異世界大使館はじめます

あかべこ

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6:大使館に休みはない

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待ち構えていた客人は15人、さらに飯島や各国関係者が居並ぶ威圧感のある光景だった。
何の対策だか知らないがブルーシートとテントで簡易的な目隠しまでされてる。
(……なんか多くないか?)
飯島のほうを見ると目ですまんと訴えていた。そのアイコンタクトで全部済めば警察は要らないんだがな。
来ている人たちに自分とエインの自己紹介と簡単な挨拶をこなして退散するように客人を連れてもと来た道を戻っていく。
金羊国に戻るとエインが事前に指示をしていたのか、お茶と菓子が並べられている。
「エイン魔術官のお手伝いに上がりましたロヴィーサと申します、遠路はるばる起こしでお疲れでしょうからお茶をどうぞ」
なかなか上手な日本語で俺たちを出迎えたのは見慣れない白うさぎの獣人の女の子だ。
知り合いなのかとエイン魔術官に耳打ちすると「グウズルンさんの昔からの仲間ですよ」と答えが来た。
ならば大丈夫だろうと試しに飲んでみると、お茶はぶどうやリンゴの風味が香る甘いお茶だった。
俺が飲んだ様子を見て客人たちも安心したように飲む。俺は毒見担当か?
お茶自体は美味しいし、客人たちの気持ちも多少ほぐれたように思う。
クワス教育統括官は「これおいしいですよねえ」と客人に話しかけてくる。
日本と金羊国を繋ぐあのトンネルはただ歩いてるだけでも気持ち悪くなるので、一服がてら金羊国側と地球諸国の来賓と交流を持つことには意味がある。
全員がお茶を飲み終える頃には多少打ち解けた雰囲気が出来ており、幸先は悪くなさそうだ。
「では、まずは大使館へ荷物を置きに参りましょうか」

***

大使館へ荷物を置きに行くといつものメンバーと河内さんが勢ぞろいして待ち構えていた。
歓迎のもてなしはそこそこに大使館メンバーの自己紹介と誰がどこの国につくのかを簡単に伝えておく。
そして各国から来た来賓のほうも自己紹介に入る。
北米2か国から始まり、ヨーロッパ連合(今回はドイツ人とイギリス人、そしてイタリア人記者であった)、そして中国からの担当者の番になる。
「中華人民共和国教育省次席、李 張静り・ちゃんじんです」
事前に把握してる情報だとこの人は実際に教育畑の人材らしい。
高身長のわりにもっさりした垢抜けない印象があり、仕事一筋で他の事が苦手そうな印象を受ける。
ただ問題はこちらだ。
「同じく教育省次席補佐官、王張偉わん・じゃんうぇいです」
外務省の情報だと教育省に次席補佐という階級はないらしく、また中国大使館の情報だとこの人物どうも共産党幹部の血縁で少し前から行われている党内の不正摘発に絡んでいるというきな臭い人物だという。
見た目は平凡でこれといった特徴もない中肉中背の中年男性であるので、人は見かけによらないという当たり前の事を思い出す。
「中華日報社会部から参りました、周若汐じょう・るおしーと申します。イングリッシュネームのルーシーでも構いません」
お団子頭にスーツの溌剌とした女性が挨拶をしてくる。
共産党と縁の深い一般紙の女性記者だが、彼女の所属する新聞社は俗に言う反日のところだ。下手に揚げ足を取られて大使館や俺個人に悪印象をつけられても困るので別の意味で気を揉む必要がある。



(もうとにかく無事に終われと祈るしかないな)

そんな気持ちで眺める俺を木栖は心配そうに見つめていた、らしいがその時の俺には恙無く終わらせることしか頭にないのであった。
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