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見えない敵
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季節は夏で8月。
教室の温湿度計は32度、78%を指している。
この小学校にはエアコン設備がないので、教室の四方に扇風機を設置してなんとか暑さをごまかしている。
教室のベランダには、ゴーヤのグリーンカーテンが日陰を作っているが、時節生ぬるい風と一緒に独特な臭いを運んできて夏の暑さに加えて倦怠感を倍増させる。
「うわ、何この臭い。最悪!」
女子生徒の一人に同調するように、周囲の子供たちも次々に顔をしかめ、鼻を押さえる。
教室の空気は一気にどんよりとしたものに変わり、倦怠感の伝染が急速に拡大していく。扇風機が回る音とうるさい蝉の声だけが、やけに大きく響いていた。
孤川ひとりも、その暑さと臭いにやられていた。暑さでだるさが増す中、机に突っ伏して休憩していたひとりの頭上に、ふと声がかけられた。
「これ、どういうこと?」
前の席の女の子が不思議そうな顔で、彼の連絡帳を手にして問いかけてきた。ひとりはぼんやりと顔を上げ、連絡帳を受け取った。彼女が示すページには、様々な名前のハンコが押されていた。
「ねえ、ひとり君、ここに押されているハンコ、全部違う名前が押されてるんだけど、どういうこと?」
彼女は身体ごと椅子を引きづりひとりの机へ近づくと、身を乗り出してひとりの連絡帳の判子欄に人差し指を置く。
ひとりはその連絡帳を見つめ、そこに押されたハンコを確認した。
確かに、「孤川」の印は一つもなく、代わりにいくつものばらばらな名前が並んでいた。
なぜ、不規則な名字の判子が並べられているのか――
勤務している施設の職員がそれぞれのハンコを使用する決まりがあったからだ。
一瞬、どう答えるべきか分からずに黙り込んだが――
「俺、ふざけて色んなハンコを押すのが趣味なんだ」
ひとりは冷静を装って答えた。
しかし、その声は少し震えていた。
ひとりは連絡帳を急いで鞄にしまい、その場を去ろうとした。
だが、彼女は納得がいかないようで、さらに問い詰めてきた。
「でも、普通は親のハンコが押されてるよね? どうしてこんなに色々な名前があるの?」
突如、蝉の声が大きくなったような気がした。
たぶんこの頃からだったと思う。
周囲との間に見えない壁を感じるようになったのは。
―――――――――――――――――――
両親が離婚し、児童養護施設で育った孤川ひとりは、常に自分に劣等感を抱えていた。
ひとりの人生は、他人とは違うという自意識に満ちていた。
ひとりは周囲の目を気にしていた。
みんなが持っているもの、自分にはないもの。
それが何なのかを理解するにはまだ幼すぎたが、確かに感じるその差異が、彼の心に深い傷を残していた。
周りの子供たちが楽しそうに笑い合うのを見て、ひとりは自分だけが取り残されているような感覚に苛まれていた。
それから毎日、言語化できないような違和感が背後を這いずり回ってきた。
学校ではクラスメートたちが家庭の話題で盛り上がる中、ひとりだけが黙り込んでいた。
ひとりには語るべき家庭がないからだ。
その無言の時間が、彼の心にさらなる孤独を刻みつけた。
この違和感をどうにかしたいという思いが、ひとりを突き動かした。
ひとりは注目を集めることで、心の穴を埋めようとした。
悪目立ちすることが、ひとりにとって唯一の救いだった。
教師に怒られ、同級生たちに冷たい目で見られても、それはどうでもよかった。
重要なのは、その瞬間だけでも自分が誰かの注意を引いているという事実だった。
ある日、ひとりはクラスの授業中にわざと大声で歌い始めた。
教師が驚き、クラスメートたちが一斉に彼を見る。その瞬間、自身は確かに存在していると感じた。怒られても構わなかった。誰かの目に映っているという感覚が、何よりも重要だった。
また別の日、ひとりは体育の授業でわざと転んでみせた。痛みが走ったが、それ以上に周囲の反応が心を満たした。みんなが自分を見て、何かを言っている。
その視線が、ひとりの心の奥底にある孤独を一時的にでも和らげてくれる気がした。
こうした行動が続くうちに、ひとりは次第に「問題児」として周囲に認識されるようになった。
大人たちはひとりを困った子供だと思い、同級生たちは避けるようになった。それでも、ひとりは止まらなかった。注目を集めることでしか、自分の存在を確認できなかったからだ。
ひとりの心には、常に空虚な穴が開いていた。その穴を埋めるために、悪目立ちを続けた。それがどれほど虚しい行為であるか、自分自身も薄々気づいていたが、それでも止められなかった。それしか方法がなかったのだ。
こうして、孤川ひとりの小学生時代は過ぎていった。ひとりの心に残るのは、劣等感と孤独感だけだった。周囲の人たちとは違うということが、ひとりの心に深く刻まれていく。ひとりはいつも、自分だけが異質な存在だと感じていた。
何をしても、誰と話しても満たされない。
常に冷めきっている自分がいて、どんな顔して喋っているのかも明白だった。
それが本当に気持ち悪かった。
ひとりは、ただ毎日を生き抜くことに必死だった。
孤川ひとりの言動は次第にエスカレートしていった。
注目を集めるための行動が過激になり、周囲に迷惑をかけることも増えていった。最初はちょっとしたいたずらだったが、次第にその程度が上がっていった。クラスメートの持ち物を隠したり、教室で大声で叫んだりすることが日常茶飯事になった。
周囲の大人たちは、ひとりの行動に対して手を焼いていた。
彼の悪ふざけがエスカレートするたびに、教師たちは注意し、叱責したが、その効果は一時的なものに過ぎなかった。
ひとりは注目されることを求めており、叱られることすら彼にとっては目的を果たす手段に過ぎなかった。
ある日、ひとりは体育の授業中にわざと暴れ、クラスメートたちを驚かせた。教師が必死に止めようとするも、ひとりはその手を振り払ってさらに暴れた。
その日以来、彼の暴力的な行動が目立つようになった。
クラスメートたちはひとりをさらに避けるようになり、彼と彼の周りには次第に溝が深まっていった。
しかし、ひとりはそれを感じることなく、ますます過激な行動に走った。
ある日の放課後、彼は教室で一人の女子生徒の髪を引っ張り、大声で笑いながら彼女をからかった。
彼女は泣きながら逃げ出し、周囲の生徒たちは恐怖と不安を感じながらその光景を見ていた。担任の教師が駆けつけ、ひとりを叱責したが、彼は全く反省の色を見せなかった。
その後も、ひとりの行動はエスカレートし続けた。
ついにある日、彼は学校内で大きな暴力事件を引き起こしてしまう。
それはクラスの授業中に起こった。
ひとりは突然立ち上がり、教師の机を蹴り飛ばした。
教室が一瞬静まり返り、次の瞬間、ひとりは教師に向かって暴言を吐きながら突進していった。新米の女性教師だったため驚きと恐怖で動けず、ひとりの拳が彼女の顔に当たった。
教室はパニック状態になり、クラスメートたちは悲鳴を上げて逃げ出した。何人かの生徒はすぐに職員室に駆け込み、助けを求めた。教師たちが駆けつけたとき、ひとりはまだ暴れ続けていた。数人の教師が彼を押さえつけ、ようやく彼を静めることができた。
この事件は学校中に衝撃を与えた。
女性教師は顔に大きな傷を負い、精神的にも大きなショックを受けた。
その後、彼女は職務を続けることができず、辞職することになった。ひとりの暴力事件は学校内外で大きな問題となり、彼は転校を余儀なくされた。
孤川ひとりの行動は、言い表せない孤独感、それを自分の中で受け入れられず誰にも頼ることのできない不安定な精神から生まれたものだった。
その痛みを感じるたびに、彼は周囲の注目を集めることでその穴を埋めようとしていた。しかし、その行動が周囲に与える影響については全く考えなかった。自分の痛みだけがひとりの世界の中心であり、そのために他人を傷つけることも厭わなかった。
転校先の小学校でも、ひとりの行動は変わらなかった。新しい環境でも彼は同じように悪目立ちを続け、問題を引き起こした。大人たちはひとりの問題行動に対して何度も指導を試みたが、彼の心の奥底にある劣等感と孤独感を理解することはできなかった。
ただただ「施設の子どもだからしょうがない」で片付けられ、ひとりと向き合おうとする大人は誰一人としていなかった。
教室の温湿度計は32度、78%を指している。
この小学校にはエアコン設備がないので、教室の四方に扇風機を設置してなんとか暑さをごまかしている。
教室のベランダには、ゴーヤのグリーンカーテンが日陰を作っているが、時節生ぬるい風と一緒に独特な臭いを運んできて夏の暑さに加えて倦怠感を倍増させる。
「うわ、何この臭い。最悪!」
女子生徒の一人に同調するように、周囲の子供たちも次々に顔をしかめ、鼻を押さえる。
教室の空気は一気にどんよりとしたものに変わり、倦怠感の伝染が急速に拡大していく。扇風機が回る音とうるさい蝉の声だけが、やけに大きく響いていた。
孤川ひとりも、その暑さと臭いにやられていた。暑さでだるさが増す中、机に突っ伏して休憩していたひとりの頭上に、ふと声がかけられた。
「これ、どういうこと?」
前の席の女の子が不思議そうな顔で、彼の連絡帳を手にして問いかけてきた。ひとりはぼんやりと顔を上げ、連絡帳を受け取った。彼女が示すページには、様々な名前のハンコが押されていた。
「ねえ、ひとり君、ここに押されているハンコ、全部違う名前が押されてるんだけど、どういうこと?」
彼女は身体ごと椅子を引きづりひとりの机へ近づくと、身を乗り出してひとりの連絡帳の判子欄に人差し指を置く。
ひとりはその連絡帳を見つめ、そこに押されたハンコを確認した。
確かに、「孤川」の印は一つもなく、代わりにいくつものばらばらな名前が並んでいた。
なぜ、不規則な名字の判子が並べられているのか――
勤務している施設の職員がそれぞれのハンコを使用する決まりがあったからだ。
一瞬、どう答えるべきか分からずに黙り込んだが――
「俺、ふざけて色んなハンコを押すのが趣味なんだ」
ひとりは冷静を装って答えた。
しかし、その声は少し震えていた。
ひとりは連絡帳を急いで鞄にしまい、その場を去ろうとした。
だが、彼女は納得がいかないようで、さらに問い詰めてきた。
「でも、普通は親のハンコが押されてるよね? どうしてこんなに色々な名前があるの?」
突如、蝉の声が大きくなったような気がした。
たぶんこの頃からだったと思う。
周囲との間に見えない壁を感じるようになったのは。
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両親が離婚し、児童養護施設で育った孤川ひとりは、常に自分に劣等感を抱えていた。
ひとりの人生は、他人とは違うという自意識に満ちていた。
ひとりは周囲の目を気にしていた。
みんなが持っているもの、自分にはないもの。
それが何なのかを理解するにはまだ幼すぎたが、確かに感じるその差異が、彼の心に深い傷を残していた。
周りの子供たちが楽しそうに笑い合うのを見て、ひとりは自分だけが取り残されているような感覚に苛まれていた。
それから毎日、言語化できないような違和感が背後を這いずり回ってきた。
学校ではクラスメートたちが家庭の話題で盛り上がる中、ひとりだけが黙り込んでいた。
ひとりには語るべき家庭がないからだ。
その無言の時間が、彼の心にさらなる孤独を刻みつけた。
この違和感をどうにかしたいという思いが、ひとりを突き動かした。
ひとりは注目を集めることで、心の穴を埋めようとした。
悪目立ちすることが、ひとりにとって唯一の救いだった。
教師に怒られ、同級生たちに冷たい目で見られても、それはどうでもよかった。
重要なのは、その瞬間だけでも自分が誰かの注意を引いているという事実だった。
ある日、ひとりはクラスの授業中にわざと大声で歌い始めた。
教師が驚き、クラスメートたちが一斉に彼を見る。その瞬間、自身は確かに存在していると感じた。怒られても構わなかった。誰かの目に映っているという感覚が、何よりも重要だった。
また別の日、ひとりは体育の授業でわざと転んでみせた。痛みが走ったが、それ以上に周囲の反応が心を満たした。みんなが自分を見て、何かを言っている。
その視線が、ひとりの心の奥底にある孤独を一時的にでも和らげてくれる気がした。
こうした行動が続くうちに、ひとりは次第に「問題児」として周囲に認識されるようになった。
大人たちはひとりを困った子供だと思い、同級生たちは避けるようになった。それでも、ひとりは止まらなかった。注目を集めることでしか、自分の存在を確認できなかったからだ。
ひとりの心には、常に空虚な穴が開いていた。その穴を埋めるために、悪目立ちを続けた。それがどれほど虚しい行為であるか、自分自身も薄々気づいていたが、それでも止められなかった。それしか方法がなかったのだ。
こうして、孤川ひとりの小学生時代は過ぎていった。ひとりの心に残るのは、劣等感と孤独感だけだった。周囲の人たちとは違うということが、ひとりの心に深く刻まれていく。ひとりはいつも、自分だけが異質な存在だと感じていた。
何をしても、誰と話しても満たされない。
常に冷めきっている自分がいて、どんな顔して喋っているのかも明白だった。
それが本当に気持ち悪かった。
ひとりは、ただ毎日を生き抜くことに必死だった。
孤川ひとりの言動は次第にエスカレートしていった。
注目を集めるための行動が過激になり、周囲に迷惑をかけることも増えていった。最初はちょっとしたいたずらだったが、次第にその程度が上がっていった。クラスメートの持ち物を隠したり、教室で大声で叫んだりすることが日常茶飯事になった。
周囲の大人たちは、ひとりの行動に対して手を焼いていた。
彼の悪ふざけがエスカレートするたびに、教師たちは注意し、叱責したが、その効果は一時的なものに過ぎなかった。
ひとりは注目されることを求めており、叱られることすら彼にとっては目的を果たす手段に過ぎなかった。
ある日、ひとりは体育の授業中にわざと暴れ、クラスメートたちを驚かせた。教師が必死に止めようとするも、ひとりはその手を振り払ってさらに暴れた。
その日以来、彼の暴力的な行動が目立つようになった。
クラスメートたちはひとりをさらに避けるようになり、彼と彼の周りには次第に溝が深まっていった。
しかし、ひとりはそれを感じることなく、ますます過激な行動に走った。
ある日の放課後、彼は教室で一人の女子生徒の髪を引っ張り、大声で笑いながら彼女をからかった。
彼女は泣きながら逃げ出し、周囲の生徒たちは恐怖と不安を感じながらその光景を見ていた。担任の教師が駆けつけ、ひとりを叱責したが、彼は全く反省の色を見せなかった。
その後も、ひとりの行動はエスカレートし続けた。
ついにある日、彼は学校内で大きな暴力事件を引き起こしてしまう。
それはクラスの授業中に起こった。
ひとりは突然立ち上がり、教師の机を蹴り飛ばした。
教室が一瞬静まり返り、次の瞬間、ひとりは教師に向かって暴言を吐きながら突進していった。新米の女性教師だったため驚きと恐怖で動けず、ひとりの拳が彼女の顔に当たった。
教室はパニック状態になり、クラスメートたちは悲鳴を上げて逃げ出した。何人かの生徒はすぐに職員室に駆け込み、助けを求めた。教師たちが駆けつけたとき、ひとりはまだ暴れ続けていた。数人の教師が彼を押さえつけ、ようやく彼を静めることができた。
この事件は学校中に衝撃を与えた。
女性教師は顔に大きな傷を負い、精神的にも大きなショックを受けた。
その後、彼女は職務を続けることができず、辞職することになった。ひとりの暴力事件は学校内外で大きな問題となり、彼は転校を余儀なくされた。
孤川ひとりの行動は、言い表せない孤独感、それを自分の中で受け入れられず誰にも頼ることのできない不安定な精神から生まれたものだった。
その痛みを感じるたびに、彼は周囲の注目を集めることでその穴を埋めようとしていた。しかし、その行動が周囲に与える影響については全く考えなかった。自分の痛みだけがひとりの世界の中心であり、そのために他人を傷つけることも厭わなかった。
転校先の小学校でも、ひとりの行動は変わらなかった。新しい環境でも彼は同じように悪目立ちを続け、問題を引き起こした。大人たちはひとりの問題行動に対して何度も指導を試みたが、彼の心の奥底にある劣等感と孤独感を理解することはできなかった。
ただただ「施設の子どもだからしょうがない」で片付けられ、ひとりと向き合おうとする大人は誰一人としていなかった。
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