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第一部
side:ゲンメ公女 マルサネ part3
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「お嬢……様?お帰りなさいませ」
ルーチェは訝しげな顔をして、あたしを見た。
「あぁ……。ただ、いま?」
あたしは使用人と挨拶なんてしたことはない。
ぎこちない返しになってしまった。
ルーチェとかいうこのメイド。随分とリツコと親しげな様子だった。
すぐにあたしの変化に気づいたようだ。
「あの、お茶をお運びいたしましょうか」
恐る恐る、声をかけてくるルーチェ。
「水か麦酒を」
いつものように答えるあたし。
「……。承知いたしました」
ルーチェは深々と頭を下げ、素早く下がっていく。
仕方ないわ。
あたし、リツコが毎日うっとりと飲んでいた、あのフルーティなサラック茶、昔から苦手なのよね。
「お待たせいたしました」
ルーチェが持ってきたピッチャーには、氷がぎっしり詰められていた。
「……ぁあ」
これ。
いつもあたしがトレーニング後に持ってこさせてたやつだ。キンキンに冷えた氷水。
鋭い賢い娘だこと。気づいたというアピールだろうか。
ルーチェはあたしが話しかける間もなく、あっという間に消えていた。
以前のあたしが、使用人との会話を嫌っていたことを知っているからだろう。
二人でカフェに行ったり、お喋りをしながら買い物したり。
女主人ぶらないリツコとルーチェはとても楽しそうで、同年代とあんな風に過ごしたことはないあたしは……。
正直羨ましかった。
学園で蛇女と睨みあうか、闇たちと身体を鍛えるしかない青春って……。我ながら悲しすぎる。
あたしは普段から男を襲ってたんじゃないかって?
あぁ、あれね。
真相は、力試しよ。
なんかさ、あの時は願掛けみたいなのが学園で流行っててね~。
あたしは、派手なことがやりたかったのよ。
だから、昔の伝承にあったリアル1000本斬りに挑戦してみたの。
若かったわ……。
そして、長かったの。1000本集めるのって。
本当にバカじゃないかと思うわ。
橋の上で男に襲いかかっては、腰に下げた刀や武器を集める日々。
猿姫に負けるなどと、プライドが許さなかった騎士や衛兵は、突然性的に襲われたと言う輩が多かったのよね。
そして腰の刀を奪おうと下半身をまさぐるあたしの仕草は、男達の股間を探る痴女ととられてしまい、猿姫イコール男を性的に襲うという説が定着してしまったのよ。
まぁ、今となっては仕方ないけど。
やめときゃ良かったわ。
え?金銀公子は本当に襲ってたんだろう、って?
あぁ、世間の皆はあの美貌しか知らないもんね。
金銀公子って、ただのイケメンじゃないのよ。化け物級に強いんだってばさ。あの二人。
ゲンメの闇が束になっても、敵いっこないんだから。
ま、そもそも。襲いかかっても、実力的にあたしが押し倒せるなんて全然思ってなかったわ。
単なる力試し的なヤツ?
強い相手には挑んでみたいじゃない?
毎回、こっぴどく返り討ちになるんだけど、またそれが構ってもらえてるみたいで楽しかったのよ。
あ、なんか皆に構ってもらえない、可哀想な子だったのね。あたしって。
じゃあ性病って一体なんなのか?だって。
何これ、あたしの過去の罪状の釈明タイムなの?
ま、いいけどさ。
だいたいね、性病って男女の営みを致して発病することが多いかもしれないけど、致さないでもうつるのよ?接触感染だもん。
ちなみにあたしは女性からうつったわ。だからといって特に女が好き、という訳ではないんだけどね。
あれは単なる医療事故だったんだけど、クソオヤジは大袈裟に騒ぎ立てるし、また1000本斬りの件の頃と重なってさ。おかげであたしはこの国の痴女代表みたいな感じになってしまったのよ……。
婚約とか、恋とか。同世代の少女たちが華やかな話題で盛り上がってる中に、入っていくことは出来なかったしね。
そもそも、男も女も誰もあたしの側に近寄ってこなかったし。
あたしも、筋トレや新しい武器とかの話題なら自信があったけど、流行りものとか女の子が好むような可愛いモノはさっぱりわからなくて。
とりあえず、ノーザン商会のピンクシリーズとかいうブランドが流行ってるらしいと小耳に挟んで、それで固めてみたけど……。
ピンクに包まれたあたしを見る世間の視線は、それはそれは冷たいものだったわ。
ピンク一色で毎日、目がチカチカしてたけど、あれはリツコが全部片付けちゃったみたいね。
さぁ、昔の話はこれぐらいにしましょ。
あたしもいくら寂しいからって、ウサギの縫いぐるみ相手に、独りでいつまでもブツブツ話しかけるのはどうかと思うわ。
だけど、このウサギは流石にリツコも片付けなかったようね。
ウサギの名前は「サリア」。
あたしの亡くなった母さんの形見。
物心ついた時からずっと、あたしと一緒に眠ってる。
母さんがあたしが独りで眠る時に寂しくないように、作ってくれた縫いぐるみ。
もうすっかり、薄汚れてきたけどあたしの宝物なの。
ルーチェは訝しげな顔をして、あたしを見た。
「あぁ……。ただ、いま?」
あたしは使用人と挨拶なんてしたことはない。
ぎこちない返しになってしまった。
ルーチェとかいうこのメイド。随分とリツコと親しげな様子だった。
すぐにあたしの変化に気づいたようだ。
「あの、お茶をお運びいたしましょうか」
恐る恐る、声をかけてくるルーチェ。
「水か麦酒を」
いつものように答えるあたし。
「……。承知いたしました」
ルーチェは深々と頭を下げ、素早く下がっていく。
仕方ないわ。
あたし、リツコが毎日うっとりと飲んでいた、あのフルーティなサラック茶、昔から苦手なのよね。
「お待たせいたしました」
ルーチェが持ってきたピッチャーには、氷がぎっしり詰められていた。
「……ぁあ」
これ。
いつもあたしがトレーニング後に持ってこさせてたやつだ。キンキンに冷えた氷水。
鋭い賢い娘だこと。気づいたというアピールだろうか。
ルーチェはあたしが話しかける間もなく、あっという間に消えていた。
以前のあたしが、使用人との会話を嫌っていたことを知っているからだろう。
二人でカフェに行ったり、お喋りをしながら買い物したり。
女主人ぶらないリツコとルーチェはとても楽しそうで、同年代とあんな風に過ごしたことはないあたしは……。
正直羨ましかった。
学園で蛇女と睨みあうか、闇たちと身体を鍛えるしかない青春って……。我ながら悲しすぎる。
あたしは普段から男を襲ってたんじゃないかって?
あぁ、あれね。
真相は、力試しよ。
なんかさ、あの時は願掛けみたいなのが学園で流行っててね~。
あたしは、派手なことがやりたかったのよ。
だから、昔の伝承にあったリアル1000本斬りに挑戦してみたの。
若かったわ……。
そして、長かったの。1000本集めるのって。
本当にバカじゃないかと思うわ。
橋の上で男に襲いかかっては、腰に下げた刀や武器を集める日々。
猿姫に負けるなどと、プライドが許さなかった騎士や衛兵は、突然性的に襲われたと言う輩が多かったのよね。
そして腰の刀を奪おうと下半身をまさぐるあたしの仕草は、男達の股間を探る痴女ととられてしまい、猿姫イコール男を性的に襲うという説が定着してしまったのよ。
まぁ、今となっては仕方ないけど。
やめときゃ良かったわ。
え?金銀公子は本当に襲ってたんだろう、って?
あぁ、世間の皆はあの美貌しか知らないもんね。
金銀公子って、ただのイケメンじゃないのよ。化け物級に強いんだってばさ。あの二人。
ゲンメの闇が束になっても、敵いっこないんだから。
ま、そもそも。襲いかかっても、実力的にあたしが押し倒せるなんて全然思ってなかったわ。
単なる力試し的なヤツ?
強い相手には挑んでみたいじゃない?
毎回、こっぴどく返り討ちになるんだけど、またそれが構ってもらえてるみたいで楽しかったのよ。
あ、なんか皆に構ってもらえない、可哀想な子だったのね。あたしって。
じゃあ性病って一体なんなのか?だって。
何これ、あたしの過去の罪状の釈明タイムなの?
ま、いいけどさ。
だいたいね、性病って男女の営みを致して発病することが多いかもしれないけど、致さないでもうつるのよ?接触感染だもん。
ちなみにあたしは女性からうつったわ。だからといって特に女が好き、という訳ではないんだけどね。
あれは単なる医療事故だったんだけど、クソオヤジは大袈裟に騒ぎ立てるし、また1000本斬りの件の頃と重なってさ。おかげであたしはこの国の痴女代表みたいな感じになってしまったのよ……。
婚約とか、恋とか。同世代の少女たちが華やかな話題で盛り上がってる中に、入っていくことは出来なかったしね。
そもそも、男も女も誰もあたしの側に近寄ってこなかったし。
あたしも、筋トレや新しい武器とかの話題なら自信があったけど、流行りものとか女の子が好むような可愛いモノはさっぱりわからなくて。
とりあえず、ノーザン商会のピンクシリーズとかいうブランドが流行ってるらしいと小耳に挟んで、それで固めてみたけど……。
ピンクに包まれたあたしを見る世間の視線は、それはそれは冷たいものだったわ。
ピンク一色で毎日、目がチカチカしてたけど、あれはリツコが全部片付けちゃったみたいね。
さぁ、昔の話はこれぐらいにしましょ。
あたしもいくら寂しいからって、ウサギの縫いぐるみ相手に、独りでいつまでもブツブツ話しかけるのはどうかと思うわ。
だけど、このウサギは流石にリツコも片付けなかったようね。
ウサギの名前は「サリア」。
あたしの亡くなった母さんの形見。
物心ついた時からずっと、あたしと一緒に眠ってる。
母さんがあたしが独りで眠る時に寂しくないように、作ってくれた縫いぐるみ。
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