異世界大使館はじめます

あかべこ

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7:大使館はウィンター・バケーション

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翌日、朝食を食べながら検査結果について報告すると「じゃあそれを理由に入国許可は下りないですね」と嘉神が呟いた。
「それはそうだが実力行使で不法入国もありうるぞ」
「実力って言っても戦闘が苦手って可能性もあるでしょ」
木栖の疑念も納村の返答も分かる。
正直この世界で魔女と呼ばれているものがどのくらい強いのか分からないので、黄金の魔女対自衛隊などという漫画じみた戦いが起きる事は何としても回避したい。
朝食を中座し、執務室の本棚から六法全書を引きずり出して入管法を再確認すると不法入国は≪3年以下の懲役もしくは禁固または300万円以下の罰金≫という事になっている。
(金羊国に引き留めるには弱いか?)
捕まっても3年大人しくしてればいいのならという判断で強引に入国する可能性もある。
「……日本への違法入国より金羊国側に留まったほうがメリットが大きい、と納得させるしかないな」
あとは身内に取り込みたいと画策してる金羊国側の努力次第だ。

****

ヴィクトワール・クライフ氏が再び大使館を訪ねたのはその日の昼下がりの事だった。
嘉神を引き連れての2対1の面談に対しても彼女は実に堂々としていた。
「入国許可のための検査結果の件ですか?」
書類検査の前日、入国申請の一環で新種の病原菌保有を確認するのに必要な検査を受けて欲しいと頼んでーまあそれを受けた事があるのは魔術官の4人だけで他の人が来日した時は消毒だけだったんだが―口の内側の粘膜を採取していた。
例の書類を調べる時に警視庁の水村に渡したサンプルがこれである。
「そりゃあそうですよ」
「正直に申し上げます、検査の結果入国許可は降りませんでした」
「何か問題でも?」
「病原菌及び遺伝子検査も並行して行っていますが、その前に犯罪歴がありますよね?」
そう言って差し出したのは水村のところで調べてもらった書類と彼女の筆跡・DNAの照合結果である。
「ある筋からあなたが伯爵令嬢の呪い事件と呼ばれる大規模放火に関わっていた疑いがある、という話を受けて証拠品の契約書を検査させていただきました。
その書類の血で書かれた署名と頂いた皮膚粘膜、それと金羊国側の入国申請書を照合した結果犯罪歴があることが確認されました」
ヴィクトワール・クライフ氏はその言葉を聞きながらどんどんと不機嫌になる。
「ちなみにですが日本への入国上問題になる菌はいまのところあなたから見つかっていません」
「犯罪歴があるのが駄目、と」



「そう言う事ですね。そこで交渉なのですが、ヴィクトワールさんが金羊国要人としてなら留学や訪日許可を出せるんですがどうでしょうか」

この言葉は賭けだ。
はたして俺はこのギャンブルに勝てるだろうか?
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