異世界大使館はじめます

あかべこ

文字の大きさ
上 下
38 / 254
4:大使館、北へ

4-6

しおりを挟む
話し合いも進んで午前10時を過ぎ、そろそろ診察も終わっただろうし木栖に容体を電話で確認することにした。
ちなみにスマホは画像データーをコピーの上本人に返してあり、その画像も協力者にメールで送ってある。
「木栖、診断はどうなった?」
『肋骨が2本折れてた、あと背骨にもヒビが入ってたらしくてな。一歩間違えたら神経のほうをやってた。全体2ヶ月ぐらいって話だ』
「全治2ヶ月か」
立件するなら傷害罪だな、と妙に冷静になりながら考えている俺に隣にいた飯島から俺の方を見た。
「スピーカーホンにする」
スピーカーボタンを押して隣にいた飯島の方を見る。
「お疲れ様です、並行世界局の飯島です。容体はいかがですか」
『ギプスはつけてますが特に容体が悪いと言ったことはないです』
「わかりました、今回の経費は全部労災で落とすので領収書お願いします」
『了解です。領収書は午後にでもそちらに持って行きます』
という事は木栖も午後にこちらへ来るのか。指輪の話は夕方以降にしよう、さすがにこれについては俺の独断で全部進める気にはなれん。
グウズルン情報管理官が小さな挙手とともに話をさせろと目で訴えてくるのでそっとスマホを差し向ける。
使い方はさっきのを見ていて理解したのか「グウズルンですが、」と話を切り出した。
「真柴大使と木栖武官の関係性を証明する公的書類は無いんですね?」
『公的な物はないですね、婚姻証明書は降りませんし同性婚の代替として使われる養子縁組なども行っていませんから』
「そこにつけこんでハルトルの代わりに自分の女姉妹を真柴大使と結婚させて姻戚関係を作って影響を持たせる可能性があります」
『国王自身がハルトル宰相と結婚する可能性は?』
「それをやれば国内から反発があるでしょうし教会が口出ししてきます」
姻戚関係による日本と金羊国への内政干渉か、中世ヨーロッパか?
日本人には及びもつかない方法に飯島が「悪辣だな」とつぶやいたが、そういうものだと諦めて欲しい。
「そこについては日本国憲法の婚姻の自由に基づき、双方の同意のない結婚は認められませんよ」
飯島が口をはさむ。あちらの世界でも外交騎士は祖国の法に基づいて行動するというのが常識なのだし、理解はされるだろう。
「それはしょせんの話です。北の国が姻戚関係があると言えば他の国も認めるでしょう」
『拒否方法は?』
「家長権の発動ですかね」
「それなら俺が家長であるとすればいい」
2つの国の法律に基づいた婚姻の拒否ならそう簡単に向こうも理屈の穴は突けない。まして向こうは日本国憲法を知らない訳だしな。
『それと気になったことがひとつ、ハルトル宰相自身の奴隷契約破棄は出来るのか?』
痛いところを衝かれたというように「う」と小さく声が漏れた。
「……それについてはほぼ無理でしょうね、主従契約証明は燃やせても魔術契約印が消せないので」
「魔術契約印というのは?」
「奴隷として買った後につけられる刺青の一種なんですが、魔術に反応するので奴隷に罰を与えることが出来るしろものです。処罰はもちろん外せるのは主人のみ、その気になれば奴隷自身の命も奪える代物です」
また厄介な代物が出てきたな。
ただの刺青はともかく魔術が絡んでいるとこっちとしても気軽に手を出せない。
「ハルトル宰相自身が持ち主を説得して解除、という可能性は?」
「あの執着ぶりを見ていると難しいでしょうね」
わざわざ犯罪を起こしてまで手に入れようとした相手だ、すぐには説得されてくれないだろう。
グウズルン情報管理官は契約印の解除を最初から諦めているように見えるのはそのためか。
「そこは宰相自身に期待か」
とにかく午後木栖と協力者が来る。
話はまだ続きそうだ。
しおりを挟む
気に入ってくださったら番外編も読んでみてください
マシュマロで匿名感想も受け付けています、お返事は近況ボードから。
更新告知Twitter@SPBJdHliaztGpT0
感想 0

あなたにおすすめの小説

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界無宿

ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。 アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。 映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。 訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。 一目惚れで購入した車の納車日。 エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた… 神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。 アクション有り! ロマンス控えめ! ご都合主義展開あり! ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。 不定期投稿になります。 投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

農民の少年は混沌竜と契約しました

アルセクト
ファンタジー
極々普通で特にこれといった長所もない少年は、魔法の存在する世界に住む小さな国の小さな村の小さな家の農家の跡取りとして過ごしていた 少年は15の者が皆行う『従魔召喚の儀』で生活に便利な虹亀を願ったはずがなんの間違えか世界最強の生物『竜』、更にその頂点である『混沌竜』が召喚された これはそんな極々普通の少年と最強の生物である混沌竜が送るノンビリハチャメチャな物語

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

異世界転移~治癒師の日常

コリモ
ファンタジー
ある日看護師の真琴は仕事場からの帰り道、地面が陥没する事故に巻き込まれた。しかし、いつまでたっても衝撃が来ない。それどころか自分の下に草の感触が… こちらでは初投稿です。誤字脱字のご指摘ご感想お願いします なるだけ1日1話UP以上を目指していますが、用事がある時は間に合わないこともありますご了承ください(2017/12/18) すいません少し並びを変えております。(2017/12/25) カリエの過去編を削除して別なお話にしました(2018/01/15) エドとの話は「気が付いたら異世界領主〜ドラゴンが降り立つ平原を管理なんてムリだよ」にて掲載させてもらっています。(2018/08/19)

処理中です...