異世界大使館はじめます

あかべこ

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5:大使館の夏

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大使館にも定期的な休みというものがある。
基本的に休みはこの国の公休に合わせているがそれだと日本の労働基準法にあわないので週休2日という事になっている。
ただし趣味を仕事にした飯山さんや納村のように週末でも仕事に精を出す面々もいるのが難しい。
中庭でジョンに威嚇されている(アルマジロの威嚇ってアリクイみたいに立つんだな)嘉神や、風呂上がりの外気浴を楽しむ柊木医師のように穏やかに過ごしている面々ももちろんいる。
俺はというと、特にやることも無くぼんやりしていることが多い。
(まあなにも無いという事は良い事だがな)
ぼんやりと空を眺めて穏やかさに感謝の念を抱く。
「ごめんジョン!」
中庭から嘉神が大きな声を張り上げて、その手に小さなジッパー袋を掲げた。
思わず気になって「何してるんだー?」と中庭に声をかける。
「調査用のサンプルとしてジョンのお腹の毛を抜いてましたー!」
なるほど、それは確かにごめんという他ないな。
ジョンよ強く生きろ。それもお前のためだ。
「あとで優しくしてやれ」
「もちろんです」
腹毛を抜かれたジョンがふてくされたように丸くなって庭を転がるのを見守っていると、そういえば明日から納村がまた東京に戻ることを思い出した。
可哀想なのでジョンにはあとで日本の美味しい果物を与えてやろう。
しばらくぼんやりと中庭を眺めて過ごしているとノックの音とともに「入っていいか」という木栖の声がした。
「どうした?」
「顔を見に来ただけだ」
「……毎日飽きるほど見てるだろうに」
「別にいいだろう」
「まあそうだがな」
そう言いながら何となくの立ち話をする。
ただお互い暇なので今夜食べたいものだとか天気の話とか大した事のない話をしばらくして過ごす。
「そういえばお前の怪我の件は無事保険降りたのか?」
「ああ、労災の手続きが面倒だったが無事にな。ギプスもようやく外せた」
柊木医師が確認して外しても良いという判断が降りたという事なんだろう。
「というかお前ギプスつけた状態で自転車漕いで迎えに来てたのか?」
そう俺が問えばちょっと気まずそうな顔をして「……ああ」と返す。
「お前の好意の発露だろうがけが人は身体を労われ」
俺が呆れ気味にそう告げると「そこで頭ごなしにしかりつけないのがお前のいいところだな」と言う。
「そりゃあどうも」
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