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4:大使館、北へ
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グウズルン情報管理官・ヘルカ魔術官・納村とともに面談場所として連れてこられたのは城の中庭で、チラチラと人目がつく場所であった。
お茶を淹れる侍女や書記官だけでなく近衛兵らしき姿も多く見受けられているあたりに警戒心を感じられる。
「宰相第三補佐のアネッテ・ディ・シェーベイルと申します、隣にいるのは宰相専属書記官のユッシです」
そう名乗ったぽっちゃり気味ながらきつい目をした金髪碧眼の女性は、また来たのかという呆れた目をしていた。
「駐金羊国日本大使館特命全権大使の真柴春彦です」
敢えて日本語で自己紹介をしたあと納村が驚いた目を向けた後ちゃんと通訳してくれる。
異世界の信ぴょう性を上げるにはまず違う言語を使うほうがいい、と言う俺なりの判断だ。
「ああ、例の文書の……。浅学にして我が国のどの地図にも無い国家ですがどちらにいつ建国された国家かお教え願えますか?」
「確かにこの国の地図に記載は無いでしょうね、我が国は金羊国の招きを得て国交を持った異世界の国ですので」
暗に知らないのが当然であることを強調して告げると「異世界ですか」とつぶやいた。
それでも疑いはまだぬぐいきれないという表情なのでもう少し畳みかけてみよう。
「小さいですが地図もお見せしましょう、書記官の方もどうぞ」
スマートフォンで地図アプリを立ち上げてまずは地球の全体像を見せる。
「これは雲のそのまた向こうの向こうから撮影した私たちの星で、そのなかにあるこの小さい弓状の島国が我が国・日本です」
納村の訳した俺の言葉に彼女の表情が少しだけ驚きを感じさせるものになり、視線は机の隅に向いている。
恐らく必死で真偽を疑っているのだろう。
外務省がかつて異世界からのコンタクトを受けて困惑したように、彼女もまた異世界の存在について考えているのだ。
「証明になるもの、と言っては弱いかもしれませんがこちらの世界にないものを一つお持ちしています」
「この世界にないもの?」
そう言って差し出したのは事前に用意しておいたプラスチックのペンと箱だ。
仔細を検分するようにじっと箱を見つめた後、手に取って再び開けたり閉めたりしている。
事前に軽く見せてはあるが一般の兵士にはプラスチックとガラスの違いはすぐに気付かれなかったが、触れてみて彼女はすぐに気付いたらしい。
「確かにここにはない素材ですね」
そう呟くと彼女は侍女にプラスチックの箱を預けて「宮廷筆頭魔術官に分析を」と告げる。
「……日本というこちらの世界とは違う技術を持った土地があることは認めましょう、しかし金羊国宰相の返還には関係ないのでは?」
「文書に明記してあるはずですが、日本政府から派遣された外交武官の木栖善泰がハルトル宰相をご自宅まで送る際に負傷しております。その負傷に対する損害賠償です」
ようやく彼女もこの件が思ったよりも面倒な案件だと理解してくれたらしい。
俺たちが獣人国家に便乗したたかりか何かだと思われた可能性は大きいが、それはそれでこの世界における獣人の扱いの悪さが推し量れるというか……まあそんなことは置いといて。
隣で口を開いたのはグウズルン情報管理官だった。
「それと昨日否定なされた誘拐の件ですが、証拠が見つかりまして」
今朝がた宿の前に置いてあった麻袋の封をほどくと中から眠った人間の青年と少年が現れる。
「シェーベイル侯爵家の第3令息のイエンス・ディ・シェーベイルとシェーベイル家従者のヨアキム・ホシュベリ、そして彼らの荷物のこの手紙が何よりの証拠ですよ」
丁寧に開封してその手紙を机の真ん中に置いてふたりにその手紙を見せると、グウズルン情報管理官が飛んできた木製の矢を全部掴み取った。
「このタイミングで殺ろうだなんて稚拙なことで」
そう呟いた後彼女が再び矢をどこかへ投げ飛ばす。
むしろ普通にあれを掴み取れるグウズルン情報管理官も大概むちゃくちゃすぎやしないか。
「これも含めて状況証拠、という訳ですか」
「ええ」
グウズルン情報管理官が魔性のように笑う。
「宰相閣下及び新王閣下との直接の対話が必要そうですね、今夜にでもそのお時間をご用意しましょう」
やっと、本丸に入れるらしい。
お茶を淹れる侍女や書記官だけでなく近衛兵らしき姿も多く見受けられているあたりに警戒心を感じられる。
「宰相第三補佐のアネッテ・ディ・シェーベイルと申します、隣にいるのは宰相専属書記官のユッシです」
そう名乗ったぽっちゃり気味ながらきつい目をした金髪碧眼の女性は、また来たのかという呆れた目をしていた。
「駐金羊国日本大使館特命全権大使の真柴春彦です」
敢えて日本語で自己紹介をしたあと納村が驚いた目を向けた後ちゃんと通訳してくれる。
異世界の信ぴょう性を上げるにはまず違う言語を使うほうがいい、と言う俺なりの判断だ。
「ああ、例の文書の……。浅学にして我が国のどの地図にも無い国家ですがどちらにいつ建国された国家かお教え願えますか?」
「確かにこの国の地図に記載は無いでしょうね、我が国は金羊国の招きを得て国交を持った異世界の国ですので」
暗に知らないのが当然であることを強調して告げると「異世界ですか」とつぶやいた。
それでも疑いはまだぬぐいきれないという表情なのでもう少し畳みかけてみよう。
「小さいですが地図もお見せしましょう、書記官の方もどうぞ」
スマートフォンで地図アプリを立ち上げてまずは地球の全体像を見せる。
「これは雲のそのまた向こうの向こうから撮影した私たちの星で、そのなかにあるこの小さい弓状の島国が我が国・日本です」
納村の訳した俺の言葉に彼女の表情が少しだけ驚きを感じさせるものになり、視線は机の隅に向いている。
恐らく必死で真偽を疑っているのだろう。
外務省がかつて異世界からのコンタクトを受けて困惑したように、彼女もまた異世界の存在について考えているのだ。
「証明になるもの、と言っては弱いかもしれませんがこちらの世界にないものを一つお持ちしています」
「この世界にないもの?」
そう言って差し出したのは事前に用意しておいたプラスチックのペンと箱だ。
仔細を検分するようにじっと箱を見つめた後、手に取って再び開けたり閉めたりしている。
事前に軽く見せてはあるが一般の兵士にはプラスチックとガラスの違いはすぐに気付かれなかったが、触れてみて彼女はすぐに気付いたらしい。
「確かにここにはない素材ですね」
そう呟くと彼女は侍女にプラスチックの箱を預けて「宮廷筆頭魔術官に分析を」と告げる。
「……日本というこちらの世界とは違う技術を持った土地があることは認めましょう、しかし金羊国宰相の返還には関係ないのでは?」
「文書に明記してあるはずですが、日本政府から派遣された外交武官の木栖善泰がハルトル宰相をご自宅まで送る際に負傷しております。その負傷に対する損害賠償です」
ようやく彼女もこの件が思ったよりも面倒な案件だと理解してくれたらしい。
俺たちが獣人国家に便乗したたかりか何かだと思われた可能性は大きいが、それはそれでこの世界における獣人の扱いの悪さが推し量れるというか……まあそんなことは置いといて。
隣で口を開いたのはグウズルン情報管理官だった。
「それと昨日否定なされた誘拐の件ですが、証拠が見つかりまして」
今朝がた宿の前に置いてあった麻袋の封をほどくと中から眠った人間の青年と少年が現れる。
「シェーベイル侯爵家の第3令息のイエンス・ディ・シェーベイルとシェーベイル家従者のヨアキム・ホシュベリ、そして彼らの荷物のこの手紙が何よりの証拠ですよ」
丁寧に開封してその手紙を机の真ん中に置いてふたりにその手紙を見せると、グウズルン情報管理官が飛んできた木製の矢を全部掴み取った。
「このタイミングで殺ろうだなんて稚拙なことで」
そう呟いた後彼女が再び矢をどこかへ投げ飛ばす。
むしろ普通にあれを掴み取れるグウズルン情報管理官も大概むちゃくちゃすぎやしないか。
「これも含めて状況証拠、という訳ですか」
「ええ」
グウズルン情報管理官が魔性のように笑う。
「宰相閣下及び新王閣下との直接の対話が必要そうですね、今夜にでもそのお時間をご用意しましょう」
やっと、本丸に入れるらしい。
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