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3:大使館員は歩く
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大使館内での食事は基本的に全員同じタイミングでとる。
一番の目的は料理担当の飯山さんの負担軽減だが、食事の場ぐらいしか全員が顔を揃えるという事がないので一緒に全員での共有事項を話すのにちょうどいいという都合もある。
今回は帰ってきた嘉神が視察で得た情報の共有ということになる。
東側にある都市は3つあり、都市の番号は原則開発された順番につけられる(例外として第1都市と第2都市は順番が逆になっている)
第2都市の東側に隣接する第4都市は主に岩塩や石材の採掘が行われ、市場で流通する国産の塩はほぼここで採れたものだ。
石材は凝灰岩、日本でいう伊豆石に近い質感のものが取れる。もっともこちらでは木材と土がメインの建材のため石を使う場所はそう多くないようだ。
第5都市は農業が中心、当初はここでも鉱石の採掘があったらしいが去年あたりから高温のお湯が出る水脈にぶち当たってしまい鉱山労働者は西部のインゴルフル鉱山や北に新しく見つかったグズムンドゥル鉱山へと移ったらしい。
水脈にぶつかる前は金銀鉄などの金属鉱石が豊富に採掘されていたので、このお湯を何とか出来ないかと都市管理長官(現代日本でいう市長にあたる)相談されたらしい。
それで電力を使わないサイフォンやポンプなどを思い出せる限り作り方を教えたそうだ。
ただその鉱山から出てきた水がどう見ても温泉で、ここを温泉地として開発したり地熱を使ったハウス栽培ができないかと都市管理長官や地域住民に伝えてあるという。
「温泉……?!」
「いいですね温泉、サイフォンやポンプで水を持ち上げてこっちまで運んでもらえれば……」
納村と柊木医師がざわついているので「それは後で考えろ」と突っ込んでおく。
「まずこの国で温泉の需要があるのかも分からんし、もし温泉として活用するにも水質検査が要る」
「それもそうでしたね、すいません」
やっぱり風呂は必要という答えが出たので、この問題も早めに解決したほうがよさそうだ。
そして第7都市。
現在ある都市の中で最も新しい都市で前述のグズムンドゥル鉱山がある。
ここも金属鉱脈が豊富で30種類以上の金属の鉱脈が見つけられ、採掘が行われている。
「そういえば金属精錬や加工は行われてないのか?」
「この国では行えないみたいですね、この世界では金属の精錬・加工にも魔術が用いられます。魔術が使えない獣人には精錬加工が不可能というのが通説になっていて、結局安値で売る事になるみたいですね」
「ここでも魔術か」
つくづくこの世界は魔術が使えないものに優しくない。
魔術に頼らない新しいエネルギーとして電気を持ち込むのが先決なのではないだろうか。
(ODAによる技術協力で電力インフラを整えて恩を売り、金属鉱石を中心に供給してもらう……というのが妥当なところかもな)
いま一番職務上優先すべきは情報収集と報告であるが、それが終われば日本が金羊国にどう関与すれば利益を最大化できるかが重要命題となる。
もちろん金羊国も利益を得て発展し良好な関係を築き上げられれば理想的だが、俺としては永田町のエゴイスティックな古狸にあの優秀ながらお人好しのきらいがある羊の宰相がいいように使われないよう動きたいところでもある。
「やる事は多いな」
木栖がすべてを察したように呟くので「本当だよ」とつぶやいた。
そうして最後に嘉神の口から出てきたのはアルマジロの事だった。
ここに来るまでの経緯を説明していると、飯山さんが「食べられないのかあ」とつぶやいた。
「アルマジロ食べるんですか?」
嘉神がちょっと引いたようにそう聞くので「アルマジロってねぇ、すごく美味しいんだよ」と返してくる。
「南米では高級食材でねえ、臭みとか癖は無いし食べると柔らかいし脂も濃厚なんだよねえ」
完全に捕食する目をしていたので思わず嘉神の腕の中にいたアルマジロがくるんと丸くなった。
薄々察していたが飯山満という人はあらゆるものを食おうとする、現状昆虫食はやめて欲しいと言ってあるがアルマジロぐらいならそのうち出てきそうな気がする。
「この子は食べないでくださいね」
「人のペットは食べないよぉ」
嘉神の疑りの目が飯山さんに向けられているのを見て、人への信用がゼロになる瞬間を目撃したのを感じた。
「ちなみにそのアルマジロに名前はあるのか?」
「ジョンです」
木栖の質問に嘉神が即答する。
そんな犬みたいな名前でいいのかと思った俺に対して、納村は「アルマジロだからジョンかー」と納得したように呟いた。いったい今の答えにどう納得するポイントがあったんだ。
「アルマジロと言えばやはりジョンかな、と」
「確かにそれもそうかー、飼い主に砲弾にされたりY談波浴びせられたりしないようになー」
嘉神と納村が納得しているので近くにいた木栖に意味を聞こうとすると「全然分からん」とつぶやいていた。
柊木医師も分からないらしく、男3人で首を傾げつつもアルマジロのジョンはその名前を気に入ったようで嬉しそうに「ぬー」と鳴いた。
一番の目的は料理担当の飯山さんの負担軽減だが、食事の場ぐらいしか全員が顔を揃えるという事がないので一緒に全員での共有事項を話すのにちょうどいいという都合もある。
今回は帰ってきた嘉神が視察で得た情報の共有ということになる。
東側にある都市は3つあり、都市の番号は原則開発された順番につけられる(例外として第1都市と第2都市は順番が逆になっている)
第2都市の東側に隣接する第4都市は主に岩塩や石材の採掘が行われ、市場で流通する国産の塩はほぼここで採れたものだ。
石材は凝灰岩、日本でいう伊豆石に近い質感のものが取れる。もっともこちらでは木材と土がメインの建材のため石を使う場所はそう多くないようだ。
第5都市は農業が中心、当初はここでも鉱石の採掘があったらしいが去年あたりから高温のお湯が出る水脈にぶち当たってしまい鉱山労働者は西部のインゴルフル鉱山や北に新しく見つかったグズムンドゥル鉱山へと移ったらしい。
水脈にぶつかる前は金銀鉄などの金属鉱石が豊富に採掘されていたので、このお湯を何とか出来ないかと都市管理長官(現代日本でいう市長にあたる)相談されたらしい。
それで電力を使わないサイフォンやポンプなどを思い出せる限り作り方を教えたそうだ。
ただその鉱山から出てきた水がどう見ても温泉で、ここを温泉地として開発したり地熱を使ったハウス栽培ができないかと都市管理長官や地域住民に伝えてあるという。
「温泉……?!」
「いいですね温泉、サイフォンやポンプで水を持ち上げてこっちまで運んでもらえれば……」
納村と柊木医師がざわついているので「それは後で考えろ」と突っ込んでおく。
「まずこの国で温泉の需要があるのかも分からんし、もし温泉として活用するにも水質検査が要る」
「それもそうでしたね、すいません」
やっぱり風呂は必要という答えが出たので、この問題も早めに解決したほうがよさそうだ。
そして第7都市。
現在ある都市の中で最も新しい都市で前述のグズムンドゥル鉱山がある。
ここも金属鉱脈が豊富で30種類以上の金属の鉱脈が見つけられ、採掘が行われている。
「そういえば金属精錬や加工は行われてないのか?」
「この国では行えないみたいですね、この世界では金属の精錬・加工にも魔術が用いられます。魔術が使えない獣人には精錬加工が不可能というのが通説になっていて、結局安値で売る事になるみたいですね」
「ここでも魔術か」
つくづくこの世界は魔術が使えないものに優しくない。
魔術に頼らない新しいエネルギーとして電気を持ち込むのが先決なのではないだろうか。
(ODAによる技術協力で電力インフラを整えて恩を売り、金属鉱石を中心に供給してもらう……というのが妥当なところかもな)
いま一番職務上優先すべきは情報収集と報告であるが、それが終われば日本が金羊国にどう関与すれば利益を最大化できるかが重要命題となる。
もちろん金羊国も利益を得て発展し良好な関係を築き上げられれば理想的だが、俺としては永田町のエゴイスティックな古狸にあの優秀ながらお人好しのきらいがある羊の宰相がいいように使われないよう動きたいところでもある。
「やる事は多いな」
木栖がすべてを察したように呟くので「本当だよ」とつぶやいた。
そうして最後に嘉神の口から出てきたのはアルマジロの事だった。
ここに来るまでの経緯を説明していると、飯山さんが「食べられないのかあ」とつぶやいた。
「アルマジロ食べるんですか?」
嘉神がちょっと引いたようにそう聞くので「アルマジロってねぇ、すごく美味しいんだよ」と返してくる。
「南米では高級食材でねえ、臭みとか癖は無いし食べると柔らかいし脂も濃厚なんだよねえ」
完全に捕食する目をしていたので思わず嘉神の腕の中にいたアルマジロがくるんと丸くなった。
薄々察していたが飯山満という人はあらゆるものを食おうとする、現状昆虫食はやめて欲しいと言ってあるがアルマジロぐらいならそのうち出てきそうな気がする。
「この子は食べないでくださいね」
「人のペットは食べないよぉ」
嘉神の疑りの目が飯山さんに向けられているのを見て、人への信用がゼロになる瞬間を目撃したのを感じた。
「ちなみにそのアルマジロに名前はあるのか?」
「ジョンです」
木栖の質問に嘉神が即答する。
そんな犬みたいな名前でいいのかと思った俺に対して、納村は「アルマジロだからジョンかー」と納得したように呟いた。いったい今の答えにどう納得するポイントがあったんだ。
「アルマジロと言えばやはりジョンかな、と」
「確かにそれもそうかー、飼い主に砲弾にされたりY談波浴びせられたりしないようになー」
嘉神と納村が納得しているので近くにいた木栖に意味を聞こうとすると「全然分からん」とつぶやいていた。
柊木医師も分からないらしく、男3人で首を傾げつつもアルマジロのジョンはその名前を気に入ったようで嬉しそうに「ぬー」と鳴いた。
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