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番外編 〈第25.5話~〉

カルゾメイドの溜息!〈sideマリン〉part8

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「これ、どうしよう……」
 ずっとポケットに入っている紙袋を見て、私は溜め息をつきました。もう、紙がよれてきちゃってボロボロです。

 ちょっと人に渡すにはみっともないレベルかな。もう一回、紙袋を入れ換えしなきゃ。


 う~ん。多分、ですけど。

 この紙袋の中身、裏庭で落とされたことはナルドさん、気づいてないみたいなんですよね。

 一体、これはどなたとお使いになるのですか?と聞きたいような、聞きたくないような……。

 私たちメイドのかわりにソーヴェ様を起こして下さったので、お怪我をさせた責任を感じてます、と先日からちょっとベタベタまとわりついてみましたが、女の影は全くありませんでした。

 パロマの調査(プライバシーの観点から恐ろしくて詳細は聞けない)によると、娼館にもどうやらここ数年は行っていないようですし、はたまた派遣のプロもご利用にはなってはいないようで……。

 あとは休日の外出時のナンパ等ですが、お休みの日はほぼ、身体を鍛えて過ごすか寝ていらっしゃるらしく……。

 まぁ、とにかく真面目。
 
 パロマ調査によると現在お見合い話が沢山舞い込んでいて、その真面目さとお給料の手取額から、お見合いサイトのランキング上位にいるらしいです。

「素敵な貴女との出会いを楽しみにしています。絶対に後悔はさせません。一目惚れって信じますか?情熱的な一夜を貴女と過ごしたい」
 ナルドさん本人がしたとは思えない書き込みがされているので、多分ご親戚のおば様方が喜んで?書き込まれてるのだろうとパロマの推測です。


 確かに。酷いセリフですね。あんな風にヴィンセント様にからかわれて、すぐに真っ赤になるナルドさんが書き込まれたセリフとは思えません。

 なんだか言い回しも古臭いし……おば様方の世代臭がします。

 年齢といえば最近お腹に脂肪がつくのが気になるのか、食堂のメニューもガッツリ油脂ものから週末はヘルシー志向に変わってきたとか、洗濯物の出し具合から寝る時はパジャマとか着てないんじゃないか、とかもパロマ情報です。

 
 パロマ怖い……。


 どうやって嗅ぎ回ったんだろうと想像すると、我が同僚ながら引いちゃいます。

 ネットの活用はまぁ、やるだろうと思いますが洗濯物って……他にもゴミを開いたりしたんでしょうか。
 完全にストーカーの域ですよねぇ。

 
 ある意味、絶対に敵に回してはいけない人物だと思いますわ。


 しかし、パロマも何だって急にナルドさんのことを調べたくなったんでしょうか……。
 頭のイイ人の考えることは、私にはよくわかりません。


「マリン!」
 あ、噂をすればパロマです。

「ねぇねぇ、聞いた?」
「何を?」
「今日の大公宮での舞踏会のこと。ヴィンセント様も国外追放らしいわ!」
「はい~?何で?」
「自分から大公様に国外追放してくれって言ったんだって」
「え……?」
「もう、さっさと舞踏会からお帰りになって色々、出国準備中よ。それはもう、ウキウキとご機嫌に」
「……アルルを追っかけられる気、満々ってこと?」
「それしかないでしょ」
「ちょっとアルルがお気の毒というか、なんというか……」
「ソーヴェ様は引き止めたかったみたいなのよね。まぁ、無理だと思うけど。これでヴィンセント様も堂々とベイト国に乗り込めるもん。止まらないわよ」

 そっかぁ。ヴィンセント様まで出国されるんだ……誰が止めても絶対に行くでしょうねぇ。
 お姿をお見かけするという毎日の楽しみがまた一つ、減っちゃうなぁ。

「それでね、ソーヴェ様は執事長をお目付け役につけようかって言ってるみたいよ?」
「は……?」
「御友人のファーラ様に猛烈に通信を送ってみえたけど、心配なんじゃない?」
「ナルドさんもベイトへ?」
「執事長じゃ、とてもヴィンセント様を止められないと思うけどねぇ」
「……いつ出国されるの?」
「明日らしいわよ。本当は今から出たかったみたい。ヴィンセント様も留守じゃ、私たちの毎日の楽しみが減っちゃうわよね。私もベイト留学、申請してみようかしらん。元々、行ってみたかったし」
「はぁ……」

 パロマなら、本当にやりそうな気がします。
 ウィル様ほどじゃないけど、Gnetや情報端末の扱いでカルゾで彼女の右に出る人間はいません。

 そっか。みんな居なくなっちゃうんだ……。
 寂しいなぁ……。

 は、でも出国されるなら早くこれ、渡さなきゃ。
 

 私はポケットの包みをギュッと握りしめました。
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