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発進!
しおりを挟む「お、王子!? 騎士団が半壊です! 四天王は分断され、苦戦状態であります! ……どうか撤退のご指示を!!」
「マジで!? ドラゴン騎士団は!?」
「……や、焼き鳥にされてしまいました」
「はぁ!?」
――くそ、使えないクズどもめ……ていうか開戦して30分しかたっていないぞ!
俺はリディアから貰った秘薬を持って立ち尽くしていた。
この戦いに撤退は無い。
撤退したら王に殺されてしまう……
「……毒親は選べないか。せめて与えられた仕事だけはキッチリ果たすか……」
――リディアをいじめたエリカをぶち殺してやる!!
俺は愛の秘薬を飲み干した!
**********
私は拡声器と遠見鏡で矢継ぎ早に指示を出す。
パグ太砲によって散り散りになった騎士団と四天王を追い詰める!
「補佐島民隊はバラけて、各もふもふ達のフォローをして!」
「戦闘もふもふは四天王をお願い! 全力全開でチリ一つ残さなくていいからね!」
「古の鳥さんは、空から襲いかかる虫けらを焼き尽くして! あ、レンさんと仲良くね!」
「戦闘島民さんは騎士団とは絶対一対一の戦いはしないで! 敵一人に対して6人で攻めて!」
身体の奥底から力が湧き上がる。
温かい力。
私はそれを開放した。
「みんなーー!! 絶対死なないでねーー!! ――ブーストレベルアップ!!」
島全体が光に包まれて、私の仲間達が限界を超えた強化を施された!
島民の怒号がここまで聞こえる。
「うぉぉぉぉぉぉーーーー!!」
「俺は島を守るぞ!!」
「姫様ばんざーい!!」
「おい、レベルが二倍になってるぞ!? 行ける、行けるぞ!!」
遠見鏡で私の仲間の勇姿が見える。
――これなら撃退できそうね……って、え!?
四天王の首を片手にハルトが私の元へ飛んで来た。
「御主人さま! 魔神が現れた! あれは島民では歯が立たない! 全もふもふ隊でやっつけるぞ!」
「……うん、邪悪なオーラを感じるわ。あれは……アレス王子よね? 悪魔に魂を売り渡したのね……私が引導を渡して上げるわ!」
「御主人さま!? ……ちょっと待って!」
私は広場に突然出現した魔神アレスの元へ走っていった。
広場では、もふもふ達と魔神アレスが激戦を繰り広げていた。
ハルトが私を守るように前に出てくれる。
「御主人さま! あれは……魔神だ。俺たちと同じ存在と思ってくれていい。この世界の理を壊すほどの強大な力を持った存在……くそ、この世界には御主人さまと同じ力を持った奴がいるのか!?」
「醜い姿になっているけど、あれはアレスね……やっと私を追放した奴に出会えたわ……」
「ご、ご主人さま?」
「おーほほほほ!! 私を陥れた奴らは絶対許せないわ! ハルト! もふもふ達よ、道をあけなさい!」
魔神アレスが戦いの手を止めて私を睨みつけた。
もふもふ達は戸惑いながらも、道を空けてくれた。
身体中がボコボコしていて醜い姿の魔神アレスが私に近づいてきた。
「お、お前のせいだ……お前がいなければ……俺は……ぐふっ……俺は、リディアと幸せになれたのに……許さん、許さんぞーー!!」
私はため息を吐いた。
「はぁ……とんだ勘違いよ? あの女狐に騙されたあんたが悪いのよ! あんたは私を追放したわ……こっちが許さないわよ! 地獄で悔い改めなさい!」
「ぐふふふ……そんな貧弱な身体で何ができる……俺の目の前から消えされ!!」
親が決めた婚約者。
バカな王子だけど、しょうがないと思っていた。
追放されて分かったわ。私は……本当にこいつが大嫌いだったのね!
いつも上から目線でバカにして……わがままばかりで……挙げ句、浮気に追放。
ムカつくわ!
でも大丈夫。私にはハルトがいるもん! 自分でケジメをつけるわ!
「ブースト、ブースト、ブースト、ブースト、ブースト、ブースト、ブースト、ブースト、ブースト、ブースト、ブースト……」
「ははは! ブツブツうるさいぞ!」
アレスは襲いかかってきた。
今にも飛び出して来そうなもふもふ達を心で静止させる。
ハルトが私の静止に抗って、私の元へ来ようとする。
――ありがと。でも大丈夫。
私は襲いかかってきたアレスに平手打ちした。
「――ぶほぁ!?」
きりもみ回転しながら地面へ倒れてしまうアレス。
私はアレスへ近づく。
「おーほほほ! 無様ですこと……元王子は土下座が好きですか? 地面が好きなようですね? 存分味わって下さい!」
顔面を足で叩きつけた。
ハルトが呟く。
「ご、御主人さま? 自分にブーストを?」
私は何度も蹴りつけた。
蹴りつける毎に地震のような揺れが島全体で起こる。
「おーほほほ!! これは私の分よ……そして、ここから先は私の仲間を傷つけようとした罰よ!」
ぐったりした魔神アレスの髪の毛を掴み、無理やり立たせる。
アレスは意識朦朧になっていた。
「う、うう、お、俺が悪かった……い、命だけは……な、なあ、元婚約者だろ? 俺の事好きだったんだろ? お、俺も反乱軍に入れてくれ……なあ頼むよ……」
――豚が言葉を喋っているわ!
ハルトに見てもらうために綺麗にした爪を脳天に指した。
「ぎょわ!? ち、力が……」
脳天から緑の血が吹き出す。
「あんたで一人目ね。後はリディアとハデス王を潰すわ。……私の宣戦布告をアイツらに届けてもらうわ!」
「へ!?」
「――召喚ブースト魔法! 飛んでけ!!」
私の前に大きな渦のような力が発生する。
力はアレスの身体を巻き込んですごい早さで空高く飛んで行ってしまった!
「ぎゃーーーー!!! 死ぬ、死ぬから!!!」
「ばいばーい!」
私は大きく手を振った!
静止が解けたハルトが飛んできた。
無理やり静止を解こうとしたから、身体から血が出ている……
「エリカーー!!」
私をきつく抱きしめてくれた。
「……ハルト、ごめんね。私が傷つけちゃって……」
「バカ! 俺の事なんてどうでもいい! エリカが無事なら……それで……」
「あ、泣いてる? へへ、嬉しいよ。やっとエリカって呼んでくれたね?」
「く、は、恥ずかしい……」
私は人間ハルトに顔をスリスリしながら強く抱きしめ返した。
――うさぎの時と同じ匂いがする。……落ち着くわ。
もふもふ達も集まって来た。
島民達も徐々に集まって来た。
「おいおい! もっといちゃいちゃしろよ!」
「ばうばう!」
「わふんわふん!」
「にゃにゃにゃ!? わんこ達もいちゃいちゃしてるにゃん!?」
「なんにせよ無事撃退できて良かったハム。敵は意外と強大だったハム……」
「ハリ?」
「タヌ?」
「はぁ……エリカさん、超強いよね……ていうか、また王国って攻めにくるのかな?」
――そうよ、今はいちゃいちゃしている場合じゃないわ!
ハルトが私の腕の中でもがいている。
「エ、エリカ……く、苦しい……」
あ、ヤバい! きつく抱きしめ過ぎちゃった!
私はハルトを離して、もふもふ達と向かい合った。
「みんな、ありがとう! 無事にこの島を守れたわ! ……でも、いまだ王国の脅威は残っているの。……私はこのまま王国に攻め込んで、ハデス王をこの世から消そうと思ってるわ! ……みんな、また力を貸して!」
島民達が歓声を上げる。
「「うおぉぉぉーー!! 姫様ばんざーい!!」」
私は地面に手をつける。
島の核に力を届かせる。
大きな地震が起きた。
「うお、なんだ!? 地面が動いているぞ!」
「おい、外壁の形が変わったぞ!?」
「な、なんだ!? 何が起きてるんだ!」
「ふぉふぉふぉ、これは伝説のあれか? あれじゃな? 懐かしいワイ!」
「おい、クソドラゴン! 教えろよ!」
「焼鳥にするわよ!」
島の振動が止まった。
ハルトがうさぎバージョンになって私の肩の上に乗った。
恥ずかしがってるのね!
「行くわよ……『移動要塞もふもふ島』発進!!!」
島が戦艦のような要塞に変化して、特殊な浮力を得て、陸地に向かって移動し始めた。
もふもふ島は陸地を破壊しながら王国城へ目指して行った!
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