとって地球は重要な場所ですから」
資料に目を通し終えると別の資料を指さして「トンネル候補地までもう決まっているんですね」と尋ねてきた。
そう、実はもうそこまで決まっているのだ。
日本政府にとって金羊国は重要な資源提供国なので、早くインフラを強化して産業振興につなげたいという思惑があるのである程度までは惜しまない方針らしい。
もっとも魔術を用いて空間をつなぐ必要があるので決定権は金羊国側の魔術官……つまりヴィクトワール・クライフ氏になるわけだが。
「この辺りのことも伝えておく必要がありそうですね」
誰にって、そんなのひとりしかいないだろう。
****
「で、わざわざ政経宮からここまで来たってわけだ」
金羊国への帰属を決めたヴィクトワール・クライフ氏(まだ彼女は魔術官としての契約が始まってないので役職呼びはしない)はずいぶんと広い家を与えられていた。
「そういうことです」
「にしても初仕事で異世界とここをつなぐトンネルづくりとは……死んじゃいそうだね」
取り繕ってはいるが難儀な仕事だという本音が声色や表情ににじんでいる。
「厳しいですか」
そう聞いたエルヴァル物流担当官に対して、彼女は「当然だろ」と告げる。
「空間をつなげるのは短距離でも結構難易度高めの術でね、あの4人で金羊国と異世界を繫げたのは奇跡だし普通なら4人とも魔術器官の酷使で死んでるだろうね。あの4人でこの規模のトンネルは無理だな。1本貫通させる前に全員死ぬ」
そう言われるとその仕事の過酷さが想像できた。
これは命懸けの工事なのだ。
「これを私ひとりでやるとなるとトンネル内部に道を敷く関係上要求精度も高いし、魔鉱石で増幅しながら休み休みでやってー……最低4年ってとこかな」
更にトンネル内部の整備もあるので最低10年ぐらいは覚悟したほうがいいだろうか。
(……青函トンネルよりは早く出来るか?)
世紀の大工事と呼ばれた青函トンネルを引き合いに出してみるがどっちにせよ先は長そうだ。
「トンネルについてなのですが、日本側はどのような規模を想定しているかお教えいただけませんか」
過去の資料を見返したところ金羊国側はトンネルについて具体的な要望は出しておらず、人と物のスムーズな物流が行えることのみを要望として出していた。
要するに全部日本(とその先の地球)側に合わせることで交易を盛んにしたいという思惑らしい。
「こちらの図になります」
日本側から送られてきた図面を提示しながら説明することになる。
「トンネルは合計3本、うち2本は交通用で1本はどちらかが使えなくなった時の予備とインフラ……通信簡便化のために線を引きたいと考えています。
交通用トンネルは上下2層に分けて上層は鉄道・自動車、下層は平時は歩行者道で緊急時は避難通路としての運用を想定しています。2本あるのは行きと帰りで分けるためですね」
エルヴァル物流担当官はふんふんと頷きながら手元でメモを取る。
「通信簡便化のための線、というのは具体的にどのようなものになりますか?」
「簡単に言えばひも状の金属やガラスになるかと」
電線や光ファイバーケーブルについて無い知識をひねり出しながら説明すると「文字通り線をつなぐわけですね」とつぶやいた。納得してくれて何よりである。
「予算については日本国政府で出せる分の金額がこちらです。それとは別に金羊国への投資としていくつかの企業から打診があるので一覧表にしてきました、裏はあるでしょうがご参考にしてください」
日本政府で出せる予算と一緒に、出資希望企業とその営業規模から推定される出資額の一覧表を手渡す。
「……思ったより多いですね」
「企業の出資金額についてはあくまで推測ですから本当にこの額を出してくれるとは限りませんがね」
「いえ、裏があろうと何だろうと金羊国にとって地球は重要な場所ですから」
資料に目を通し終えると別の資料を指さして「トンネル候補地までもう決まっているんですね」と尋ねてきた。
そう、実はもうそこまで決まっているのだ。
日本政府にとって金羊国は重要な資源提供国なので、早くインフラを強化して産業振興につなげたいという思惑があるのである程度までは惜しまない方針らしい。
もっとも魔術を用いて空間をつなぐ必要があるので決定権は金羊国側の魔術官……つまりヴィクトワール・クライフ氏になるわけだが。
「この辺りのことも伝えておく必要がありそうですね」
誰にって、そんなのひとりしかいないだろう。
****
「で、わざわざ政経宮からここまで来たってわけだ」
金羊国への帰属を決めたヴィクトワール・クライフ氏(まだ彼女は魔術官としての契約が始まってないので役職呼びはしない)はずいぶんと広い家を与えられていた。
「そういうことです」
「にしても初仕事で異世界とここをつなぐトンネルづくりとは……死んじゃいそうだね」
取り繕ってはいるが難儀な仕事だという本音が声色や表情ににじんでいる。
「厳しいですか」
そう聞いたエルヴァル物流担当官に対して、彼女は「当然だろ」と告げる。
「空間をつなげるのは短距離でも結構難易度高めの術でね、あの4人で金羊国と異世界を繫げたのは奇跡だし普通なら4人とも魔術器官の酷使で死んでるだろうね。あの4人でこの規模のトンネルは無理だな。1本貫通させる前に全員死ぬ」
そう言われるとその仕事の過酷さが想像できた。
これは命懸けの工事なのだ。
「これを私ひとりでやるとなるとトンネル内部に道を敷く関係上要求精度も高いし、魔鉱石で増幅しながら休み休みでやってー……最低4年ってとこかな」
更にトンネル内部の整備もあるので最低10年ぐらいは覚悟したほうがいいだろうか。
(……青函トンネルよりは早く出来るか?)
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