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1:大使館を作る(日本編)
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3月半ばのよく晴れた小春日和、上野の今は使われなくなった駅の入り口に大使館に派遣される面々が集っていた。
「それにしてもまさか全部手作業で運ぶとは思いませんでしたねー」
のほほんとしながら飯山さんが呟いた。
異世界との入り口となったため現在は厳重に警備されているこの駅の入り口は、1933年・昭和8年完成という古い建物で間口もあまり広くない。
無理やりなら通れなくもないだろうが、所有する私鉄や地元行政の『建物の破損に繋がりかねないことから車での通行は勘弁してほしい』という意向を汲み手作業での搬入となった。
そもそも異世界に電気やガスがない事は聞き取り調査で分かっており、大きな電化製品は持ち込んでも使えないから受け入れた……という大人の事情もあるが、そこは置いておこう。
仕事に使う道具も含めてアルミ製のリヤカーに乗せられるだけの荷物を載せての移動である。
一人一台リヤカーに荷物を積み、入りきらなかった分はリュックサックなどに詰め込んで運ぶ。
「木栖はずいぶん多めに持ってきているな」
リヤカーからあふれんばかりの荷物をゴム紐とブルーシートで抑え、さらにごついリュックを二つもしょい込んでいる木栖は他の面々と比べても明らかに荷物が多い。
「緊急時に使う装備品が少しかさばっているだけだ、人数分の防弾チョッキと鉄帽まであるからな」
「……一般人を前線に送ってるとでも思ってるのか?」
「不明な部分が多すぎるからな」
「防弾チョッキの世話にならない事だけを祈ろう」
持ち込める量に限界があるので大型火器は持ち込んでいなさそうだが、小銃や狙撃銃は持ち込んでいそうだ。
(一応先方に事情説明はしておこう)
友好のためにも余計な誤解はされたくない。
全員が荷物を降ろして準備を終えた頃、出入り口から一人の小柄な青年が現れた。
「大使館の皆様、お迎えに上がりました」
白髪に白くちいさな翼を持った彼こそが最初にこの国に現れた獣人のひとり・エインである。
4人組は3か月ほど地球で過ごした後一度自国に戻り、以降は1か月交代で常にだれかが地球にいるという状態が続いている。
エインとこうして直接会うのは初めてだが写真では何度か顔を見ている。
「在金羊国大使館全権大使を拝命いたしました、真柴晴彦と申します」
「魔術官筆頭・エインです」
握手を交わすと彼は手のひらからぽうっと光の玉を出して「いきましょうか」と歩き出す。
「少し特殊な場所なので気を付けてくださいね」
エイン魔術官が先導するその道でリヤカーを引きながらつまずくことが無いようにゆっくりと歩く。
薄暗く狭いトンネルのような空間を進むと頭を押さえられる瞬間や、地面が緩やかにねじれる場所、耳がツンと痛む場所まである。
見た限りでは手掘りのトンネルのようながさがさとした壁をした狭いトンネルのようであるのに、道がジェットコースターのようにねじれ曲がる。
(一体どうなってるんだ?)
何分歩いたかもわからずに戸惑っていると「あそこです」という声がする。
そこは大理石(地球と同じものかは知らないが俺の目にはそう見えた)が敷き詰められた広く質素な空間で、エイン魔術官の手から光の玉がふっと消えた。
「ようこそ、僕らの国へ」
どうやらここが異世界の玄関口らしい。
「それにしてもまさか全部手作業で運ぶとは思いませんでしたねー」
のほほんとしながら飯山さんが呟いた。
異世界との入り口となったため現在は厳重に警備されているこの駅の入り口は、1933年・昭和8年完成という古い建物で間口もあまり広くない。
無理やりなら通れなくもないだろうが、所有する私鉄や地元行政の『建物の破損に繋がりかねないことから車での通行は勘弁してほしい』という意向を汲み手作業での搬入となった。
そもそも異世界に電気やガスがない事は聞き取り調査で分かっており、大きな電化製品は持ち込んでも使えないから受け入れた……という大人の事情もあるが、そこは置いておこう。
仕事に使う道具も含めてアルミ製のリヤカーに乗せられるだけの荷物を載せての移動である。
一人一台リヤカーに荷物を積み、入りきらなかった分はリュックサックなどに詰め込んで運ぶ。
「木栖はずいぶん多めに持ってきているな」
リヤカーからあふれんばかりの荷物をゴム紐とブルーシートで抑え、さらにごついリュックを二つもしょい込んでいる木栖は他の面々と比べても明らかに荷物が多い。
「緊急時に使う装備品が少しかさばっているだけだ、人数分の防弾チョッキと鉄帽まであるからな」
「……一般人を前線に送ってるとでも思ってるのか?」
「不明な部分が多すぎるからな」
「防弾チョッキの世話にならない事だけを祈ろう」
持ち込める量に限界があるので大型火器は持ち込んでいなさそうだが、小銃や狙撃銃は持ち込んでいそうだ。
(一応先方に事情説明はしておこう)
友好のためにも余計な誤解はされたくない。
全員が荷物を降ろして準備を終えた頃、出入り口から一人の小柄な青年が現れた。
「大使館の皆様、お迎えに上がりました」
白髪に白くちいさな翼を持った彼こそが最初にこの国に現れた獣人のひとり・エインである。
4人組は3か月ほど地球で過ごした後一度自国に戻り、以降は1か月交代で常にだれかが地球にいるという状態が続いている。
エインとこうして直接会うのは初めてだが写真では何度か顔を見ている。
「在金羊国大使館全権大使を拝命いたしました、真柴晴彦と申します」
「魔術官筆頭・エインです」
握手を交わすと彼は手のひらからぽうっと光の玉を出して「いきましょうか」と歩き出す。
「少し特殊な場所なので気を付けてくださいね」
エイン魔術官が先導するその道でリヤカーを引きながらつまずくことが無いようにゆっくりと歩く。
薄暗く狭いトンネルのような空間を進むと頭を押さえられる瞬間や、地面が緩やかにねじれる場所、耳がツンと痛む場所まである。
見た限りでは手掘りのトンネルのようながさがさとした壁をした狭いトンネルのようであるのに、道がジェットコースターのようにねじれ曲がる。
(一体どうなってるんだ?)
何分歩いたかもわからずに戸惑っていると「あそこです」という声がする。
そこは大理石(地球と同じものかは知らないが俺の目にはそう見えた)が敷き詰められた広く質素な空間で、エイン魔術官の手から光の玉がふっと消えた。
「ようこそ、僕らの国へ」
どうやらここが異世界の玄関口らしい。
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