異世界大使館はじめます

あかべこ

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6:大使館に休みはない

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その日の夜に戻ってきた納村は「飯島さんが悲鳴上げてましたよ」と告げてくる。
「……急な無茶振りだからな」
留学の件を担当してくれてる担当者には悪いが、強く生きて欲しい。そして文句は俺でなく無茶振りしてきた先方に言ってくれ。
「そういえばこの留学生勧誘って私が通訳するんですよね?」「ああ、悪いがそれに向けた準備も頼む」
俺たちはこの世界で仕事するのに支障のない程度に言葉は勉強してきているが、それだって完璧ではない。
それに今回は地球側から他国の留学生勧誘担当者を招くので日本語以外のスキルも必要になる。
俺は赴任経験のあるベトナム語以外はさっぱりだし、木栖や柊木医師も防大や防衛医大にいた時に第三言語は取ってるはずだがそれとて専門家レベルまではいっていないだろう。
「私だって万能じゃないんですけどね」
そうぼやきながらも「明日必要語彙確認してきます」とため息混じりに答えた。

***

翌日から留学生勧誘の準備が始まった。
「木栖、お前防大時代の第三言語何取った?」
「ポルトガル語だが……ああ、留学生勧誘担当者が来るからか」
「誰が何語出来るか把握しておこうと思って。しかしお前も微妙なところ選んだな」
大使館にいまいる人間が日本語以外に扱える言語について記録をとっておく。
柊木医師が英語とドイツ語、木栖が英語とポルトガル語、俺が英語とベトナム語、嘉神が英語とスペイン語、納村が英語と中国語。飯山さんは英語もそんなにできないと言う。
ほとんどが学校や外務省内で学んだものなのでせいぜい教科書レベルだろうが何も話せないよりはマシだろう。
アラビア語が出来る人材がいないのは悩みどころだがもう仕方がない。
「駐日大使館から留学担当者が派遣されるなら日本語が共通語になるから楽なんだがなあ」
「それは厳しいだろうな」
木栖の言い分は正しい。
日本からの留学生誘致を担当してる人たちからすれば、秋口の今は進路相談会などもある繁忙期でありそう都合よく予定は空いてないと考えられる。
それに日本側は出来る限り包み隠さず異世界の情報を伝えているが、日本に対する信用度の低い国などは異世界についての情報収集も兼ねて本国から人を潜り込ませる国もあるだろう。
別にそれはいいのだが問題が起きれば日本側(というか俺たち)の責任になる。
「それとひとつ聞きたいんだが」
「なんだ?」
「秋の収穫祭でも麦茶の配布やるのか?」
「あー……そうだな、留学生誘致担当者もちょっとしたお菓子を配るぐらいはするだろうしな。その辺は嘉神に任せる。木栖もキツイだろうが頼むぞ」
「夫の頼みだからな」
木栖がふっと笑って俺の仕事部屋を出ていく。


「……あいつ本当に俺のこと好きなんだな?」
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