83 / 254
7:大使館はウィンター・バケーション
7-10
しおりを挟む
2月10日、正午前の東京・霞が関は夜更けから降っていた雨の名残りのような雨雲に覆われて小雨がぱらついていた。
昼過ぎにはもうこの雨雲も都心を抜けていくらしいがそのころには金羊国に戻った後だ。
「ひさしぶりだな」
木栖が俺の横の席に腰を下ろす。
その手には大き目の紙袋がぶら下がり、旅行に行っていたことを察した。
「ひさしぶり、どこか行ってたのか?」
「草津と四万で骨休めをしてた」
「温泉か、俺も久しぶりに温泉でも行っておけばよかったかな」
この休暇の間は結局親族や家を預けている不動産屋のところに顔を出したり金羊国で手に入りにくいもののの買い出し以外はずっと寝ていた気がする……いや、映画は見に行ってたな。それぐらいか。
「次の休みの時に行けばいい」
「だいぶ先だな」
そうこう言っていると各々土産やなんやを抱えて現れてくる。
嘉神などは実家の家族からあれやこれやと土産やお守りを与えられたそうで、なぜか俺たちの分までお守りをもらったらしく「いらないとは言ったんですけどね」と苦笑いしながら安全祈願のお守りを渡された。
「大事にしてもらえるうちが花だぞ」
「まあ、親に心配かけてる自覚はありますからね」
うちの親にもこの帰省の間に顔を合わせたが、やはり俺のことを父親と勘違いしたままであったし施設の担当者からも体調が悪くないが認知症が緩やかに悪化しているという風にも言われた。
相変わらずの納村のマシンガントークを聞き流しながらほうじ茶を味わっていると、飯山さんが最後に現れた。
両手いっぱいのお土産を手にして「遅くなって申し訳ありません~」というので「お土産コーナーを見すぎて電車乗り逃したんですか?」と納村が冗談を飛ばす。
「荷物が多すぎて電車は無理だなーと思ってタクシー乗ったら運転手さんと一緒に迷子になっちゃったんですよ~」
いろいろ突っ込みたいところはあるが話が長くなりそうなのでやめよう。
「じゃあ、戻りますか」
冬の骨休みは終わった。
また明日から異世界での仕事とドタバタの日々が始まる。
ちなみに。
大使館に戻った次の日、朝一番に現れたオーロフ&アントリコンビは大使館員全員からお土産にお菓子をもらっていたのでふたりの人気にほっこりしたり、仕事始めの政経宮にお茶とネギみそせんべいを持ち込んだらバカ受けして大騒ぎになったりしたがこの辺のことはまたいつか。
昼過ぎにはもうこの雨雲も都心を抜けていくらしいがそのころには金羊国に戻った後だ。
「ひさしぶりだな」
木栖が俺の横の席に腰を下ろす。
その手には大き目の紙袋がぶら下がり、旅行に行っていたことを察した。
「ひさしぶり、どこか行ってたのか?」
「草津と四万で骨休めをしてた」
「温泉か、俺も久しぶりに温泉でも行っておけばよかったかな」
この休暇の間は結局親族や家を預けている不動産屋のところに顔を出したり金羊国で手に入りにくいもののの買い出し以外はずっと寝ていた気がする……いや、映画は見に行ってたな。それぐらいか。
「次の休みの時に行けばいい」
「だいぶ先だな」
そうこう言っていると各々土産やなんやを抱えて現れてくる。
嘉神などは実家の家族からあれやこれやと土産やお守りを与えられたそうで、なぜか俺たちの分までお守りをもらったらしく「いらないとは言ったんですけどね」と苦笑いしながら安全祈願のお守りを渡された。
「大事にしてもらえるうちが花だぞ」
「まあ、親に心配かけてる自覚はありますからね」
うちの親にもこの帰省の間に顔を合わせたが、やはり俺のことを父親と勘違いしたままであったし施設の担当者からも体調が悪くないが認知症が緩やかに悪化しているという風にも言われた。
相変わらずの納村のマシンガントークを聞き流しながらほうじ茶を味わっていると、飯山さんが最後に現れた。
両手いっぱいのお土産を手にして「遅くなって申し訳ありません~」というので「お土産コーナーを見すぎて電車乗り逃したんですか?」と納村が冗談を飛ばす。
「荷物が多すぎて電車は無理だなーと思ってタクシー乗ったら運転手さんと一緒に迷子になっちゃったんですよ~」
いろいろ突っ込みたいところはあるが話が長くなりそうなのでやめよう。
「じゃあ、戻りますか」
冬の骨休みは終わった。
また明日から異世界での仕事とドタバタの日々が始まる。
ちなみに。
大使館に戻った次の日、朝一番に現れたオーロフ&アントリコンビは大使館員全員からお土産にお菓子をもらっていたのでふたりの人気にほっこりしたり、仕事始めの政経宮にお茶とネギみそせんべいを持ち込んだらバカ受けして大騒ぎになったりしたがこの辺のことはまたいつか。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

セリオン共和国再興記 もしくは宇宙刑事が召喚されてしまったので・・・
今卓&
ファンタジー
地球での任務が終わった銀河連合所属の刑事二人は帰途の途中原因不明のワームホールに巻き込まれる、彼が気が付くと可住惑星上に居た。
その頃会議中の皇帝の元へ伯爵から使者が送られる、彼等は捕らえられ教会の地下へと送られた。
皇帝は日課の教会へ向かう途中でタイスと名乗る少女を”宮”へ招待するという、タイスは不安ながらも両親と周囲の反応から招待を断る事はできず”宮”へ向かう事となる。
刑事は離別したパートナーの捜索と惑星の調査の為、巡視艇から下船する事とした、そこで彼は4人の知性体を救出し獣人二人とエルフを連れてエルフの住む土地へ彼等を届ける旅にでる事となる。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

私のお父様とパパ様
棗
ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。
婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。
大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。
※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。
追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる