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番外編〈第一部 終了ボーナストラック〉
番外編 メイドズ⭐ブラスト episode1
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朝の静かな静寂が───。
一人のメイドの叫び声によって打ち破られた。
「どうしてこうなったのよぉぉぉ!」
「どうしてって。金でしょ、金」
洗濯や掃除、早朝トレーニングなど各自ひと仕事を終えたメイド部屋で朝食のテーブルを囲んでいた私、マリン・ハーランドはため息混じりにそう答えた。
「だって! ビキニアーマーなのよ! あんなの着て戦えるわけないじゃないのよぉぉぉ~!」
オムレツの皿に突っ伏して叫んでいるのは同僚メイドのモニカ。
「仕方ないじゃない。今回の大会スポンサーがノーザン商会なんだから。スポンサーの意向に従うしかないわよねぇ。しかも今回の開催地はイスキアなんだし。イスキアが公認しちゃった以上どうにもならないわよ」
──大会とは。
このユッカ連合公国で年一回開かれる闘技大会のことだ。
我が西のカルゾ公国から北のゲンメ公国、東のエスト公国、南のイスキア公国……と四公国が持ち回りで開催されている伝統的な、いわばお祭り的な大会である。
しかし、年々新しい闘技会場の建設だ、何だかんだと経費はかさみ──伝統的な国技というよりも興行的な側面……優勝者の予想クジだの、推しの選手への投資だのが目立つようになってきた。
そして、今年スポンサーに名乗りを上げたのは、このユッカ連合公国より遥か北に位置するグルナッシュ帝国に拠点を置くノーザン商会。
ここ数年、薄利多売でユッカ国内でものしあがってきている悪名高き成り上がり商会である。
「……出場者全員、ビキニアーマーの着用義務づけが条件っていうのがまたえげつないわね。
女闘士のブロマイドの売り上げアップと自分の所が開発しているアーマーを売りつけたいという意図を隠そうともしないのは、まぁ潔いかもしれないけど……」
「そりゃ、マリンはいいわよ!」
私の言葉を遮って、モニカはドスッとサラダチキンにフォークを突き立てて喚いた。
「ムダにデカい乳してる人はいいわよね! あたしみたいなペッタンコ、パッド盛ってて詰めても寄せたとしても──あんな際どいアーマー!貧乳をどうやっても隠せないじゃないのよぉぉぉ!」
「あ、そこ……? なんか──ごめんね」
モニカの勢いに押されて私は思わず謝った。
モニカのAAカップコンプレックス。
長年の付き合いで刺激すると厄介なのは身に染みている。
「大丈夫よ、モニカ」
そこに音もなく現れたのは、銀縁眼鏡をかけたロングヘアな知的美女。
「げ! パロマ」
彼女は我がカルゾ公国一の頭脳を誇る天才だが、中身は腐った思考のマッドサイエンティストである。関わるとロクなことはない。
「ほら。大会の規約を読むと必ずノーザン商会のアーマーを使用すること、とは書かれてはいないわ。ということは自前のビキニアーマーでも良いってことでしょ?」
ニタァとパロマは私たちに微笑んだ。
ぞわわわ……っ!
それを見た私とモニカに悪寒が走る。
「自前って……もしかして──?」
「そ、今回のビキニアーマー。私が作って差し上げるわよ。この屋敷のメイドの分は全員!」
「「絶対にイヤぁぁぁぁぁぁ~!!」」
パロマの台詞に私とモニカの全力の絶叫が邸内に響き渡った。
一人のメイドの叫び声によって打ち破られた。
「どうしてこうなったのよぉぉぉ!」
「どうしてって。金でしょ、金」
洗濯や掃除、早朝トレーニングなど各自ひと仕事を終えたメイド部屋で朝食のテーブルを囲んでいた私、マリン・ハーランドはため息混じりにそう答えた。
「だって! ビキニアーマーなのよ! あんなの着て戦えるわけないじゃないのよぉぉぉ~!」
オムレツの皿に突っ伏して叫んでいるのは同僚メイドのモニカ。
「仕方ないじゃない。今回の大会スポンサーがノーザン商会なんだから。スポンサーの意向に従うしかないわよねぇ。しかも今回の開催地はイスキアなんだし。イスキアが公認しちゃった以上どうにもならないわよ」
──大会とは。
このユッカ連合公国で年一回開かれる闘技大会のことだ。
我が西のカルゾ公国から北のゲンメ公国、東のエスト公国、南のイスキア公国……と四公国が持ち回りで開催されている伝統的な、いわばお祭り的な大会である。
しかし、年々新しい闘技会場の建設だ、何だかんだと経費はかさみ──伝統的な国技というよりも興行的な側面……優勝者の予想クジだの、推しの選手への投資だのが目立つようになってきた。
そして、今年スポンサーに名乗りを上げたのは、このユッカ連合公国より遥か北に位置するグルナッシュ帝国に拠点を置くノーザン商会。
ここ数年、薄利多売でユッカ国内でものしあがってきている悪名高き成り上がり商会である。
「……出場者全員、ビキニアーマーの着用義務づけが条件っていうのがまたえげつないわね。
女闘士のブロマイドの売り上げアップと自分の所が開発しているアーマーを売りつけたいという意図を隠そうともしないのは、まぁ潔いかもしれないけど……」
「そりゃ、マリンはいいわよ!」
私の言葉を遮って、モニカはドスッとサラダチキンにフォークを突き立てて喚いた。
「ムダにデカい乳してる人はいいわよね! あたしみたいなペッタンコ、パッド盛ってて詰めても寄せたとしても──あんな際どいアーマー!貧乳をどうやっても隠せないじゃないのよぉぉぉ!」
「あ、そこ……? なんか──ごめんね」
モニカの勢いに押されて私は思わず謝った。
モニカのAAカップコンプレックス。
長年の付き合いで刺激すると厄介なのは身に染みている。
「大丈夫よ、モニカ」
そこに音もなく現れたのは、銀縁眼鏡をかけたロングヘアな知的美女。
「げ! パロマ」
彼女は我がカルゾ公国一の頭脳を誇る天才だが、中身は腐った思考のマッドサイエンティストである。関わるとロクなことはない。
「ほら。大会の規約を読むと必ずノーザン商会のアーマーを使用すること、とは書かれてはいないわ。ということは自前のビキニアーマーでも良いってことでしょ?」
ニタァとパロマは私たちに微笑んだ。
ぞわわわ……っ!
それを見た私とモニカに悪寒が走る。
「自前って……もしかして──?」
「そ、今回のビキニアーマー。私が作って差し上げるわよ。この屋敷のメイドの分は全員!」
「「絶対にイヤぁぁぁぁぁぁ~!!」」
パロマの台詞に私とモニカの全力の絶叫が邸内に響き渡った。
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