異世界大使館はじめます

あかべこ

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1:大使館を作る(日本編)

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医務官候補との面会が唐突に決まったのは1月も終わりの事だった。
「にしても随分急だな」
「ようやく調整がついたんだ、なんせ災害派遣経験があって総合診療も可能な人材を探すとなると難しかったからな」
「仕方ないだろう、医療水準もあまり期待できないし持病持ちもいる」
納村が婦人科系の持病持ちなので総合診療出来るほうが都合が良かった。
今回は防衛省の会議室で俺と木栖が医務官候補と面会し、納村は学会・嘉神と飯山さんは仕事のためオンライン会議ソフトを使っての参加となる。
さらに自衛隊病院や防衛省職員まで参列し、部外者である俺には威圧感すら感じる空間だ。
ガラガラと扉が開くと「失礼します」という声とともにメガネと白衣の人物が入ってきた。
「彼が医務官候補の柊木医師だ」
関係者が面接を取り仕切る間に、手元の資料を見返す。
柊木正人医師は九州にある自衛隊病院に籍を置く30代の外科医だ。
防衛医大卒だけあって身体能力にも優れているが、特筆すべきは災害派遣経験の多さだろう。
近年九州一帯は毎年のように豪雨災害に見舞われているがそれ故ほぼ毎年のように災害派遣され、活躍を見せている。
ちらりと再び柊木医師に目を向ける。
白衣の下には細身ながら筋肉のついた身体、銀縁のメガネには汚れ一つなく、受け答えは優しいが堂の入った受け答えからは自己主張のできる人柄をうかがわせる。
「では、ここからは真柴大使と木栖一佐にお任せしましょう」
司会役を務めていた男が俺と木栖に話を振ってくる。
木栖は軽く周りに頭を下げてから俺の名前を呼ぶ。
「真柴、聞きたいことは?」
「……今回の異世界への派遣についてご家族は?」
「両親も元空自ですから分かってくれています、妻子とは別れておりますので派遣決定となれば報告は致しますが特に反対はされないと思います」
「そうですか。ちなみに言語学習はお得意で?」
「勉強自体は嫌いなほうではありませんね、防医時代は英語に泣かされたものですがやれと言われればやりますよ?」
その受け答えには嫌味や悪意がなく、ただ己の意志の素直な表出のように響く。
木栖に「どう思う?」と耳打ちされて「少し内心が読みにくい顔をしているが良いんじゃないのか?」と返す。
そのあとオンラインで様子を見ていた納村と嘉神に交代して話をしてもらい、2人も『優しそうだしいいと思います』『子宮頸がん執刀経験あるなら大丈夫そう』『皆さんがいいなら良いと思いますよー』という事で意見がまとまった。
その場で柊木医師の大使館派遣が決まると、小さくこちらへ頭を下げた。
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