60 / 254
6:大使館に休みはない
6-1
しおりを挟む
窓から秋風が吹き込む心地よい季節、金羊国は秋の収穫祭を目前に控えて賑わいを見せていた。
「このタイミングに合わせて留学生募集の発表を行いたいのです!」
そうキラキラした目で告げてきたのはクワス教育統括官であった。
朱鷺によく似た姿をし興奮で翼をはためかせたその人の圧に「はあ」というぼんやりした返事を返すしかできない。
「そして日本や異世界への留学のメリットを知るためにもぜひ、日本側から専門家をお呼びして欲しいのです!」
無論その言い分は分かる。
しかし収穫祭までの残り1ヵ月を切っているのを思うと、うまく人を集められるかは分からない。
(何よりこちらに来てくれる人がそう都合よく見つかるのかも不安だしな)
本省はもちろん諸外国外務省との七面倒臭い折衝が目に見えているうえ、そもそも日本を中心に地球側からこちらへ来たがる人は少ない。……いや、情報収集と思えば他国も人員を出すだろう。
「話は通しておきますがもう1ヵ月ないですからね、スムーズに決まるかは分かりませんよ」
さっそく正式な要請書類を仕上げてもらい、完成次第昨日戻って来たばかりの納村に日本側に届けてもらうように指示を出そう。
「あと温泉開発担当官が直接日本に留学したいという希望を出してくれまして、日本へ送る学生を30人から28人に減らしても構いませんか?」
「それは構いません、温泉開発担当官殿には温泉の開発と運営が学べるように手配しておきましょう」
俺が出来る限りの笑顔でそう答えると「助かります」と頭を下げられた。
しかし俺の脳裏によぎることはただ一つ。
……面倒臭い。
しかしこれも仕事であり、この膨大な資源を持ちながら赤ん坊のような小国に手を伸ばす事には意味がある。
異世界からの留学生受け入れとその諸手続き、遅々として進まない新しいトンネル工事、日本から頻繁にやってくる厄介な商社マン、伝書鳩でのろのろと続けている北の国の原油買取の交渉。
「では、よろしくお願いしますね」
満面の笑みを向けられると俺はもう何も言えなくなって「ははっ」と笑うだけだった。
「このタイミングに合わせて留学生募集の発表を行いたいのです!」
そうキラキラした目で告げてきたのはクワス教育統括官であった。
朱鷺によく似た姿をし興奮で翼をはためかせたその人の圧に「はあ」というぼんやりした返事を返すしかできない。
「そして日本や異世界への留学のメリットを知るためにもぜひ、日本側から専門家をお呼びして欲しいのです!」
無論その言い分は分かる。
しかし収穫祭までの残り1ヵ月を切っているのを思うと、うまく人を集められるかは分からない。
(何よりこちらに来てくれる人がそう都合よく見つかるのかも不安だしな)
本省はもちろん諸外国外務省との七面倒臭い折衝が目に見えているうえ、そもそも日本を中心に地球側からこちらへ来たがる人は少ない。……いや、情報収集と思えば他国も人員を出すだろう。
「話は通しておきますがもう1ヵ月ないですからね、スムーズに決まるかは分かりませんよ」
さっそく正式な要請書類を仕上げてもらい、完成次第昨日戻って来たばかりの納村に日本側に届けてもらうように指示を出そう。
「あと温泉開発担当官が直接日本に留学したいという希望を出してくれまして、日本へ送る学生を30人から28人に減らしても構いませんか?」
「それは構いません、温泉開発担当官殿には温泉の開発と運営が学べるように手配しておきましょう」
俺が出来る限りの笑顔でそう答えると「助かります」と頭を下げられた。
しかし俺の脳裏によぎることはただ一つ。
……面倒臭い。
しかしこれも仕事であり、この膨大な資源を持ちながら赤ん坊のような小国に手を伸ばす事には意味がある。
異世界からの留学生受け入れとその諸手続き、遅々として進まない新しいトンネル工事、日本から頻繁にやってくる厄介な商社マン、伝書鳩でのろのろと続けている北の国の原油買取の交渉。
「では、よろしくお願いしますね」
満面の笑みを向けられると俺はもう何も言えなくなって「ははっ」と笑うだけだった。
1
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

勇者PTを追放されたので獣娘たちに乗り換えて楽しく生きる
まったりー
ファンタジー
勇者を支援する為に召喚され、5年の間ユニークスキル【カードダス】で支援して来た主人公は、突然の冤罪を受け勇者PTを追放されてしまいました。
そんな主人公は、ギルドで出会った獣人のPTと仲良くなり、彼女たちの為にスキルを使う事を決め、獣人たちが暮らしやすい場所を作る為に奮闘する物語です。

異世界無宿
ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。
アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。
映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。
訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。
一目惚れで購入した車の納車日。
エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた…
神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。
アクション有り!
ロマンス控えめ!
ご都合主義展開あり!
ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。
不定期投稿になります。
投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

セリオン共和国再興記 もしくは宇宙刑事が召喚されてしまったので・・・
今卓&
ファンタジー
地球での任務が終わった銀河連合所属の刑事二人は帰途の途中原因不明のワームホールに巻き込まれる、彼が気が付くと可住惑星上に居た。
その頃会議中の皇帝の元へ伯爵から使者が送られる、彼等は捕らえられ教会の地下へと送られた。
皇帝は日課の教会へ向かう途中でタイスと名乗る少女を”宮”へ招待するという、タイスは不安ながらも両親と周囲の反応から招待を断る事はできず”宮”へ向かう事となる。
刑事は離別したパートナーの捜索と惑星の調査の為、巡視艇から下船する事とした、そこで彼は4人の知性体を救出し獣人二人とエルフを連れてエルフの住む土地へ彼等を届ける旅にでる事となる。

農民の少年は混沌竜と契約しました
アルセクト
ファンタジー
極々普通で特にこれといった長所もない少年は、魔法の存在する世界に住む小さな国の小さな村の小さな家の農家の跡取りとして過ごしていた
少年は15の者が皆行う『従魔召喚の儀』で生活に便利な虹亀を願ったはずがなんの間違えか世界最強の生物『竜』、更にその頂点である『混沌竜』が召喚された
これはそんな極々普通の少年と最強の生物である混沌竜が送るノンビリハチャメチャな物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる