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6:大使館に休みはない
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収穫祭当日、朝からワクワクが止まらないらしいクワス教育統括官が大使館のモーニングミーティングになだれ込んできた。
「おはようございます!」
「クワス教育統括官、早すぎやしませんか」
食べようと思っていた朝食のサンドウィッチをいったん皿の上におくと「眠れなくて!」と子どものように笑った。
遠足に行く小学生のような無邪気さは嫌いではないが朝食ぐらいはちゃんと取らせてほしい。
「お茶を差し上げるので下で待ってもらえますか」
一番近くにいた飯山さん合図をして水差しになみなみ入った麦茶(今日の祭りで配る予定のものだ)とコップを渡すと、クワス教育統括官はわかりましたと下に降りて行ってくれる。
納村が「朝から元気なことで」とぼやき、嘉神が「今日は大変そうですね」とつぶやいた。
「……今日は飯山さんと手伝いの2人以外は全員留学生勧誘イベントのほうで良いんだよな?」
木栖が話を戻すように今日の予定を問う。
「ああ、2人にもその予定でお願いしてる。
留学担当者はこちらの時間で言うと10時ごろに来る。それまでに木栖には安全確保のためにファンナル隊長・ソルヴィ森林管理官と打ち合わせを、それ以外の全員でクワス教育統括官・エイン魔術官とで打ち合わせになる。
勧誘イベントは今日の午後、昼食後から勧誘を目的とした公開対談を神殿の丘前にある広場で行う。
明日・明後日は大使館1階を開放して留学に興味のある学生を集めての交流会になる」
昨日の夜時点で一応話してあるが、改めて考えるときつい。
「収穫祭が終わったら大使館業務を3日ほど休みにする許可も下りた、あとひと踏ん張りだと思って頑張ってくれ」
話を〆ると「あとひと踏ん張りかあ」と誰かが呟いた。
****
クワス教育統括官との打ち合わせを終えた頃、エイン魔術官が遅れて大使館にやってきた。
「すいません朝からバタバタしちゃって」
「いえ、お気になさらず」
ハルトル宰相との面談は結局叶わなかったが、代わりに事実上のトップ2ともいえるエイン魔術官が今回金羊国側からホストとして加わることになった。
「今回は真柴さんだけなんですね」
「納村や嘉神には大使館内の最終準備をして貰ってるんです」
準備は9割9分終わっているので本当は手伝いの2人だけでも十分なのだが、この後こき使われる予定の納村や嘉神に少し休んでもらう意図もある。ちなみに木栖は打ち合わせが長引いて来れそうになかった。
軽い雑談を交えて今日の予定を話しながら教会へと向かい、その地下にある日本とのトンネルの入り口の前に再び立つ。
「じゃあお迎えに上がりましょうか」
そう笑いながら慣れた手つきで扉を開けると「こここんな風になってたんですねえ」とクワス教育統括官が呟く。
相変わらず暗くて平衡感覚がおかしくなりそうな道を抜け、階段を上った先に秋の乾いた風と日差しが目に飛び込む。
そして見慣れた飯島たち外務省関係者とともに、多種多様な人々が俺たちを待ち構えていた。
「おはようございます!」
「クワス教育統括官、早すぎやしませんか」
食べようと思っていた朝食のサンドウィッチをいったん皿の上におくと「眠れなくて!」と子どものように笑った。
遠足に行く小学生のような無邪気さは嫌いではないが朝食ぐらいはちゃんと取らせてほしい。
「お茶を差し上げるので下で待ってもらえますか」
一番近くにいた飯山さん合図をして水差しになみなみ入った麦茶(今日の祭りで配る予定のものだ)とコップを渡すと、クワス教育統括官はわかりましたと下に降りて行ってくれる。
納村が「朝から元気なことで」とぼやき、嘉神が「今日は大変そうですね」とつぶやいた。
「……今日は飯山さんと手伝いの2人以外は全員留学生勧誘イベントのほうで良いんだよな?」
木栖が話を戻すように今日の予定を問う。
「ああ、2人にもその予定でお願いしてる。
留学担当者はこちらの時間で言うと10時ごろに来る。それまでに木栖には安全確保のためにファンナル隊長・ソルヴィ森林管理官と打ち合わせを、それ以外の全員でクワス教育統括官・エイン魔術官とで打ち合わせになる。
勧誘イベントは今日の午後、昼食後から勧誘を目的とした公開対談を神殿の丘前にある広場で行う。
明日・明後日は大使館1階を開放して留学に興味のある学生を集めての交流会になる」
昨日の夜時点で一応話してあるが、改めて考えるときつい。
「収穫祭が終わったら大使館業務を3日ほど休みにする許可も下りた、あとひと踏ん張りだと思って頑張ってくれ」
話を〆ると「あとひと踏ん張りかあ」と誰かが呟いた。
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クワス教育統括官との打ち合わせを終えた頃、エイン魔術官が遅れて大使館にやってきた。
「すいません朝からバタバタしちゃって」
「いえ、お気になさらず」
ハルトル宰相との面談は結局叶わなかったが、代わりに事実上のトップ2ともいえるエイン魔術官が今回金羊国側からホストとして加わることになった。
「今回は真柴さんだけなんですね」
「納村や嘉神には大使館内の最終準備をして貰ってるんです」
準備は9割9分終わっているので本当は手伝いの2人だけでも十分なのだが、この後こき使われる予定の納村や嘉神に少し休んでもらう意図もある。ちなみに木栖は打ち合わせが長引いて来れそうになかった。
軽い雑談を交えて今日の予定を話しながら教会へと向かい、その地下にある日本とのトンネルの入り口の前に再び立つ。
「じゃあお迎えに上がりましょうか」
そう笑いながら慣れた手つきで扉を開けると「こここんな風になってたんですねえ」とクワス教育統括官が呟く。
相変わらず暗くて平衡感覚がおかしくなりそうな道を抜け、階段を上った先に秋の乾いた風と日差しが目に飛び込む。
そして見慣れた飯島たち外務省関係者とともに、多種多様な人々が俺たちを待ち構えていた。
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