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番外編〈第一部 終了ボーナストラック〉
番外編 ゲンメメイド:ルーチェ ~橙色のマント~
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「勝者、イスキアのバルレッタ!!」
うわぁぁ……ん!!
ユッカ連合公国、イスキア領の海に近い中央公園に特設されたみかん色に彩られた闘技会場の中で、観客の興奮した歓声が響き渡った。
今年のオレンジフェスティバルの開催地は南方イスキア公領。ユッカ国内外からの観光客で普段は閑静な中央公園付近はかつてないほどの賑わいをみせていた。
闘技大会は後半にさしかかり、観客のボルテージはうなぎのぼり。この戦いの次はいよいよ決勝戦だ。
審判の旗がバルレッタと呼ばれた女闘士の方に上がり、バルレッタは得意そうに右手を挙げた。
地元の開催地出身でもある彼女には一際大きな歓声があがる。
バルレッタはまだ若く、大柄な女でよく筋肉が発達したしなやかな身体をした女闘士だ。
その三白眼の鋭い灰色の目を油断なく光らせて、観客を見回すと、この祭の特徴でもある「報酬」を芝居がかった様子で宣言した。
「あたしはコイツの手足を貰うよ!」
わあっと場内がどよめく。
オレンジフェスティバルでは勝者は「報酬」として、対戦相手から命以外のもの……髪の毛、衣装、宝飾品、時には恋人までも……を敗者に要求することが出来た。
何を賭けて戦うか。
ユッカ国内の頂点に立つ女闘士が決まる伝統ある大会が、女達が物欲を丸出しで戦うえげつない大会になりかわってしまっていたが、それゆえの必死さで盛り上りを見せ、「報酬」もこの大会の売り物の一つのようになっていた。
「……」
負けた、まだ小さな少女のようにも見える小柄な娘は闘技場の真ん中でうつ伏せたまま、ピクリとも動かない。
それを見て、バルレッタの薄い唇が酷薄そうにニッとつりあがった。
先程の試合。前半から身軽に飛び回る小柄な娘に、明らかにバルレッタの方が押されていた。
それが突如、娘の動きが止まったところをバルレッタが場外に叩きつけ、呆気なく勝敗が決した。
些か不自然さはあったがそこは地元開催出身者。バルレッタを追及する者はいない。
バルレッタが、負けた娘に近寄った。
会場はシン!と静まり返り、観客は可憐な少女の手足がへし折られるところを、今か今かと固唾をのんで見守った。
「待って下さい」
突如、冷静な声が割り込んだ。
「ルーチェ!」
引き締まった身体つきの若い容姿端麗な女闘士が現れ、観客が我にかえったように沸き返る。
「バルレッタは痺れ薬で動きを封じた。報酬は無効よ」
「何を証拠に!」
バルレッタがルーチェと呼ばれた女に詰め寄る。
「マリン!痺れ薬が使われたと証言できるか?」
審判がうつ伏せている娘を抱き起こした。
「……」
マリンと呼ばれた娘は微かに口をパクパクさせるばかり。声を発することができないようだ。
「証言不能!マリンから毒は確認できない」
審判は淡々と告げた。
「何を言っているの?その子、明らかに痺れてるじゃない!」
ルーチェは審判をキッと睨みつけた。
「たとえ、そうだとしても、勝ちはあたしだよ。チャンピオンさん。油断したその小娘の自業自得さ」
ルーチェの視界にバルレッタがズイっと割り込む。
「毒の使用は禁じ手のはずよ」
二人の女闘士は睨みあった。
「両者、やめよ!今回のバルレッタの報酬は保留だ。決着は次の決勝戦でつけよ」
高座からつまらなさそうに成り行きを見ていた今大会の主催者、イスキア公ラマンドロの言葉が陰々と響く。
この男。長身で浅黒い肌、黒い短髪、そこそこ精悍な見てくれの施政者だが、その細く冷たく光る瞳が見る全員に蛇を想起させるため、蛇公と呼ばれている。
そのラマンドロが無言でその蛇のような眼差しをルーチェとバルレッタに向けた。
ルーチェと不服そうなバルレッタは鶴の一声ならぬ、蛇のひと睨みで黙って頭を下げ、それぞれに与えられた控え室へ戻って決勝に備えた。
半刻後。
前座の芸人たちが、宙返りをしてみたり、ドラムロールから失敗をして客の大喝采を受け、会場が盛り上がったところで、お待ちかねの試合がはじまった。
北方ゲンメ地方から今年も勝ち上がってきた前回チャンピオンのルーチェと、地元イスキアのバルレッタの対戦に会場のボルテージも最高潮だ。
審判の呼び出しに派手なコスチュームで登場した大柄なバルレッタは、見事に盛り上がった胸や谷間を惜しみなく晒し、観客の、とりわけ男たちの下卑た歓声を浴びていた。
ルーチェも小振りながら形のよい胸を軽鎧に押し込み、光沢のあるみかん色のマントを翻し、スカートからすんなりと伸びる手足からこぼれ落ちる清廉な色気を振りまいて、こちらも熱狂的な観客の喝采を浴びる。
「このでしゃばり女!そのすました面を切り刻んでやるわ」
バルレッタは試合会場に飛び降りるなり、ほえたてて悪役ヒールとしては充分に客を煽った。
そして、審判の合図も待たずルーチェに向かって一直線に大剣を振り上げる。
ルーチェはそれを冷静に真っ正面から受け止め、軽く受け流した。
「さっきはよくも邪魔をしてくれたな。クソ女」
バルレッタは剣を振り回しながらしきりと威嚇する。
「うるさいわね……」
ルーチェは体重をかけて打ちかかってくるバルレッタの切っ先を受け流しながら、隙を狙って素早く剣を突きいれる。
「ちっ……」
かすり傷だが、バルレッタの頬から血が滲んだ。
大した傷ではないが、血の色を見てバルレッタは逆上する。
「くらえ!」
吠えながらバルレッタは胸の前で剣を構えてルーチェ目がけて突進する。
ルーチェは長い足から見事な蹴りを繰り出し、バルレッタの大剣をその手から叩き落とした。
剣を振り落とされてもなお、猪のように突進してくるバルレッタを素手で受け止め、ルーチェは軽々とその女猪のようなごつい身体を投げ飛ばす。
実は格闘戦はルーチェの最も得意とするところだった。
無様に地面に転がされたバルレッタは何か叫んだかと思うと、粉状のモノを必死にルーチェの顔面に投げつける。
素早くルーチェはマントを翻し、それで顔面をガードした。
そして、神業のようにバルレッタの背後に回り込むと押さえこみ、その細腕で首を締め上げる。
「折るわよ」
ルーチェの静かな低い声にバルレッタが必死で両手を振り回す。
「参った!!」
「わあぁっ……!」
「ルーチェの勝ちだ!」
凄まじい歓声が嵐のように沸き起こった。
「勝者、ルーチェ!」
軽く、片手をあげて観衆にこたえるルーチェ。
まだ荒い息をしているバルレッタを突き飛ばすと、ルーチェはイスキア公ラマンドロの前に進み出て膝を折った。
「報酬をお願いします。公主様」
「勝者ルーチェ、お前は何を望む」
凍りつくようなラマンドロの声音に臆することなくルーチェは答えた。
「では、私のこのマント、バルレッタに口づけさせて下さい」
「ほう……?」
ラマンドロの片眉が面白そうにあがる。
「何であたしがそんな事しなきゃいけないのさ?」
バルレッタが喚き立てる。
「毒を使ってないというならそれ位できる筈。このマント生地はね、工房都市ベイトの特別製よ。静電気でナノミクロンの単位までどんな細かいものも吸着するわ。もちろん、貴女がさっき私に投げつけたモノもね」
「ひっ……」
ルーチェに橙色のマントを口元に強引に突きつけられ、必死に顔を背けるバルレッタ。
「嫌ならさっきの報酬、放棄すると言いなさい。さぁ、早く!」
「わかったよぉ!あたしの負けだ!!好きにしな」
バルレッタは破れかぶれで叫んだ。
「今年も優勝者はゲンメのルーチェ・サビーナ……!」
夕日でみかん色に染まった闘技場に優勝者を称えるアナウンスが響き渡った。
うわぁぁ……ん!!
ユッカ連合公国、イスキア領の海に近い中央公園に特設されたみかん色に彩られた闘技会場の中で、観客の興奮した歓声が響き渡った。
今年のオレンジフェスティバルの開催地は南方イスキア公領。ユッカ国内外からの観光客で普段は閑静な中央公園付近はかつてないほどの賑わいをみせていた。
闘技大会は後半にさしかかり、観客のボルテージはうなぎのぼり。この戦いの次はいよいよ決勝戦だ。
審判の旗がバルレッタと呼ばれた女闘士の方に上がり、バルレッタは得意そうに右手を挙げた。
地元の開催地出身でもある彼女には一際大きな歓声があがる。
バルレッタはまだ若く、大柄な女でよく筋肉が発達したしなやかな身体をした女闘士だ。
その三白眼の鋭い灰色の目を油断なく光らせて、観客を見回すと、この祭の特徴でもある「報酬」を芝居がかった様子で宣言した。
「あたしはコイツの手足を貰うよ!」
わあっと場内がどよめく。
オレンジフェスティバルでは勝者は「報酬」として、対戦相手から命以外のもの……髪の毛、衣装、宝飾品、時には恋人までも……を敗者に要求することが出来た。
何を賭けて戦うか。
ユッカ国内の頂点に立つ女闘士が決まる伝統ある大会が、女達が物欲を丸出しで戦うえげつない大会になりかわってしまっていたが、それゆえの必死さで盛り上りを見せ、「報酬」もこの大会の売り物の一つのようになっていた。
「……」
負けた、まだ小さな少女のようにも見える小柄な娘は闘技場の真ん中でうつ伏せたまま、ピクリとも動かない。
それを見て、バルレッタの薄い唇が酷薄そうにニッとつりあがった。
先程の試合。前半から身軽に飛び回る小柄な娘に、明らかにバルレッタの方が押されていた。
それが突如、娘の動きが止まったところをバルレッタが場外に叩きつけ、呆気なく勝敗が決した。
些か不自然さはあったがそこは地元開催出身者。バルレッタを追及する者はいない。
バルレッタが、負けた娘に近寄った。
会場はシン!と静まり返り、観客は可憐な少女の手足がへし折られるところを、今か今かと固唾をのんで見守った。
「待って下さい」
突如、冷静な声が割り込んだ。
「ルーチェ!」
引き締まった身体つきの若い容姿端麗な女闘士が現れ、観客が我にかえったように沸き返る。
「バルレッタは痺れ薬で動きを封じた。報酬は無効よ」
「何を証拠に!」
バルレッタがルーチェと呼ばれた女に詰め寄る。
「マリン!痺れ薬が使われたと証言できるか?」
審判がうつ伏せている娘を抱き起こした。
「……」
マリンと呼ばれた娘は微かに口をパクパクさせるばかり。声を発することができないようだ。
「証言不能!マリンから毒は確認できない」
審判は淡々と告げた。
「何を言っているの?その子、明らかに痺れてるじゃない!」
ルーチェは審判をキッと睨みつけた。
「たとえ、そうだとしても、勝ちはあたしだよ。チャンピオンさん。油断したその小娘の自業自得さ」
ルーチェの視界にバルレッタがズイっと割り込む。
「毒の使用は禁じ手のはずよ」
二人の女闘士は睨みあった。
「両者、やめよ!今回のバルレッタの報酬は保留だ。決着は次の決勝戦でつけよ」
高座からつまらなさそうに成り行きを見ていた今大会の主催者、イスキア公ラマンドロの言葉が陰々と響く。
この男。長身で浅黒い肌、黒い短髪、そこそこ精悍な見てくれの施政者だが、その細く冷たく光る瞳が見る全員に蛇を想起させるため、蛇公と呼ばれている。
そのラマンドロが無言でその蛇のような眼差しをルーチェとバルレッタに向けた。
ルーチェと不服そうなバルレッタは鶴の一声ならぬ、蛇のひと睨みで黙って頭を下げ、それぞれに与えられた控え室へ戻って決勝に備えた。
半刻後。
前座の芸人たちが、宙返りをしてみたり、ドラムロールから失敗をして客の大喝采を受け、会場が盛り上がったところで、お待ちかねの試合がはじまった。
北方ゲンメ地方から今年も勝ち上がってきた前回チャンピオンのルーチェと、地元イスキアのバルレッタの対戦に会場のボルテージも最高潮だ。
審判の呼び出しに派手なコスチュームで登場した大柄なバルレッタは、見事に盛り上がった胸や谷間を惜しみなく晒し、観客の、とりわけ男たちの下卑た歓声を浴びていた。
ルーチェも小振りながら形のよい胸を軽鎧に押し込み、光沢のあるみかん色のマントを翻し、スカートからすんなりと伸びる手足からこぼれ落ちる清廉な色気を振りまいて、こちらも熱狂的な観客の喝采を浴びる。
「このでしゃばり女!そのすました面を切り刻んでやるわ」
バルレッタは試合会場に飛び降りるなり、ほえたてて悪役ヒールとしては充分に客を煽った。
そして、審判の合図も待たずルーチェに向かって一直線に大剣を振り上げる。
ルーチェはそれを冷静に真っ正面から受け止め、軽く受け流した。
「さっきはよくも邪魔をしてくれたな。クソ女」
バルレッタは剣を振り回しながらしきりと威嚇する。
「うるさいわね……」
ルーチェは体重をかけて打ちかかってくるバルレッタの切っ先を受け流しながら、隙を狙って素早く剣を突きいれる。
「ちっ……」
かすり傷だが、バルレッタの頬から血が滲んだ。
大した傷ではないが、血の色を見てバルレッタは逆上する。
「くらえ!」
吠えながらバルレッタは胸の前で剣を構えてルーチェ目がけて突進する。
ルーチェは長い足から見事な蹴りを繰り出し、バルレッタの大剣をその手から叩き落とした。
剣を振り落とされてもなお、猪のように突進してくるバルレッタを素手で受け止め、ルーチェは軽々とその女猪のようなごつい身体を投げ飛ばす。
実は格闘戦はルーチェの最も得意とするところだった。
無様に地面に転がされたバルレッタは何か叫んだかと思うと、粉状のモノを必死にルーチェの顔面に投げつける。
素早くルーチェはマントを翻し、それで顔面をガードした。
そして、神業のようにバルレッタの背後に回り込むと押さえこみ、その細腕で首を締め上げる。
「折るわよ」
ルーチェの静かな低い声にバルレッタが必死で両手を振り回す。
「参った!!」
「わあぁっ……!」
「ルーチェの勝ちだ!」
凄まじい歓声が嵐のように沸き起こった。
「勝者、ルーチェ!」
軽く、片手をあげて観衆にこたえるルーチェ。
まだ荒い息をしているバルレッタを突き飛ばすと、ルーチェはイスキア公ラマンドロの前に進み出て膝を折った。
「報酬をお願いします。公主様」
「勝者ルーチェ、お前は何を望む」
凍りつくようなラマンドロの声音に臆することなくルーチェは答えた。
「では、私のこのマント、バルレッタに口づけさせて下さい」
「ほう……?」
ラマンドロの片眉が面白そうにあがる。
「何であたしがそんな事しなきゃいけないのさ?」
バルレッタが喚き立てる。
「毒を使ってないというならそれ位できる筈。このマント生地はね、工房都市ベイトの特別製よ。静電気でナノミクロンの単位までどんな細かいものも吸着するわ。もちろん、貴女がさっき私に投げつけたモノもね」
「ひっ……」
ルーチェに橙色のマントを口元に強引に突きつけられ、必死に顔を背けるバルレッタ。
「嫌ならさっきの報酬、放棄すると言いなさい。さぁ、早く!」
「わかったよぉ!あたしの負けだ!!好きにしな」
バルレッタは破れかぶれで叫んだ。
「今年も優勝者はゲンメのルーチェ・サビーナ……!」
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