51 / 150
第一部
side:ゲンメ公女 マルサネ part5
しおりを挟む
リツコがネットで買ったらしい地味なドレスに何とか身体を押し込んで、あたしは馬車に飛び乗った。
さっき衣装部屋の前でルーチェを捕まえ、パーティーに至急行きたいと伝えたら、手際よく黙々とあたしの支度を手伝ってくれた。
ルーチェのおかげで何とか、パーティーの時間には間に合いそうだ。
手伝ってくれたことはありがたかった。けど、リツコと明るく楽しそうに支度を手伝っていたルーチェをあたしは知っているだけに何とも言いがたい、モヤっと感が残る。
あたしはリツコとは違うかもしれないけどさ。
同じマルサネなんだから、ちょっとぐらいニコリとしたらどうなのよ……?
今まで使用人にキツく当たってきた自分のことを棚にあげて、ルーチェを追いつめそうになってしまった。
うぅむ。
味方を作るのって難しいわ。
大体、これから行くパーティーだって、どうしていいかさっぱりわからない。パーティーって、何するんだろ?
リツコなら、ルーチェに聞いて二人で色々考えたりしたんだろうな……。
実はあたし、生まれて初めて他公家のパーティーに呼ばれたんだよね~、アハハハ……ハハ…。
だって!あたしは公女なのに、誰も何処にも呼んでくれない。
あの蛇姫だって、奴の地元イベントに呼ばれて姫様扱いされてるのに。
あたしは、何処へいっても狂暴な猿のように暴れると思われてるらしいわ。
だからパーティーっていえば、大昔、あたしの誕生日に食べ放題のバーベキューをゲンメ公邸の畑でやったぐらいの記憶しかない。
絶対、カルゾ公邸の庭には畑なんかないだろうし、食べ放題でもないわよね。
畑の肥の臭いの充満する中で、土にまみれて紙皿を持って肉や野菜が焼けるまでウロウロするのが、あたしの唯一知ってるパーティーなんだけど……。
室内のパーティー。……さっぱりわかんないわ。
慣れない衣装を着て馬車に揺られながら、一人あたしはだんだん不安になってきた。
もし、パーティーで突然歌えって言われたらどうすればいいんだろう?
まぁ、歌ってもいいけどさ……。
あたしは蛇姫の言うとおり、昔から筋金入りのド音痴なんだよね。
本当に破壊音しか出ないんだけど……。良いんかな?
あたしが歌ったら、間違いなく偽者扱いになるわよね……?
今日は風邪をひいて喉を傷めてることにしよう。うん。
「お嬢様。間もなくカルゾ公邸に着きますが……」
もぉ、着いたの?
何を話せばいいかとか、全然考えれなかったわ。
カルゾ公邸のパーティーに行く、なんてハゲオヤジに即答するんじゃなかったなぁ……。
§ § §
「よく来てくれたわね、マルサネ」
馬車を降りると、大柄なゴージャス金髪美女が出迎えてくれた。
「ソーヴェ様……!」
わざわざ、女主人自らのお出迎えに感激するあたし。
やっぱり来てよかったわぁ。
「……マルサネ?」
「はい?」
ソーヴェ様は笑顔のまま、傍らの花瓶の花を一輪、目の覚めるようなスピードであたしに向けて投げつけた。
「……!」
思わず、あたしは反射的に手刀で床に叩き落とす。
花びらを散らしながら、床に落ちる豪華な一輪の薔薇。
「ソーヴェ様。これは一体……?」
「見事な反射神経ね。流石に長年鍛えているだけあるわ」
「はぁ」
あたし、試されたの?
ソーヴェ様。リツコの時はこんなことしなかったのに……。
「ソーヴェ様!」
騒ぎを聞いて小柄なメイドが慌てて駆けつけてきた。
「大丈夫よ、マリン。薔薇のトゲはちゃんと処理してあるわ」
ソーヴェ様の言葉に何か言いたげだったメイドをそっと、どこからか長身の執事が出て来て視線だけで制する。
「ねぇ、マルサネ。貴女は誰?」
シン!と静まり返った玄関ホールにソーヴェ様の凛としたお声が響く。
「え……?」
「質問を変えましょうか。この間までマルサネと名乗っていた人物は何処にいるの?」
「……ソーヴェ様っ」
あたしは、唇をギリッと噛んだ。
流石ソーヴェ様。あっさり、中身が違うって見破られちゃったわ。
さて、どうする。
あたしが元々のマルサネです、と釈明してソーヴェ様に果たして解って貰えるだろうか……?
さっき衣装部屋の前でルーチェを捕まえ、パーティーに至急行きたいと伝えたら、手際よく黙々とあたしの支度を手伝ってくれた。
ルーチェのおかげで何とか、パーティーの時間には間に合いそうだ。
手伝ってくれたことはありがたかった。けど、リツコと明るく楽しそうに支度を手伝っていたルーチェをあたしは知っているだけに何とも言いがたい、モヤっと感が残る。
あたしはリツコとは違うかもしれないけどさ。
同じマルサネなんだから、ちょっとぐらいニコリとしたらどうなのよ……?
今まで使用人にキツく当たってきた自分のことを棚にあげて、ルーチェを追いつめそうになってしまった。
うぅむ。
味方を作るのって難しいわ。
大体、これから行くパーティーだって、どうしていいかさっぱりわからない。パーティーって、何するんだろ?
リツコなら、ルーチェに聞いて二人で色々考えたりしたんだろうな……。
実はあたし、生まれて初めて他公家のパーティーに呼ばれたんだよね~、アハハハ……ハハ…。
だって!あたしは公女なのに、誰も何処にも呼んでくれない。
あの蛇姫だって、奴の地元イベントに呼ばれて姫様扱いされてるのに。
あたしは、何処へいっても狂暴な猿のように暴れると思われてるらしいわ。
だからパーティーっていえば、大昔、あたしの誕生日に食べ放題のバーベキューをゲンメ公邸の畑でやったぐらいの記憶しかない。
絶対、カルゾ公邸の庭には畑なんかないだろうし、食べ放題でもないわよね。
畑の肥の臭いの充満する中で、土にまみれて紙皿を持って肉や野菜が焼けるまでウロウロするのが、あたしの唯一知ってるパーティーなんだけど……。
室内のパーティー。……さっぱりわかんないわ。
慣れない衣装を着て馬車に揺られながら、一人あたしはだんだん不安になってきた。
もし、パーティーで突然歌えって言われたらどうすればいいんだろう?
まぁ、歌ってもいいけどさ……。
あたしは蛇姫の言うとおり、昔から筋金入りのド音痴なんだよね。
本当に破壊音しか出ないんだけど……。良いんかな?
あたしが歌ったら、間違いなく偽者扱いになるわよね……?
今日は風邪をひいて喉を傷めてることにしよう。うん。
「お嬢様。間もなくカルゾ公邸に着きますが……」
もぉ、着いたの?
何を話せばいいかとか、全然考えれなかったわ。
カルゾ公邸のパーティーに行く、なんてハゲオヤジに即答するんじゃなかったなぁ……。
§ § §
「よく来てくれたわね、マルサネ」
馬車を降りると、大柄なゴージャス金髪美女が出迎えてくれた。
「ソーヴェ様……!」
わざわざ、女主人自らのお出迎えに感激するあたし。
やっぱり来てよかったわぁ。
「……マルサネ?」
「はい?」
ソーヴェ様は笑顔のまま、傍らの花瓶の花を一輪、目の覚めるようなスピードであたしに向けて投げつけた。
「……!」
思わず、あたしは反射的に手刀で床に叩き落とす。
花びらを散らしながら、床に落ちる豪華な一輪の薔薇。
「ソーヴェ様。これは一体……?」
「見事な反射神経ね。流石に長年鍛えているだけあるわ」
「はぁ」
あたし、試されたの?
ソーヴェ様。リツコの時はこんなことしなかったのに……。
「ソーヴェ様!」
騒ぎを聞いて小柄なメイドが慌てて駆けつけてきた。
「大丈夫よ、マリン。薔薇のトゲはちゃんと処理してあるわ」
ソーヴェ様の言葉に何か言いたげだったメイドをそっと、どこからか長身の執事が出て来て視線だけで制する。
「ねぇ、マルサネ。貴女は誰?」
シン!と静まり返った玄関ホールにソーヴェ様の凛としたお声が響く。
「え……?」
「質問を変えましょうか。この間までマルサネと名乗っていた人物は何処にいるの?」
「……ソーヴェ様っ」
あたしは、唇をギリッと噛んだ。
流石ソーヴェ様。あっさり、中身が違うって見破られちゃったわ。
さて、どうする。
あたしが元々のマルサネです、と釈明してソーヴェ様に果たして解って貰えるだろうか……?
0
お気に入りに追加
142
あなたにおすすめの小説

婚約したら幼馴染から絶縁状が届きました。
黒蜜きな粉
恋愛
婚約が決まった翌日、登校してくると机の上に一通の手紙が置いてあった。
差出人は幼馴染。
手紙には絶縁状と書かれている。
手紙の内容は、婚約することを発表するまで自分に黙っていたから傷ついたというもの。
いや、幼馴染だからって何でもかんでも報告しませんよ。
そもそも幼馴染は親友って、そんなことはないと思うのだけど……?
そのうち機嫌を直すだろうと思っていたら、嫌がらせがはじまってしまった。
しかも、婚約者や周囲の友人たちまで巻き込むから大変。
どうやら私の評判を落として婚約を破談にさせたいらしい。


皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】
僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。
※他サイトでも投稿中

王太子妃候補、のち……
ざっく
恋愛
王太子妃候補として三年間学んできたが、決定されるその日に、王太子本人からそのつもりはないと拒否されてしまう。王太子妃になれなければ、嫁き遅れとなってしまうシーラは言ったーーー。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした
さこの
恋愛
幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。
誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。
数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。
お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。
片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。
お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……
っと言った感じのストーリーです。

すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした
珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。
色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。
バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。
※全4話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる