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第二部

第5話 母の失踪!

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「いや、ゲームの話は良いや。最初の質問に答えてもらえるとありがたいんけど?ここへはどうやって来たんだ?」
 俺は話題を引き戻した。
 これじゃちっとも会話が進まない。

「ここへか」
 ジッとカップを見つめてマルサネは言った。
「突然、あたしの母さんにリツコもあたしも呼ばれたんだ」
「ふーん……」
 へぇ、母さんの友達の娘ってことなのか。母さんのことをリツコと呼び捨てにしてるのは、お国柄かな。文化の違い?

 俺も、高校生の息子だから母親の交遊関係を全て把握してる訳じゃないしな……。
 姉ちゃん達なら聞いてるのかも?
 外国人の友人が出来たなんてニュースなら、母さんは喜んで喋りそうなものだけど……。

「リツコと久しぶりに逢って、気がついたらココに居た。それ以上のことはあたしにもわからない」
「……うーん。もうちょっと詳しく教えてもらえないかな?」
「詳しく、か。そう言われると困ったな。……あたしにもわからないことが多いんだ。ブラッディムーンの魔力のせいだと思う」
 俺はマルサネの言葉に頭を抱えた。

 出た出た!
 魔力、ときましたよ。

 はぁ……中二病の知り合いって、俺あんまり居ないんだよな。
 この手のタイプ、どうやって扱ったらいいんだろう……。

 あれか、適当にあわせてやればいいのか?
 ◯◯星からやってきた、◯◯星人ですとか言い出したらどうする、俺……。


「えっと……じゃ、普通に住所とか教えてもらえる?」
「住所?あぁ、あたしも逆にカナタ、お前にも色々聞きたいことがあるんだが……まぁ、いい。あたしの住所はユッカ連合公国のエスト領中央区、オーリオ通りロンバルディア街区8、ゲンメ公領地だ」
「……えっと、それって何処の国かな?アジアのどの辺?」

 ユッカ連合公国?やっぱり外国人か!
 でも、なんとなく住所の感じはアジアっぽくないな……。
 
 俺の知らない紛争地域か、何か新しく出来た国だろうか。Go◯gle先生に教えてもらったら出てくるかな?
 俺は机の下でスマホ検索した。

 ……バルト連合公国しか出てこない。ユッカってどこだ??
 ユッカ……地名……検索!
 植物しか出てこねぇぇぇ!! 

 
「ん?アジアって何だ?」
 眉間にシワを寄せて考え込むマルサネ。

 うーん。日本人はアジアっていうけど、マルサネの国の現地の人はアジアという地域名は言わないのかなぁ。

「うーん、ほらユーラシア大陸のどの辺、とか」 
「ユーラシア大陸って何だ?」
 首を傾げるマルサネ。

「あぁ、わかったぞ!カナタ。ひょっとしてお前……」
「ん?」
 突然、マルサネの顔が輝いた。
 何か思い当たるところがあったようだ。ひょっとしてユーラシアじゃなくて、南米とかミクロネシアとかだったんだろうか。

「……あたしと一緒であんまり学校にちゃんと行ってないんだろ?」
「は?」
 俺は突然、猿娘に残念なものを見るような視線を向けられ、肩をたたかれた。
「お前、見た感じ弱そうだしな。あたしが言うのもなんだが武術が無理なヤツは勉強だけはちゃんとした方がいいと思うぞ……うん」
「ハイ~?」
  
 何を言われたのか理解できず、俺がフリーズしていたら、
「ただいま~!」
「あ~疲れた。ちょっと、奏大!お風呂入れてよぉ」
 姉ちゃん達が帰って来た。

「あら?お客様?」
 リビングのドアを足で開けた和奏姉ちゃんが、マルサネに気づいてニッコリする。その後ろの歌音姉ちゃんはニヤニヤしてた。

「あぁ、邪魔をしている」
 マルサネは平然とお茶をすすって姉ちゃん達に挨拶をした。

 何だか、本当に動じない娘だ……。

「何?奏大の彼女?」 
 歌音姉ちゃんが俺を廊下に手招きしてとんでもないことを言った。

「なわけないだろ!母さんの客だよ!!」
 俺は大きな声で反論した。
「ったく、うるさいわねぇ。だからあんたはモテないのよ」 
 脱いだ靴下を俺に投げつけて和奏姉ちゃんが言う。

「いつも言ってるだろ?俺は洗濯機じゃない!自分で片付けろ!」
「ハイハイ、奏大のクセに生意気言うんじゃないわよ」
 でも悲しいことに習慣で投げつけられた靴下を裏返し、ランドリーboxに入れるシンデレラのような俺。

 うぅっ、こちらを見るマルサネの好奇心一杯の視線が痛い……。

「で、肝心のママはどこにいるのよ?」
 と口を尖らせて和奏姉ちゃんが言った。

「それが……、連絡もとれなくて。何処にいったかわかんねぇんだ。なんか聞いてないか?」

「え?なにそれ……」
「知らないわ」 
 二人は口を揃えて言った。
 本当に知らないらしい。姉ちゃんたちも心当たりがないなら、一体何処へ?

「まぁ、ママも一応独身なんだし、色々あるんじゃないの?」
 クールに歌音姉ちゃんが言う。
「そーよ。もう、子どもじゃないんだから。奏大はいつまでもたってもママっ子ねぇ」
 偉そうに言うのは和奏姉ちゃん。

「……それは、俺だってもそう思うけどさ。でもおかしくないか?これ見ろよ」
 キッチンの定位置にある母さんのカバンとスマホを俺は指さした。

「何にも持たずに行くなんておかしくないか?」
「それは……変ね」
 俺の言葉に、和奏姉ちゃんの顔がスッと険しくなった。
「ちょっと、ヤバくない?そういえばママのいつもの靴、玄関にあったわね」
 歌音姉ちゃんも真面目な顔になり、自分のスマホと母さんのスマホを弄る。

「メッセージとかもスケジュールも特に入ってないわ」
 ガッカリしたように歌音姉ちゃんが言う。
「奏大……どういうことよ?」
 キツい口調で和奏姉ちゃんが俺を問い詰めた。

「俺が知るかよ!だからちゃんと俺の話聞いてくれよな。もしかして、母さんに呼ばれたって言ってるあの娘が知ってるかもしれないんだけど……」
 俺はリビングで、興味深そうにテレビを見ながらお茶を飲むマルサネに視線を向けた。
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