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6:大使館に休みはない
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「この感じなら明日もうまくいきそうですねえ」
イベントが終わり会場から去っていく人々の背を見て河内さんがそう呟いた。
確かに出ていく人たちの様子を見ていると反応は上々、明日以降行われる交流会に参加してみたいという声もいくつか小耳にはさむことが出来た。
「一息付けるとしたらそれは明日以降ですけどね」
撤収する器材や持ち帰るチラシ・麦茶を抱え、残りを金羊国側のスタッフに丸投げすると俺たちは大使館へと戻っていった。
(確かこの後は金羊国主催の晩餐会か)
政経宮で国内の大臣クラスを集めて地球との交流を深めるというイベントではあるが、なんかやられそうな気がしてならない。
悪い予感が当たらない事だけを願いながら秋風の中、大使館への道をゆっくり歩いた。
***
パーティー会場となる政経宮の舞踏室は思っていたよりも煌びやかであった。
フランスのロココ調を彷彿とさせる装飾性に富んだ大広間には銀皿に盛られた料理や酒があちこちに並び、立食パーティー形式であることが分かる。
無論この世界にも日本人が想像するような晩餐会は存在する(北の国に行ったときに一度呼ばれてるので)事を考えると、交流を深めるという意図を前面に出してこの立食形式なのだろう。
俺は中国側の担当者と軽く雑談をしつつ、他国の担当者のほうの様子にも気を配る。
事前に振り分けた担当に合わせ各国の担当者に張り付いている形だが、納村は飲み物片手にファンナル隊長と雑談していた。
「金羊国宰相・ハルトルからのご挨拶です」
ふいにそんな声が会場の前方から響くと、全員の視線がそちらに向いた。
「ご挨拶に預かりました、ハルトルと申します。
遠路はるばる我が国へ赴いていたいただき、ひとりの国の担い手として皆さまに深く感謝御礼を申し上げます。
未だ幼く未熟な我が国なれど自由を求める志はいまも変わることなくこの国を動かしております。
その志を実現させる知識と力を皆様からお分けしていただき、いずれは皆様とともに協調し新しい世界を切り開かんと欲する所存です。
この宴はその第一歩。幼く未熟な私たちゆえ失礼もあるかと存じます、ですがその幼子の一歩を温かく見守っていただければと思います。
乾杯!!!」
ハルトル宰相の高く掲げられた杯を合わせるように小さく上げる。
やがてどこかからラヴェルの水の戯れを彷彿とさせるBGMが始まり、金羊国高官と地球から派遣された人々の交流が始まる。
中国側の担当者は挨拶もそこそこにハルトル宰相への接触を図っているのか、料理を取りに行くふりをして前へ前へと歩いている。というかわざと人の多いところを通ることで俺の事撒こうとしてるな?
いちおう大使館職員には中国側の動向を注視してることは伝わっているはずなのではぐれたふりをして、ハルトル宰相のところに先回りすることにした。
ハルトル宰相の斜め後ろには昼間会った白うさぎの獣人が付き従っている、確かロヴィーサというグウズルン情報管理官の仲間だったか。
「お久しぶりです、ハルトル宰相陛下」
「こちらこそお久しぶりです」
このところ何となく機会がなくてご無沙汰であったが、久しぶりに会うハルトル宰相はちょっとお疲れ気味のように見える。
「少しお疲れですか」
「大したものではありませんよ、みんな頑張ってるんですから僕も頑張らないと」
その台詞にはいささかの無理が感じられる。
同期入省や後輩でこういう事を言っていた奴はほぼ体壊して休職してるのを思い出し、俺としても彼にそうした目に遭って欲しくない気持ちが沸いてくる。
「一国の宰相ともなると休むのも一つの仕事ですよ、疲れで判断を誤れば被害は甚大ですから」
ちらりとロヴィーサのほうを見ると「それもそうですよ」と同意した。
ハルトル宰相は少し考えると「……そうですね」とつぶやいた。
「申し訳ありませんがお先に失礼させてもらってよろしいですか?」
「構いませんとも」
ロヴィーサに先導されて中座したハルトル宰相を、後ろから何とも言えない顔で中国側の担当者が見つめていた。
イベントが終わり会場から去っていく人々の背を見て河内さんがそう呟いた。
確かに出ていく人たちの様子を見ていると反応は上々、明日以降行われる交流会に参加してみたいという声もいくつか小耳にはさむことが出来た。
「一息付けるとしたらそれは明日以降ですけどね」
撤収する器材や持ち帰るチラシ・麦茶を抱え、残りを金羊国側のスタッフに丸投げすると俺たちは大使館へと戻っていった。
(確かこの後は金羊国主催の晩餐会か)
政経宮で国内の大臣クラスを集めて地球との交流を深めるというイベントではあるが、なんかやられそうな気がしてならない。
悪い予感が当たらない事だけを願いながら秋風の中、大使館への道をゆっくり歩いた。
***
パーティー会場となる政経宮の舞踏室は思っていたよりも煌びやかであった。
フランスのロココ調を彷彿とさせる装飾性に富んだ大広間には銀皿に盛られた料理や酒があちこちに並び、立食パーティー形式であることが分かる。
無論この世界にも日本人が想像するような晩餐会は存在する(北の国に行ったときに一度呼ばれてるので)事を考えると、交流を深めるという意図を前面に出してこの立食形式なのだろう。
俺は中国側の担当者と軽く雑談をしつつ、他国の担当者のほうの様子にも気を配る。
事前に振り分けた担当に合わせ各国の担当者に張り付いている形だが、納村は飲み物片手にファンナル隊長と雑談していた。
「金羊国宰相・ハルトルからのご挨拶です」
ふいにそんな声が会場の前方から響くと、全員の視線がそちらに向いた。
「ご挨拶に預かりました、ハルトルと申します。
遠路はるばる我が国へ赴いていたいただき、ひとりの国の担い手として皆さまに深く感謝御礼を申し上げます。
未だ幼く未熟な我が国なれど自由を求める志はいまも変わることなくこの国を動かしております。
その志を実現させる知識と力を皆様からお分けしていただき、いずれは皆様とともに協調し新しい世界を切り開かんと欲する所存です。
この宴はその第一歩。幼く未熟な私たちゆえ失礼もあるかと存じます、ですがその幼子の一歩を温かく見守っていただければと思います。
乾杯!!!」
ハルトル宰相の高く掲げられた杯を合わせるように小さく上げる。
やがてどこかからラヴェルの水の戯れを彷彿とさせるBGMが始まり、金羊国高官と地球から派遣された人々の交流が始まる。
中国側の担当者は挨拶もそこそこにハルトル宰相への接触を図っているのか、料理を取りに行くふりをして前へ前へと歩いている。というかわざと人の多いところを通ることで俺の事撒こうとしてるな?
いちおう大使館職員には中国側の動向を注視してることは伝わっているはずなのではぐれたふりをして、ハルトル宰相のところに先回りすることにした。
ハルトル宰相の斜め後ろには昼間会った白うさぎの獣人が付き従っている、確かロヴィーサというグウズルン情報管理官の仲間だったか。
「お久しぶりです、ハルトル宰相陛下」
「こちらこそお久しぶりです」
このところ何となく機会がなくてご無沙汰であったが、久しぶりに会うハルトル宰相はちょっとお疲れ気味のように見える。
「少しお疲れですか」
「大したものではありませんよ、みんな頑張ってるんですから僕も頑張らないと」
その台詞にはいささかの無理が感じられる。
同期入省や後輩でこういう事を言っていた奴はほぼ体壊して休職してるのを思い出し、俺としても彼にそうした目に遭って欲しくない気持ちが沸いてくる。
「一国の宰相ともなると休むのも一つの仕事ですよ、疲れで判断を誤れば被害は甚大ですから」
ちらりとロヴィーサのほうを見ると「それもそうですよ」と同意した。
ハルトル宰相は少し考えると「……そうですね」とつぶやいた。
「申し訳ありませんがお先に失礼させてもらってよろしいですか?」
「構いませんとも」
ロヴィーサに先導されて中座したハルトル宰相を、後ろから何とも言えない顔で中国側の担当者が見つめていた。
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