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4:大使館、北へ
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鳴り響いた甲高い電子音に即座に反応したのはグウズルン情報管理官だった。
扉を蹴破らん勢いでグウズルン情報管理官が外に飛び出すのについていくと、そこには頭から血を流して倒れる木栖がいた。
「木栖!」
向かい側にしゃがみ込んだ柊木医師が木栖の容体をサッと確認すると「息はあります、脈拍もある」と返してくる。
嘉神と柊木医師が二人がかりで木栖を運んでいき、俺は辺りを見渡す。
「ハルトル宰相がいない」
脳裏によぎったのは宰相を狙っての誘拐だった。
何かしらの理由で襲われた宰相を木栖が身を挺して守った、というのが最も腑に落ちる。しかし何故?なぜ今このタイミングで宰相を攫う必要がある?
鼻から血を垂れ流したグウズルン情報管理官が不機嫌そうに戻ってきて、鼻から垂れた赤いものを手で押さえながら「逃げられた」と告げた。
「第三者によるものですか」
「残念ながらね、やっぱり私が送っていくべきだったかもれない」
グウズルン情報管理官はそう告げると「話を聞きに行かないと」と言って大使館のほうへと歩き出した。
****
「申し訳なかった」
頭に包帯を巻いた木栖はグウズルン情報管理官に一番にそう告げた。
「順を追って説明してください」
「帰る途中にスマートフォンで夜空を撮っていたら奇襲に遭った。後ろから一撃だったから顔は見ていない」
「スマートフォンというのは?」
「俺たちが全員持っている小さな板だ、もしかしたらそこに映っているかもしれないが……」
そういえば木栖のスマートフォンはあの場所で拾っていない、という事は宰相が鳴らしたというのが妥当な判断だろう。
「スマートフォンというのはこれですか」
差し出されたのは液晶が割れた黒いスマートフォンで「俺のスマホだ」と告げた。
「あいつらに投げつけられて割れてしまいましたが、撮ったものを見せてもらえますか」
「分かった」
木栖がスマホに触れると画面が明るくなった。機能は生きていたらしい。
ライブラリを開いて一本の動画が始まる。
画面いっぱいに夜空が映し出されると同時に声も録音されている。
『すごいですね、すまーとふぉんって!魔術に頼らず撮影できるなんて!』
『それは動画ですよ宰相閣下』
『どうが?』
パチンとインカメラに切り替わり、ハルトル宰相と木栖が映し出されたその瞬間だった。
『うわっ?!』
そこに映ったのは数人の黒服の男たちで彼らがハルトル宰相の顔に布をかぶせる。
『ok、行くぞ』
耳慣れない声の男たちに『何するんですか!』と宰相が騒ぎ立てるが、男たちは何も気にすることなく宰相を袋に詰めて走り出していく。
やたらめったらにボタンを押すうちに甲高い電子音が響きだす、おそらくこの時の音が俺たちの聞いた音だろう。
途中で誰かがスマートフォンを袋から引っ張り出すと『何ですかねこれは』と忌々しげにつぶやく。
宰相が入っていると思わしき袋は別人が持って行き、追いかけてきた白い影に向かって飛ばされていく。
「……武器をお貸しいただけますか」
「は」
「宰相ハルトル奪還のため、あなた方の失態の帳消しのため、武器をお貸しいただけますか。魔術に頼らず闘う者の武器を」
グウズルン情報管理官の目は冷たくも怒りに満ちた眼差しをしている。
「我が国では法律の制約がありますので武器はお貸しできませんが、奪還には協力いたします」
「……外交騎士は祖国の法に準じて行動すべし、ですか」
よく分からないが一応納得はしてくれたようで助かる。
「ですがこちらとしてもうちの木栖を怪我させた訳ですからね。相手への損害賠償請求もきっちり行わせてもらいますよ」
お互いに暗い笑みがこぼれると「わかりました」とつげた
扉を蹴破らん勢いでグウズルン情報管理官が外に飛び出すのについていくと、そこには頭から血を流して倒れる木栖がいた。
「木栖!」
向かい側にしゃがみ込んだ柊木医師が木栖の容体をサッと確認すると「息はあります、脈拍もある」と返してくる。
嘉神と柊木医師が二人がかりで木栖を運んでいき、俺は辺りを見渡す。
「ハルトル宰相がいない」
脳裏によぎったのは宰相を狙っての誘拐だった。
何かしらの理由で襲われた宰相を木栖が身を挺して守った、というのが最も腑に落ちる。しかし何故?なぜ今このタイミングで宰相を攫う必要がある?
鼻から血を垂れ流したグウズルン情報管理官が不機嫌そうに戻ってきて、鼻から垂れた赤いものを手で押さえながら「逃げられた」と告げた。
「第三者によるものですか」
「残念ながらね、やっぱり私が送っていくべきだったかもれない」
グウズルン情報管理官はそう告げると「話を聞きに行かないと」と言って大使館のほうへと歩き出した。
****
「申し訳なかった」
頭に包帯を巻いた木栖はグウズルン情報管理官に一番にそう告げた。
「順を追って説明してください」
「帰る途中にスマートフォンで夜空を撮っていたら奇襲に遭った。後ろから一撃だったから顔は見ていない」
「スマートフォンというのは?」
「俺たちが全員持っている小さな板だ、もしかしたらそこに映っているかもしれないが……」
そういえば木栖のスマートフォンはあの場所で拾っていない、という事は宰相が鳴らしたというのが妥当な判断だろう。
「スマートフォンというのはこれですか」
差し出されたのは液晶が割れた黒いスマートフォンで「俺のスマホだ」と告げた。
「あいつらに投げつけられて割れてしまいましたが、撮ったものを見せてもらえますか」
「分かった」
木栖がスマホに触れると画面が明るくなった。機能は生きていたらしい。
ライブラリを開いて一本の動画が始まる。
画面いっぱいに夜空が映し出されると同時に声も録音されている。
『すごいですね、すまーとふぉんって!魔術に頼らず撮影できるなんて!』
『それは動画ですよ宰相閣下』
『どうが?』
パチンとインカメラに切り替わり、ハルトル宰相と木栖が映し出されたその瞬間だった。
『うわっ?!』
そこに映ったのは数人の黒服の男たちで彼らがハルトル宰相の顔に布をかぶせる。
『ok、行くぞ』
耳慣れない声の男たちに『何するんですか!』と宰相が騒ぎ立てるが、男たちは何も気にすることなく宰相を袋に詰めて走り出していく。
やたらめったらにボタンを押すうちに甲高い電子音が響きだす、おそらくこの時の音が俺たちの聞いた音だろう。
途中で誰かがスマートフォンを袋から引っ張り出すと『何ですかねこれは』と忌々しげにつぶやく。
宰相が入っていると思わしき袋は別人が持って行き、追いかけてきた白い影に向かって飛ばされていく。
「……武器をお貸しいただけますか」
「は」
「宰相ハルトル奪還のため、あなた方の失態の帳消しのため、武器をお貸しいただけますか。魔術に頼らず闘う者の武器を」
グウズルン情報管理官の目は冷たくも怒りに満ちた眼差しをしている。
「我が国では法律の制約がありますので武器はお貸しできませんが、奪還には協力いたします」
「……外交騎士は祖国の法に準じて行動すべし、ですか」
よく分からないが一応納得はしてくれたようで助かる。
「ですがこちらとしてもうちの木栖を怪我させた訳ですからね。相手への損害賠償請求もきっちり行わせてもらいますよ」
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