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番外編〈第一部 終了ボーナストラック〉
番外編 カイロス時間~有華国嫁取事情~part1
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「おめでとうございまぁす」
パパパッパパーン!
「へ?」
いきなり、クラッカーを浴びせかけられて俺は動揺した。
気がつくと見渡す限り、どこまでも真っ白な世界に俺は立っていた。
ついさっき、研究室から割り当てられた工房の自室に戻ってきたはず……。
「ここは……どこだ?」
「それを知ってどうするのさ」
クスクス笑いがふってきた。
「なんだお前……ヴィンセント……じゃないな?」
俺は目の前の眩い金髪、冷たい整った美貌の白いトーガを纏った男を睨みつけた。
目鼻立ちは見慣れた俺の幼馴染にそっくりだが、雰囲気がまるで違う。
「ヤダ!もうわかっちゃったの?」
目の前のヴィンセントにそっくりな男の瞳が、邪悪な禍々しさを感じさせる魔物めいた紫色に光った。
「全然違うぞ」
「どこが?」
「喋り方も表情も雰囲気も……だな」
「ふん、つまんないの」
ぽん、と手を打ち鳴らすとヴィンセントもどきは一回転した。すると、ほっそりとした長い前髪をうねらせた美少年に姿が変わる。
「ボクはカイロス。ここのタイムキーパーだよ」
紫色の瞳を禍々しく光らせて、異様に赤い唇を妖しく舐め回しながら少年は名乗った。
「は?カイ、ロス?」
俺は記憶を手繰る……が、何も引っかからない。
「おめでとう。君は映えある時の旅人に選ばれましたぁ!」
妙なウキウキしたような口調でカイロスと名乗った少年は、俺の肩をバシバシ叩く。
「やめろ。俺にはさっぱり意味がわからん」
俺は冷たく振り払った。
「もう、冷たいなぁ。じゃあ僕も教えてあげないよ。君はこの大陸一の天才ウィルブラン・エストでしょ?自分で考えて」
「考えろって……お前が胡散臭い魔物だとかそういう事か?」
「ブブー。大ハズレ~」
「じゃあ何?」
「さぁてね。僕のことは時を司る神、なんて呼ぶ輩もいるよ?」
「あいにくと俺は無神論者だ」
俺は首をすくめて答えてやった。
「そうなんだ、残念。それは人生の半分を損してるね。神様信じないと大抵のイベントや祭りが楽しめないよ?」
「別に俺は不都合はない」
「はい、もうタイムアップ!時はカネなり~ってね。もう、行ってもらうから。悪いけど君のそのチートな能力は邪魔だから預かっておくよ」
カイロスが俺に向かって手をかざすと同時に、俺の身体は激しい脱力感に襲われた。
「おい、ちょっと待て……!」
俺は反射的に目の前のカイロスに『力』を集中させようとした。
が、何も起こらない。
「無駄だよ。力は貰ったって言ったでしょ」
「……!」
「はい、いってらっしゃーい。せいぜい楽しんできてねぇ」
ヒラヒラと笑顔で手を振るカイロス。
「ちょ、待てよ!」
どこかで聞いたことのある台詞を吐いた所で、俺の記憶はブラックアウトしたのだった。
パパパッパパーン!
「へ?」
いきなり、クラッカーを浴びせかけられて俺は動揺した。
気がつくと見渡す限り、どこまでも真っ白な世界に俺は立っていた。
ついさっき、研究室から割り当てられた工房の自室に戻ってきたはず……。
「ここは……どこだ?」
「それを知ってどうするのさ」
クスクス笑いがふってきた。
「なんだお前……ヴィンセント……じゃないな?」
俺は目の前の眩い金髪、冷たい整った美貌の白いトーガを纏った男を睨みつけた。
目鼻立ちは見慣れた俺の幼馴染にそっくりだが、雰囲気がまるで違う。
「ヤダ!もうわかっちゃったの?」
目の前のヴィンセントにそっくりな男の瞳が、邪悪な禍々しさを感じさせる魔物めいた紫色に光った。
「全然違うぞ」
「どこが?」
「喋り方も表情も雰囲気も……だな」
「ふん、つまんないの」
ぽん、と手を打ち鳴らすとヴィンセントもどきは一回転した。すると、ほっそりとした長い前髪をうねらせた美少年に姿が変わる。
「ボクはカイロス。ここのタイムキーパーだよ」
紫色の瞳を禍々しく光らせて、異様に赤い唇を妖しく舐め回しながら少年は名乗った。
「は?カイ、ロス?」
俺は記憶を手繰る……が、何も引っかからない。
「おめでとう。君は映えある時の旅人に選ばれましたぁ!」
妙なウキウキしたような口調でカイロスと名乗った少年は、俺の肩をバシバシ叩く。
「やめろ。俺にはさっぱり意味がわからん」
俺は冷たく振り払った。
「もう、冷たいなぁ。じゃあ僕も教えてあげないよ。君はこの大陸一の天才ウィルブラン・エストでしょ?自分で考えて」
「考えろって……お前が胡散臭い魔物だとかそういう事か?」
「ブブー。大ハズレ~」
「じゃあ何?」
「さぁてね。僕のことは時を司る神、なんて呼ぶ輩もいるよ?」
「あいにくと俺は無神論者だ」
俺は首をすくめて答えてやった。
「そうなんだ、残念。それは人生の半分を損してるね。神様信じないと大抵のイベントや祭りが楽しめないよ?」
「別に俺は不都合はない」
「はい、もうタイムアップ!時はカネなり~ってね。もう、行ってもらうから。悪いけど君のそのチートな能力は邪魔だから預かっておくよ」
カイロスが俺に向かって手をかざすと同時に、俺の身体は激しい脱力感に襲われた。
「おい、ちょっと待て……!」
俺は反射的に目の前のカイロスに『力』を集中させようとした。
が、何も起こらない。
「無駄だよ。力は貰ったって言ったでしょ」
「……!」
「はい、いってらっしゃーい。せいぜい楽しんできてねぇ」
ヒラヒラと笑顔で手を振るカイロス。
「ちょ、待てよ!」
どこかで聞いたことのある台詞を吐いた所で、俺の記憶はブラックアウトしたのだった。
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