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第一部
第43話 初対面の再会?
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「何処へ行くの?ルーチェ」
馬車に揺られながら私は不安げにルーチェを見つめた。
大通りに出て、大公宮のある方へどうやら進んでいる様子はわかるんだけど。
やはり行き先がわからないのは、不安だ。
それに馬車に乗ると、嫌でも思い出してしまう。
前回、ルーチェの言いつけを守らず、裏道を通ってイスキアの刺客、海蛇達に襲われて頭を打ったことを。
「大丈夫ですよ。お嬢様」
そんな私の不安げな視線に気づいたルーチェが、私の両手をぎゅっと握ってくれた。
私ってまるで子どもね……。
でも、ルーチェと居ると安心するの。
マルサネではなく、リツコの私をすんなりとマルサネだった時と変わらぬ態度で接してくれるルーチェ。
「違和感ないの?」
疑問に思ったまま、ルーチェにぶつけてみた。
「そうですねぇ。リツコ様がマルサネお嬢様だった時の方が、バリバリ違和感ありましたよ。こちらが本物ですと言われたら、まぁ納得っていうものですね」
「そんなもの?」
「そんなものです」
マルサネではない私を変わらずお嬢様扱いしてくれるルーチェ。
「ありがとう」
私は隣に座るルーチェに抱きついて、心から感謝を伝えた。
「……気にしないで下さい。言ったでしょう。私にとってお嬢様はどんな姿でも変わりませんよ」
「ルーチェぇぇ……」
ぎゅうう……っと私に抱きつかれたルーチェは照れたように言った。
「鼻水つけないで下さいね。洗濯する時に面倒ですから」
「そういうところは変わってないのね……」
そんな会話をしているうちに、馬車は大公宮に程近い一画で止まった。
「さぁ、着きましたよ」
馬車から降りると、出迎えくれたのは光輝く金髪が眩しいゴージャスな美女だった。
「ようこそ、我がカルゾ宮殿へ」
背の高い執事を従えて、ソーヴェ様が出迎えてくれた。
半ば、予想通りというか、何というか。
ルーチェは以前、ソーヴェ様と示しあわせてサラック様と私をカフェデートさせたことがある。
今回も頼るならカルゾだろうと私はなんとなく予想していたが……、リツコの姿で眩しいソーヴェ様の前に出るのはなかなか勇気が必要だ。
「初めましてというべきか、お久しぶりというべきか迷うわね」
モジモジ、ルーチェの陰に隠れて出て来ない私にソーヴェ様が苦笑して手を差しのべた。
「ええと……私は」
大きいけれど白魚のような温かい手をとって、私は俯いた。
何と説明したらいいのだろう。
「リツコ、よね。事情は聞いたわ。ここにいる人間は口外しない、大丈夫よ。私やサラックはマルサネからあなたのことを聞いているわ、安心して」
「……マルサネ、から?」
「あなたが急に居なくなったことをマルサネ本人から聞かされて、サラックはショックで寝込んじゃったけどね。まぁ、こうして本物がやって来たんだから、特に問題ないんじゃない?」
ソーヴェ様にかかると物事がシンプルになる。
しかし、サラック様は寝込んじゃったのか……。
男の人ってメンタル弱いというか、繊細というか。
「という訳で当面のあなたの滞在先なんだけど、ウチでいいかしら?大公宮も候補に考えたんだけど、多分ウチが今、ユッカ国内で一番安全だわ」
「良いんですか?」
「もちろん。歓迎するわ」
ソーヴェ様は大輪が咲くような笑顔を浮かべて手を広げてくれた。
「ありがとうございます」
ソーヴェ様の何ともいえない良い匂いに包まれて、ハグをされただけで私は腰砕けになった。
「サラックに会いたかった?」
ソーヴェ様のストレートな問いに一瞬、躊躇したけど私は自分の気持ちに素直に頷いた。
「はい」
「ふふ、正直ね。そういう所、私は好きだわ」
「……ありがとうございます」
「サラックは、もうすぐとんでくるハズだから待っててね」
ソーヴェ様は悪戯っ子のように笑った。
「ところでマルサネは何処へいったの?」
「わかりません。ゲンメの邸内には居なかったようですが……」
私は思わずルーチェの方を見た。
ルーチェは首を左右に振っていた。やはり、マルサネはゲンメ邸では見つからなかったようだ。
「不思議なことね。あの、マルサネを誰かが無理やり誘拐なんてまず不可能。この消え方はまるで、……そうね。まるで昔話の神隠しのようね」
「神隠し、ですか」
ソーヴェ様は奇しくも、サリアさんと同じ言葉を使った。
「何か、人ならぬ力が働いた。そうは思わなくて?」
美しいソーヴェ様のサファイアのような瞳が妖しく輝いて私に向けられる。
「……そうですね。私がこちらに来た時は、どちらの時もブラッディ・ムーンでした」
「何てこと……!ブラッディ・ムーンだったのね。まさに月の魔力で死者が訪れる時。人の力を超えたモノが動いたとしてもおかしくはないわね」
「死者の道が開く、とサリアさんも言っていました」
「……サリアですって?マルサネの母親の、あのサリアのこと!?」
ソーヴェ様は驚きを隠せない様子で興奮して叫んだ。
「はい。ブラッディ・ムーンで私を導いてくれたのはサリアさんです」
「……何ということなんでしょうね。まだまだ、私たち生きている者には分からないことがこの世には多過ぎる……」
ソーヴェ様がそう呟いた時、息をはずませて大柄な男がバタバタとカルゾ邸に駆け込んで来た。
「リツコ……!リツコはどこだ……?!」
馬車に揺られながら私は不安げにルーチェを見つめた。
大通りに出て、大公宮のある方へどうやら進んでいる様子はわかるんだけど。
やはり行き先がわからないのは、不安だ。
それに馬車に乗ると、嫌でも思い出してしまう。
前回、ルーチェの言いつけを守らず、裏道を通ってイスキアの刺客、海蛇達に襲われて頭を打ったことを。
「大丈夫ですよ。お嬢様」
そんな私の不安げな視線に気づいたルーチェが、私の両手をぎゅっと握ってくれた。
私ってまるで子どもね……。
でも、ルーチェと居ると安心するの。
マルサネではなく、リツコの私をすんなりとマルサネだった時と変わらぬ態度で接してくれるルーチェ。
「違和感ないの?」
疑問に思ったまま、ルーチェにぶつけてみた。
「そうですねぇ。リツコ様がマルサネお嬢様だった時の方が、バリバリ違和感ありましたよ。こちらが本物ですと言われたら、まぁ納得っていうものですね」
「そんなもの?」
「そんなものです」
マルサネではない私を変わらずお嬢様扱いしてくれるルーチェ。
「ありがとう」
私は隣に座るルーチェに抱きついて、心から感謝を伝えた。
「……気にしないで下さい。言ったでしょう。私にとってお嬢様はどんな姿でも変わりませんよ」
「ルーチェぇぇ……」
ぎゅうう……っと私に抱きつかれたルーチェは照れたように言った。
「鼻水つけないで下さいね。洗濯する時に面倒ですから」
「そういうところは変わってないのね……」
そんな会話をしているうちに、馬車は大公宮に程近い一画で止まった。
「さぁ、着きましたよ」
馬車から降りると、出迎えくれたのは光輝く金髪が眩しいゴージャスな美女だった。
「ようこそ、我がカルゾ宮殿へ」
背の高い執事を従えて、ソーヴェ様が出迎えてくれた。
半ば、予想通りというか、何というか。
ルーチェは以前、ソーヴェ様と示しあわせてサラック様と私をカフェデートさせたことがある。
今回も頼るならカルゾだろうと私はなんとなく予想していたが……、リツコの姿で眩しいソーヴェ様の前に出るのはなかなか勇気が必要だ。
「初めましてというべきか、お久しぶりというべきか迷うわね」
モジモジ、ルーチェの陰に隠れて出て来ない私にソーヴェ様が苦笑して手を差しのべた。
「ええと……私は」
大きいけれど白魚のような温かい手をとって、私は俯いた。
何と説明したらいいのだろう。
「リツコ、よね。事情は聞いたわ。ここにいる人間は口外しない、大丈夫よ。私やサラックはマルサネからあなたのことを聞いているわ、安心して」
「……マルサネ、から?」
「あなたが急に居なくなったことをマルサネ本人から聞かされて、サラックはショックで寝込んじゃったけどね。まぁ、こうして本物がやって来たんだから、特に問題ないんじゃない?」
ソーヴェ様にかかると物事がシンプルになる。
しかし、サラック様は寝込んじゃったのか……。
男の人ってメンタル弱いというか、繊細というか。
「という訳で当面のあなたの滞在先なんだけど、ウチでいいかしら?大公宮も候補に考えたんだけど、多分ウチが今、ユッカ国内で一番安全だわ」
「良いんですか?」
「もちろん。歓迎するわ」
ソーヴェ様は大輪が咲くような笑顔を浮かべて手を広げてくれた。
「ありがとうございます」
ソーヴェ様の何ともいえない良い匂いに包まれて、ハグをされただけで私は腰砕けになった。
「サラックに会いたかった?」
ソーヴェ様のストレートな問いに一瞬、躊躇したけど私は自分の気持ちに素直に頷いた。
「はい」
「ふふ、正直ね。そういう所、私は好きだわ」
「……ありがとうございます」
「サラックは、もうすぐとんでくるハズだから待っててね」
ソーヴェ様は悪戯っ子のように笑った。
「ところでマルサネは何処へいったの?」
「わかりません。ゲンメの邸内には居なかったようですが……」
私は思わずルーチェの方を見た。
ルーチェは首を左右に振っていた。やはり、マルサネはゲンメ邸では見つからなかったようだ。
「不思議なことね。あの、マルサネを誰かが無理やり誘拐なんてまず不可能。この消え方はまるで、……そうね。まるで昔話の神隠しのようね」
「神隠し、ですか」
ソーヴェ様は奇しくも、サリアさんと同じ言葉を使った。
「何か、人ならぬ力が働いた。そうは思わなくて?」
美しいソーヴェ様のサファイアのような瞳が妖しく輝いて私に向けられる。
「……そうですね。私がこちらに来た時は、どちらの時もブラッディ・ムーンでした」
「何てこと……!ブラッディ・ムーンだったのね。まさに月の魔力で死者が訪れる時。人の力を超えたモノが動いたとしてもおかしくはないわね」
「死者の道が開く、とサリアさんも言っていました」
「……サリアですって?マルサネの母親の、あのサリアのこと!?」
ソーヴェ様は驚きを隠せない様子で興奮して叫んだ。
「はい。ブラッディ・ムーンで私を導いてくれたのはサリアさんです」
「……何ということなんでしょうね。まだまだ、私たち生きている者には分からないことがこの世には多過ぎる……」
ソーヴェ様がそう呟いた時、息をはずませて大柄な男がバタバタとカルゾ邸に駆け込んで来た。
「リツコ……!リツコはどこだ……?!」
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