異世界大使館はじめます

あかべこ

文字の大きさ
上 下
66 / 254
6:大使館に休みはない

6-7

しおりを挟む
待ち構えていた客人は15人、さらに飯島や各国関係者が居並ぶ威圧感のある光景だった。
何の対策だか知らないがブルーシートとテントで簡易的な目隠しまでされてる。
(……なんか多くないか?)
飯島のほうを見ると目ですまんと訴えていた。そのアイコンタクトで全部済めば警察は要らないんだがな。
来ている人たちに自分とエインの自己紹介と簡単な挨拶をこなして退散するように客人を連れてもと来た道を戻っていく。
金羊国に戻るとエインが事前に指示をしていたのか、お茶と菓子が並べられている。
「エイン魔術官のお手伝いに上がりましたロヴィーサと申します、遠路はるばる起こしでお疲れでしょうからお茶をどうぞ」
なかなか上手な日本語で俺たちを出迎えたのは見慣れない白うさぎの獣人の女の子だ。
知り合いなのかとエイン魔術官に耳打ちすると「グウズルンさんの昔からの仲間ですよ」と答えが来た。
ならば大丈夫だろうと試しに飲んでみると、お茶はぶどうやリンゴの風味が香る甘いお茶だった。
俺が飲んだ様子を見て客人たちも安心したように飲む。俺は毒見担当か?
お茶自体は美味しいし、客人たちの気持ちも多少ほぐれたように思う。
クワス教育統括官は「これおいしいですよねえ」と客人に話しかけてくる。
日本と金羊国を繋ぐあのトンネルはただ歩いてるだけでも気持ち悪くなるので、一服がてら金羊国側と地球諸国の来賓と交流を持つことには意味がある。
全員がお茶を飲み終える頃には多少打ち解けた雰囲気が出来ており、幸先は悪くなさそうだ。
「では、まずは大使館へ荷物を置きに参りましょうか」

***

大使館へ荷物を置きに行くといつものメンバーと河内さんが勢ぞろいして待ち構えていた。
歓迎のもてなしはそこそこに大使館メンバーの自己紹介と誰がどこの国につくのかを簡単に伝えておく。
そして各国から来た来賓のほうも自己紹介に入る。
北米2か国から始まり、ヨーロッパ連合(今回はドイツ人とイギリス人、そしてイタリア人記者であった)、そして中国からの担当者の番になる。
「中華人民共和国教育省次席、李 張静り・ちゃんじんです」
事前に把握してる情報だとこの人は実際に教育畑の人材らしい。
高身長のわりにもっさりした垢抜けない印象があり、仕事一筋で他の事が苦手そうな印象を受ける。
ただ問題はこちらだ。
「同じく教育省次席補佐官、王張偉わん・じゃんうぇいです」
外務省の情報だと教育省に次席補佐という階級はないらしく、また中国大使館の情報だとこの人物どうも共産党幹部の血縁で少し前から行われている党内の不正摘発に絡んでいるというきな臭い人物だという。
見た目は平凡でこれといった特徴もない中肉中背の中年男性であるので、人は見かけによらないという当たり前の事を思い出す。
「中華日報社会部から参りました、周若汐じょう・るおしーと申します。イングリッシュネームのルーシーでも構いません」
お団子頭にスーツの溌剌とした女性が挨拶をしてくる。
共産党と縁の深い一般紙の女性記者だが、彼女の所属する新聞社は俗に言う反日のところだ。下手に揚げ足を取られて大使館や俺個人に悪印象をつけられても困るので別の意味で気を揉む必要がある。



(もうとにかく無事に終われと祈るしかないな)

そんな気持ちで眺める俺を木栖は心配そうに見つめていた、らしいがその時の俺には恙無く終わらせることしか頭にないのであった。
しおりを挟む
気に入ってくださったら番外編も読んでみてください
マシュマロで匿名感想も受け付けています、お返事は近況ボードから。
更新告知Twitter@SPBJdHliaztGpT0
感想 0

あなたにおすすめの小説

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます

neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。 松本は新しい世界で会社員となり働くこととなる。 ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。

セリオン共和国再興記 もしくは宇宙刑事が召喚されてしまったので・・・

今卓&
ファンタジー
地球での任務が終わった銀河連合所属の刑事二人は帰途の途中原因不明のワームホールに巻き込まれる、彼が気が付くと可住惑星上に居た。 その頃会議中の皇帝の元へ伯爵から使者が送られる、彼等は捕らえられ教会の地下へと送られた。 皇帝は日課の教会へ向かう途中でタイスと名乗る少女を”宮”へ招待するという、タイスは不安ながらも両親と周囲の反応から招待を断る事はできず”宮”へ向かう事となる。 刑事は離別したパートナーの捜索と惑星の調査の為、巡視艇から下船する事とした、そこで彼は4人の知性体を救出し獣人二人とエルフを連れてエルフの住む土地へ彼等を届ける旅にでる事となる。

(完結)嘘つき聖女と呼ばれて

青空一夏
ファンタジー
私、アータムは夢のなかで女神様から祝福を受けたが妹のアスペンも受けたと言う。 両親はアスペンを聖女様だと決めつけて、私を無視した。 妹は私を引き立て役に使うと言い出し両親も賛成して…… ゆるふわ設定ご都合主義です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「魔王のいない世界には勇者は必要ない」と王家に追い出されたので自由に旅をしながら可愛い嫁を探すことにしました

夢幻の翼
ファンタジー
「魔王軍も壊滅したし、もう勇者いらないよね」  命をかけて戦った俺(勇者)に対して魔王討伐の報酬を出し渋る横暴な扱いをする国王。  本当ならばその場で暴れてやりたかったが今後の事を考えて必死に自制心を保ちながら会見を終えた。  元勇者として通常では信じられないほどの能力を習得していた僕は腐った国王を持つ国に見切りをつけて他国へ亡命することを決意する。  その際に思いついた嫌がらせを国王にした俺はスッキリした気持ちで隣町まで駆け抜けた。  しかし、気持ちの整理はついたが懐の寒かった俺は冒険者として生計をたてるために冒険者ギルドを訪れたがもともと勇者として経験値を爆あげしていた僕は無事にランクを認められ、それを期に国外へと向かう訳あり商人の護衛として旅にでることになった。 といった序盤ストーリーとなっております。 追放あり、プチだけどざまぁあり、バトルにほのぼの、感動と恋愛までを詰め込んだ物語となる予定です。 5月30日までは毎日2回更新を予定しています。 それ以降はストック尽きるまで毎日1回更新となります。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

異世界転移~治癒師の日常

コリモ
ファンタジー
ある日看護師の真琴は仕事場からの帰り道、地面が陥没する事故に巻き込まれた。しかし、いつまでたっても衝撃が来ない。それどころか自分の下に草の感触が… こちらでは初投稿です。誤字脱字のご指摘ご感想お願いします なるだけ1日1話UP以上を目指していますが、用事がある時は間に合わないこともありますご了承ください(2017/12/18) すいません少し並びを変えております。(2017/12/25) カリエの過去編を削除して別なお話にしました(2018/01/15) エドとの話は「気が付いたら異世界領主〜ドラゴンが降り立つ平原を管理なんてムリだよ」にて掲載させてもらっています。(2018/08/19)

処理中です...