異世界ヤクザ -獅子の刺青を背負って行け-

万怒 羅豪羅

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第一章

第50話/Determination

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 戦場では海人族とヴァンパイアバットの加入で僕らの勢力が俄然有利に傾き、ダークエルフらは混乱状態となってもはや虫の息となりかけていた。

 その状況を見てルーチェは、「お、おのれ······奴等めぇ」「い、如何致します、ルーチェ様」「······致し方あるまい。”奴“を出せ!」「奴って······ま、まさか!?」「そうだ、だ!」「は、はいっ!」部下達はその場を離れるや慌ただしく動き出した。

 レックス達は敵のそんな動きを知らないで次々と敵を倒していき、(これなら行ける!)と勝利を確信しだした。


 その時、ドシーン!! 突然大地震が起きたかの如く地面が揺れだし、その場にいた全員が立っていられなかった。

 その後も何度か地面が揺れ、「な、何だ、一体!?」多くの人がパニックに陥った。

 その時「お、おい! あ、あれ!」誰かが言ったのでその方向を見たら、「なっ!?」突然巨大な魔物が僕らの前に姿を現した。

「な、何だあいつは?」とあちこちで言い出し、「あれは······も、もしや!?」「ハウル様、ご存知何ですか?」「あ奴は魔王配下の幹部の1人、ギガントじゃ!」「「ギガント!?」」僕と兄ちゃんの2人で奴の名前を叫び、その後「か、幹部の1人とは?」と兄ちゃんがハウル様に尋ねた。

「魔王の次に残忍で恐ろしい奴等の事で、あのギガントもその1人なんじゃ!」「そ、そんな奴が相手側に」「おのれ奴等め、とんでもない奴を魔王から借りおって」そんなやり取りをしているうちに、ギガントが拳を振り上げて攻撃を繰り出そうとしていた。

「っ! いかん、来るぞ!」「全員退避ーー!」兄ちゃんが叫んだが多くの者が思うように動けず、直撃を受けた者はいなかったが衝撃などで重軽傷を負ってしまった者が多数発生してしまった。 

 なおもギガントは攻撃を繰り出そうとしていたので僕が、「また来るよ!」と叫び、兄ちゃんが何も出来ないもどかしい顔をしていると、ハウル様が魔法で一時的にギガントの動きを止めてくれた。

「今のうちに体勢を立て直すんじゃ!」と仰ったので兄ちゃんは「全員後退だー! 動けるものは負傷者を連れて行くんだ!」と言い、全員がその指示に従い負傷者を伴って指令部近くまで後退した。

 その光景を見てルーチェは、「フッフッフッフッフッ、アーハッハッハッハッハッ! 見たか! 魔王様より遣わされしギガントの威力は!」と高笑いをしだした。


 後退した僕達は軽傷者以上の者を森の方へ後退させるようにした。その為戦力は大幅に落ちてしまった。

「まさかあんな奴を引き連れていたとは······」「厄介な奴を連れてきやがって」「とはいえ恐らく奴さえ何とかすれば、敵は戦意喪失するはずじゃろう」「ですが、あんな奴をこれだけの勢力でどうやって倒せば?」フィンラル様、ジルコニー校長、ハウル様が口にした事に対して兄ちゃんが弱気な感じで尋ねた。

 それも当然の事だ。ハウル様が一時的に動きを止めたが、それでも後退が間に合わずギガントの連続攻撃で全てのグループが多くの重軽傷者を出してしまい、残っている者も憔悴しきっている状態だった。

「確かに、何か突破口があれば良いのじゃが······」「突破口」ハウル様の言葉に僕も反応して考え出していた。

(確かに、これまでも村でのハイオークやハイトロルとの戦いの時にはベアーやハウル様が来てくれたから倒せたし、他の時も何かきっかけがあって解決してこれたけど······)と思ったところで周囲を見渡し、その場にいる人の数や状態を見て(とてもこんな状態じゃあギガントに太刀打ちなんて出来ないよなぁ)と感じ悔しがった。


 その時ズシン!「うわっ!」頭が重くなった感じがして思わず叫んでしまい、それから頭上を見上げたら、ベアーズが頭の上に乗っかっていて舌を出して息を切らしていた。

「べ、ベアーズ!?」僕がベアーズの名前を叫ぶとハウル様や兄ちゃんを始め、周囲にいた人が僕の方を見た。

「ベアーズ」「お主、来てしまったのか」兄ちゃんやハウル様もそれぞれ言葉を掛けた。

 そこでようやくベアーズは僕の頭の上から降り、チラッと僕やハウル様を見た後、「ガァーーーッ!」僕達の後ろ側に向かって吠えた。

 僕達がそちらを見ると、視線の先の森の中から······何とベアーとロックサイが現れたのだった。

「べ、ベアー! それに、ロ、ロックサイ!?」突然の2匹の登場に僕も驚き、当然2匹の事など全く知らない者はさらに驚き警戒しだした。

「お、お前コイツらにも援軍を頼んでたのか!?」僕がベアーズに聞くと、ベアーズは首を縦に振った。「お、お前って奴は、本当に······」凄いとしか言いようがなかった。

 ハウル様も2匹の登場に驚きはしたが、その2匹と上空に待機しているヴァンパイアバットを見て思案し、そして「これは、ひょっとするといけるかもしれぬぞ」と仰った。

 ハウル様のいけるかもしれないと仰った事にジルコニー校長が「いけるかもとはどういう事だ? ハウル」と尋ねた。


「奴の額に第三の目と言える役割を担っておる部分があるんじゃが、そこが奴の弱点なんじゃ」「ホントか!?」「うむ」

 確かにさっき奴の姿を見た時、額に目のようなモノを見掛けた。

「しかし、あんな所どんな攻撃も届かないのでは?」兄ちゃんが聞くと「じゃが奴を転倒させれば届くじゃろう」「て、転倒ってどうやって?」僕が聞くと、「そこで、にも活躍してもらうのじゃ」と言って先ほど現れた2匹と上空のヴァンパイアバットを見渡した。

「「え?」」全員が未だにハウル様の意図が分からず不思議がっていた。


 ハウル様の作戦はこうだ。

 まずギガントを広い場所まで誘い出す。次に奴の普通の目の周りをヴァンパイアバット達に飛び回ってもらい、その隙に魔法科の生徒や武力科の生徒の一部に奴の片方の足を一斉に攻撃してもらう。

 それで恐らく奴は攻撃された方の足を上げるだろうから、それを見て2匹とギルドの者、あと武力科生徒の中でがたいの良い者が反対の足に突進し、奴を転倒させる。

 そして転倒中か転倒後に額を攻撃して止めを刺すというものだ。その説明を聞いて全員が理解と納得をした。

 そしてそれぞれの役割分担を決め、最も重要である最後の止めを刺す役として、それほど傷を負ってなく、動けそうな僕と兄ちゃん、そしてジャックの3人が選ばれた。

 こうして僕達の最後の作戦が始まった······。
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