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7:大使館はウィンター・バケーション
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2月10日、正午前の東京・霞が関は夜更けから降っていた雨の名残りのような雨雲に覆われて小雨がぱらついていた。
昼過ぎにはもうこの雨雲も都心を抜けていくらしいがそのころには金羊国に戻った後だ。
「ひさしぶりだな」
木栖が俺の横の席に腰を下ろす。
その手には大き目の紙袋がぶら下がり、旅行に行っていたことを察した。
「ひさしぶり、どこか行ってたのか?」
「草津と四万で骨休めをしてた」
「温泉か、俺も久しぶりに温泉でも行っておけばよかったかな」
この休暇の間は結局親族や家を預けている不動産屋のところに顔を出したり金羊国で手に入りにくいもののの買い出し以外はずっと寝ていた気がする……いや、映画は見に行ってたな。それぐらいか。
「次の休みの時に行けばいい」
「だいぶ先だな」
そうこう言っていると各々土産やなんやを抱えて現れてくる。
嘉神などは実家の家族からあれやこれやと土産やお守りを与えられたそうで、なぜか俺たちの分までお守りをもらったらしく「いらないとは言ったんですけどね」と苦笑いしながら安全祈願のお守りを渡された。
「大事にしてもらえるうちが花だぞ」
「まあ、親に心配かけてる自覚はありますからね」
うちの親にもこの帰省の間に顔を合わせたが、やはり俺のことを父親と勘違いしたままであったし施設の担当者からも体調が悪くないが認知症が緩やかに悪化しているという風にも言われた。
相変わらずの納村のマシンガントークを聞き流しながらほうじ茶を味わっていると、飯山さんが最後に現れた。
両手いっぱいのお土産を手にして「遅くなって申し訳ありません~」というので「お土産コーナーを見すぎて電車乗り逃したんですか?」と納村が冗談を飛ばす。
「荷物が多すぎて電車は無理だなーと思ってタクシー乗ったら運転手さんと一緒に迷子になっちゃったんですよ~」
いろいろ突っ込みたいところはあるが話が長くなりそうなのでやめよう。
「じゃあ、戻りますか」
冬の骨休みは終わった。
また明日から異世界での仕事とドタバタの日々が始まる。
ちなみに。
大使館に戻った次の日、朝一番に現れたオーロフ&アントリコンビは大使館員全員からお土産にお菓子をもらっていたのでふたりの人気にほっこりしたり、仕事始めの政経宮にお茶とネギみそせんべいを持ち込んだらバカ受けして大騒ぎになったりしたがこの辺のことはまたいつか。
昼過ぎにはもうこの雨雲も都心を抜けていくらしいがそのころには金羊国に戻った後だ。
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木栖が俺の横の席に腰を下ろす。
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「ひさしぶり、どこか行ってたのか?」
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