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4:大使館、北へ
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2日後、王都に辿り着いた俺たちは宿を借りて報告会を行う事にした。
この宿もグウズルン情報管理官の知り合いの営むところではあるが、借りれたのは使われていない従業員用の小屋であった。
宿の主(この人は人間であった)は「すいませんねえ」と言いつつもあまり申し訳ない顔には見えない。
金属製のポットにたっぷり入ったお茶を受け取って借りる事の出来た小屋の古い椅子に腰を下ろす。
「王との謁見についてですが、まだ数日かかりそうですね」
そう口を開いたのはグウズルン情報管理官であった。
「金羊国・日本政府合同での抗議文と交渉の場を求める文書を正式に送ってあるんですが、そもそも誘拐の事を知らんぷりのようです。教会に送った密使を私の下にいるものが捕まえたので明朝までにここへ来させます」
「教会に協力を?」
「ええ、教会が金羊国全土をハルトルの開拓地でハルトルが王の私有奴隷であると認めさえすれば金羊国は北の国の属国であると大陸全土に認めさせることが出来ますからね。慎重に動いてるのでしょう」
「なら明朝以降の話し合いには日本政府代表として俺たちも参加させていただけませんか」
「……わかりました」
こちらとしても北の王家について少しでも探りを入れておきたい。
王都に向かう魔動力車の車内で色々話を聞いてみたが、王家について分かったことはそう多くない。
誰に聞いても最初に話を聞いた親子の話と同じようなことしか聞けなかったので街の事や経済の事も聞いてみる事にした。
寒い国なのでギーロンより北では麦が育たずイモが主食となること、貧乏ではあるが国全体がそこまで豊かではないので財政は安定していること、最近は王妃の出身地で盛んな刺繍が王都で人気になっていることぐらいだろうか。
「解放のためのキーになりそうな人材は分かっていますか?」
「新王・グスタフ4世。それと宰相のクヌート・ディ・シェーベイル侯爵ですかね。教会に送った密使が侯爵家の人間なので一枚かんでるのは確実です。
推測ですが、新王は純粋にハルトルを求めていてあのくそ宰相は金羊国の土地と資源が欲しいんでしょうね」
「それだとむしろ新王のほうが厄介じゃないか?」
「否定はしません、利益では動かない人間は交渉がしづらい」
*****
翌日、大きな麻袋と木簡が俺たちの小屋の脇に置かれていた。
木簡をグウズルンに渡して表の麻袋の事を伝えると「ああ、例のですね」と答えた。
まさかと思って袋の中に耳を立てると人の寝息が聞こえてきて、グウズルン情報管理官の仲間が捕まえた密使を袋に入れて連れてきたのだと察した。乱暴すぎるが俺たちにはどうしようもないので、もうしばらく寝ていてくれ。
朝食として出されたパンケーキは触感は北海道のいももちに似ているが中に野菜が入っていて、もちっとさくっが交互にやってくる。味はまずまずだが腹には溜まる。
そして一つ驚かせるのに効きそうな代物として用意したものがある。
「グウズルン情報管理官、ヘルカ魔術官。こいつはこの世界の魔法で再現可能だと思うか」
用意したのは日本で一般に流通しているボールペンとマジックペンだ。
この世界では工業製品の概念は希薄だが魔術に頼ればガラスも金属も現代日本並みの品質のものが作れることは把握している。
ならばこの世界に存在しない合成樹脂が日本側の技術を象徴するものになる、と考えたのだ。
「これはー……日本のものか」
「魔術でこれを作るとなるとまず原料の分析ですよね、それにこの世界で適したものを探して、作れる魔術技官を探して、実際に作る……んー、出来なくはないでしょうけど一国の魔術官クラスでも試作までに100年は要りますね。量産レベルまで至るのはほぼ無理です」
ヘルカ魔術官の説明に驚いたように目を見開くグウズルン情報管理官の様子を見て、軽く驚かせるには十分だろうと察する。
「ならこれにしよう」
「日本だとこの素材結構普通に流通してますけど、ほんと何で出来てるんでしょうね?」
プラスチックの原料は石油であり、この世界では原油が黒油という名前で存在しているようなので作ろうと思えば作れるだろうが製造法が分からないとすぐには無理だろう。
とりあえずこれもプラスチックの箱に入れてリボンで縛っておく。
「ガラスのように熱で溶かして固めたんじゃないのか?」
「でも自然界にこんな軽くて透明な物ないじゃないですか」
うん?と思わず2人のほうを振り返る。
ガラスって確か石英とソーダ灰と石灰を熱で溶かして作るもののはずなんだが、あの二人の言いかただと天然ガラスを溶かして固めてるように聞こえる。
「ガラスって鉱物を溶かし固めたものじゃ?」
そう口をはさんだのは納村だ。ナイス。
「えっ、ガラスってガラス石を魔術で溶かして固めたものじゃないんですか」
感覚の違いに思わず遠い目になった。
この宿もグウズルン情報管理官の知り合いの営むところではあるが、借りれたのは使われていない従業員用の小屋であった。
宿の主(この人は人間であった)は「すいませんねえ」と言いつつもあまり申し訳ない顔には見えない。
金属製のポットにたっぷり入ったお茶を受け取って借りる事の出来た小屋の古い椅子に腰を下ろす。
「王との謁見についてですが、まだ数日かかりそうですね」
そう口を開いたのはグウズルン情報管理官であった。
「金羊国・日本政府合同での抗議文と交渉の場を求める文書を正式に送ってあるんですが、そもそも誘拐の事を知らんぷりのようです。教会に送った密使を私の下にいるものが捕まえたので明朝までにここへ来させます」
「教会に協力を?」
「ええ、教会が金羊国全土をハルトルの開拓地でハルトルが王の私有奴隷であると認めさえすれば金羊国は北の国の属国であると大陸全土に認めさせることが出来ますからね。慎重に動いてるのでしょう」
「なら明朝以降の話し合いには日本政府代表として俺たちも参加させていただけませんか」
「……わかりました」
こちらとしても北の王家について少しでも探りを入れておきたい。
王都に向かう魔動力車の車内で色々話を聞いてみたが、王家について分かったことはそう多くない。
誰に聞いても最初に話を聞いた親子の話と同じようなことしか聞けなかったので街の事や経済の事も聞いてみる事にした。
寒い国なのでギーロンより北では麦が育たずイモが主食となること、貧乏ではあるが国全体がそこまで豊かではないので財政は安定していること、最近は王妃の出身地で盛んな刺繍が王都で人気になっていることぐらいだろうか。
「解放のためのキーになりそうな人材は分かっていますか?」
「新王・グスタフ4世。それと宰相のクヌート・ディ・シェーベイル侯爵ですかね。教会に送った密使が侯爵家の人間なので一枚かんでるのは確実です。
推測ですが、新王は純粋にハルトルを求めていてあのくそ宰相は金羊国の土地と資源が欲しいんでしょうね」
「それだとむしろ新王のほうが厄介じゃないか?」
「否定はしません、利益では動かない人間は交渉がしづらい」
*****
翌日、大きな麻袋と木簡が俺たちの小屋の脇に置かれていた。
木簡をグウズルンに渡して表の麻袋の事を伝えると「ああ、例のですね」と答えた。
まさかと思って袋の中に耳を立てると人の寝息が聞こえてきて、グウズルン情報管理官の仲間が捕まえた密使を袋に入れて連れてきたのだと察した。乱暴すぎるが俺たちにはどうしようもないので、もうしばらく寝ていてくれ。
朝食として出されたパンケーキは触感は北海道のいももちに似ているが中に野菜が入っていて、もちっとさくっが交互にやってくる。味はまずまずだが腹には溜まる。
そして一つ驚かせるのに効きそうな代物として用意したものがある。
「グウズルン情報管理官、ヘルカ魔術官。こいつはこの世界の魔法で再現可能だと思うか」
用意したのは日本で一般に流通しているボールペンとマジックペンだ。
この世界では工業製品の概念は希薄だが魔術に頼ればガラスも金属も現代日本並みの品質のものが作れることは把握している。
ならばこの世界に存在しない合成樹脂が日本側の技術を象徴するものになる、と考えたのだ。
「これはー……日本のものか」
「魔術でこれを作るとなるとまず原料の分析ですよね、それにこの世界で適したものを探して、作れる魔術技官を探して、実際に作る……んー、出来なくはないでしょうけど一国の魔術官クラスでも試作までに100年は要りますね。量産レベルまで至るのはほぼ無理です」
ヘルカ魔術官の説明に驚いたように目を見開くグウズルン情報管理官の様子を見て、軽く驚かせるには十分だろうと察する。
「ならこれにしよう」
「日本だとこの素材結構普通に流通してますけど、ほんと何で出来てるんでしょうね?」
プラスチックの原料は石油であり、この世界では原油が黒油という名前で存在しているようなので作ろうと思えば作れるだろうが製造法が分からないとすぐには無理だろう。
とりあえずこれもプラスチックの箱に入れてリボンで縛っておく。
「ガラスのように熱で溶かして固めたんじゃないのか?」
「でも自然界にこんな軽くて透明な物ないじゃないですか」
うん?と思わず2人のほうを振り返る。
ガラスって確か石英とソーダ灰と石灰を熱で溶かして作るもののはずなんだが、あの二人の言いかただと天然ガラスを溶かして固めてるように聞こえる。
「ガラスって鉱物を溶かし固めたものじゃ?」
そう口をはさんだのは納村だ。ナイス。
「えっ、ガラスってガラス石を魔術で溶かして固めたものじゃないんですか」
感覚の違いに思わず遠い目になった。
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